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Section 3-Seven

ヒロイン復活です。


「あっ、ローゼさん! おかえりなさい!」


 コルドバの家に戻ってくると、すっかり元気になったシャルロットが駆けつけてきた。わざわざお出迎えご苦労だが、きのう高熱を出して倒れていたのが嘘みたいな回復ぶりだ。シャルロットって、意外と病気に強いのだろうか。


「ああ、ただいま。もう熱はいいのか」

「はい! もうこのとおり、すっかり良くなりました」

「そっか……」


 とりあえずホッとした。あのまま高熱が長引いたらどうしようかと心配で、今回の調査でもいつもの勘がうまく働かなかったからなぁ。まあ、言わないが。


「それで、お仕事はどうなりました? コルドバさんから聞きましたよ。街に娘さんを探しに行ったって……しかもタダで」

「シャルロットの看病をしてくれた、その迷惑料でチャラにしたんだよ」

「め、迷惑料って……」

「ちなみに仕事だが、今回は運が良かったんだな、早くも解決してしまった」

「ええっ? 本当に?」

「ああ。娘は生きていたよ。色々あって、無傷ではいられなかったそうだが……シャルロット?」


 シャルロットはなぜか、不満そうに眉間にしわを寄せ、うつむいている。


「どうした?」

「……この間の、呪いの川の事件でもそうでした。今までだって、ローゼさんはひとりで事件を解決してきました。わたしは助手としてついてきましたけど、ローゼさんには、必要のない存在ではないかと……」


 ああ、そういうことか。シャルロットは自分が、わたしに必要とされていないことが不満で、そしてたぶん不安なのだろう。困ったやつだ。彼女がそばにいないことで、どれだけわたしの調査に支障が出たことか。

 わたしは嘘も建前も使えないし、気遣いなんて知らない。だからいつものように、偽らざる気持ちを伝える。シャルロットの頭にポンと手を置いて告げた。


「……病人の手助けはいらない」

「!」

「わたしに必要なのは、元気なシャルロットの手助けだよ」


 わたしを見返すシャルロットの瞳に、光が宿る。


「事件解決に貢献することだけが、お前の存在意義じゃない。わたしにとってシャルロットは、守るべき存在だから……だから、そばにいていいんだ」

「ローゼさん……」


 瞳を潤ませ、ふわっと微笑んだと思うと、シャルロットは突然抱きついてきた。ぎゅっとしがみついて、離れる気配はない。


「こら、これからコルドバに会って、調査の報告をするんだから」

「では早く行きましょう。わたしはローゼさんにしがみついていますから」

「そばにいていいとは言ったが、さすがに程度を弁えてくれ」

「ところで、先ほどから気になっていたのですが、そこに倒れている人は誰ですか?」


 シャルロットが指差す木の根元で、ひとりの男が伸びていた。エミリアを追っていた連中の仲間で、コルドバの家を幾度となく見張っていたらしい。父親を頼ってエミリアがやってくる可能性を考えての見張りだろうが、邪魔だったのでさっき倒したところだ。

 しかし、説明が面倒くさいな。


「ただのザコで女の敵。気にするだけ時間の無駄よ」

「はあ……」


 よく分かっていない様子のシャルロットを連れて、わたしはコルドバの家に向かった。

 家の中で待っていたコルドバに、わたしはさっそく調査の結果を報告した。エミリアが生きていたこと、街に出てから売春婦にされ、体をボロボロにされながらも、今は服屋で仕事をして暮らしていること。そしてエミリア直筆の手紙を、報告書に代えて渡した。

 手紙を受け取ったコルドバは、感傷に浸るように呟く。


「ああ、エミリアの字だ……よかった、生きていたのか」

「無傷では済まなかったけどね。それに、こういういきさつもあって、男性と接することにまだ不安があるから、しばらく会うことはできないそうだ」

「そうか……いや、いいんだ。元気でいてくれれば、それで」

「まあ元気でいるどころか、色々あって今は男になっているが」

「「えっ」」


 コルドバとシャルロットが揃って瞠目する。感傷を台無しにするようで悪いけど、これは大事なことだから先に言っておきたかった。


「だから、そのうち会うときが来ても、あまり驚かないでやってくれ。とにかく、詳しいことはぜんぶ、その手紙に書いてある。あと、エミリアに返事を出したいなら、街にある肉屋のおばさんに渡すといい」

「ああ、分かった。本当にありがとう、探偵さん」


 コルドバもエミリアと同じように、わたしに深々と頭を下げた。エミリアを会わせることはできなかったが、コルドバからの依頼はこれで完遂したと思っていいだろう。

 シャルロットと目が合った。彼女が優しく微笑むから、わたしもつられて笑ってしまう。今までだったら、探偵の仕事を終えても、すべて他人事で済ませるから、笑顔になることはなかった。最近は、これでもいいと思える。

 当分、手放せそうにない。無邪気に笑う相棒を見て、わたしは肩をすくめた。

ここまでご覧いただき、ありがとうございます。でも、まだまだ物語は続きます。

ローゼは決して自分の身の上を語らないし、地の文もひたすらクールですが、シャルロットと出会ったことで、少しずつ柔らかくなっている……そういう変化が伝わればいいと思っていますが、いかがでしょう? 今回のことで、シャルロットへの思いが少しは見えたでしょうか。

同時にこの作品の世界は、決して二人にとって優しいものではありません。人を傷つける犯罪は日常的に起きていますし、公的機関も役に立っていません。自分の力が足りなければ、エミリアのような末路を辿ってしまいます。そんな世界で二人の存在がどんな影響を与えていくのか、これからじっくり書けるといいのですが。

この第三章の出来事は、現実に起きたことをベースにしています。作中設定では未来の話となっていますが、現代の私たちにとっても決して無縁ではない、ということを、ご理解いただきたいです。

後書きが長くなりましたが、次回はまた一週おいて、第四章を始めたいと思います。ただ、予約投稿をした7/2時点で、四章がまだ出来上がっていないので、本当に期日までに始められるか分かりません……。開始のタイミングについては、Twitterとかでまたお知らせします。

では、また次回!

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