座敷童
百物語十二話になります
一一二九の怪談百物語↓
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私の住むアパートには「座敷童」が住んでいる。
私がこのアパートへ引っ越してきたのは半年前のこと。社会人になった私は、実家を出て会社近くのアパートへ引っ越すことになった。それがこのアパートだ。
座敷童が現れたのは、引っ越してから数週間後。残業で帰りが遅くなった日、アパートへ帰ると、部屋の中をおかっぱ頭で着物を着た小さな男の子が走り回っていた。私はすぐに男の子が幽霊だとわかった。
しかし、不思議と怖い気持ちはなかった。男の子は特に悪さするような様子はなく、部屋の中を走り回ったり、時々タンスの上に座って私を見下ろしているくらいのことしかしなかったからだ。
両親や友人と離れて生活する私にとって、男の子は可愛らしい同居人であった。私は男の子を「座敷童」と呼んでいた。人に幸運を招く子どもの妖怪、それが座敷童だ。
アパートに引っ越してから、私の身に大変なことがたくさん起きた。アパートの前で車に轢かれそうになったり、仕事先で危険な事故に巻き込まれそうになったりと最悪なことばかりであった。しかし、今の私はぴんぴんしているし、怪我をすることもなかった。
きっと座敷童が私のことを守ってくれているのだろう。私はずっとそう思っていた。だって、私がアパートへ帰ると、あの座敷童が笑顔で私を出迎えてくれるようになったからだ。
ある日のこと。
高校時代の友人から久しぶりに電話がかかってきた。
「久しぶり!元気してる?」
友人の電話に興奮する私だったが、友人の様子が少しおかしい。
「アンタ今どこに住んでるの?」
私は友人へ会社の近くにあるアパートへ半年前に引っ越したことを伝えた。すると…
「そのアパートさぁ、早く出た方がいいよ」
友人は少し焦っているような声で言った。
「どうして?ここだと会社に近いから通勤が楽だし…それと幽霊も出るんだよ!あぁ…別に悪い子じゃないの。小さな男の子で…私は座敷童って呼んでるんだけどさぁ…!」
友人は黙って私の話を聞いていたが、最後に小さな声でこう言った。
「その子、死神だよ」




