プロローグ〜大っ嫌いな幼馴染(?)
僕には昔からずっと一緒の幼馴染が居る。家が隣で生まれた日も同じだった。でも、僕とは違い彼女は恵まれていると思う。それに妬ましいとかは思わない。少し羨ましいと思うぐらい。最初は………
美形な外国人の両親を持ち彼女自身もそれを持つ。艶やかで赤みのある蜂蜜色の長髪。白く透き通るような肌に整った鼻梁。長い睫毛に覆われた大きな天色の瞳。どれをとっても彼女は人一倍、いや、十倍か、それぐらい彼女は容姿にも恵まれている。成績も何時も学年別ではトップを誇る。全く勉強も───いや、今は皮肉は止めておこう。運動もどちらかと言うと得意な方で文武両道で美人………何処の漫画のヒロインだ。ふざけんな、こっちは幾ら努力したと思って───
もう、お気づきであるかもしれない。でも、一応言わせてもらう。
僕は幼馴染──アリスユーロが大嫌いだ。
でも、最初は好きだったな。最初はな。
まだ幼い頃は僕の方が彼女より何でも出来た。勉強も運動も、容姿は負けていたけど、そこはどうでもいい。僕はどちらとも彼・女・に・勝・っ・て・い・た・んだ。
だけど、それは浅はかな考えだった。そう、彼女に越され始めたのは小学生の高学年からだ。
高学年になったら彼女は他の子よりも成長は早かったと思う。背丈もクラスで一番背が高い子と殆ど変わらないし、胸も小学生にしては膨らんでた方だと思う。そして、アリスは何時も学年別でトップだった僕を追い抜き一位に躍り出てきた。
最初はまぐれだと思って次は僕が一位だろうと思っていたがそれも浅はか。次も彼女が一位だった。それからも、幾ら努力しても彼女に勝てなかった。深夜も徹夜で勉強もした、ゲームも親に頼み預かって貰った。売ろうとも考えたでも、それは流石に買って貰った親に悪いから止めた。そして僕は勉強に集中した、たまに運動もして気分転換もしていたのに、
彼女には勝てなかった。
「唯ゆい! 見て見て! 百点!」
「う、うん」
アリスはそう言って僕に百点満点で花丸まで付いたテスト用紙を見せてきた。僕はそれを彼女と共に心からは喜べなかった。本当は友達として彼女の側に居た奴として彼女と一緒に喜んであげるべきなんだろう。
でも、アリスは遊んでたんだ。友達と。僕はその間も勉強して次こそは! と思い勉強をしていたんだぞ、それで何で僕じゃなくて彼女なんだ。遊んでた癖に………。
中学に上がった時、僕は彼女から距離を置こうとした。もう嫌なんだ。間近で彼女の才能を見るのは。
でも、彼女はそうしてくれなかった。
「唯! 一緒に帰ろ!」
「ッ──うん」
「唯! 一緒にお昼ご飯食べよ!」
「ッ!───わ、分かった」
この時、拳を強く握り唇も噛み締めて自分の中に込み上げてきた感情を表に出さない様にしていたのを覚えている。
「唯! 帰ろ!」
「………」
僕は到頭無視をした。うざかった。もう関わらないで欲しかった。なのに、彼女はめげなかった。
「唯!」
「………」
「ねぇ! 唯たら!」
「………」
「唯………」
しゅんと、僕を呼ぶ声が段々低くなって行くのを感じてやっと諦めたかと僕は行こうとした。だけど、アリスは呼ぶのは止めていたが服を掴んで離そうとしなかった。
歩こうとする。だが、アリスが服を掴んで離さない。それもぎゅぅぅ、と強く掴まれていて無理に離そうとしても離れない。
「………はぁ、何?」
「一緒に帰ろ」
「僕は塾があるんだけど」
「嘘。今日は無い日でしょ」
何で知ってるんだ、僕はお前に教えた覚えがないぞ。
「………分かった。帰るから手離して」
「嫌」
「何で?」
「逃げるかもしれないから」
「………」
ばれてたか………………仕方ない。もう折れよう。
「なら、もう好きにして。逃げたりしないから」
「ほんと!?───えへへ、なら、あんな事も、そんな事も!」
何かよからぬ事を考えていそうなので一回チョップする。
「痛い! 何するの!」
「よからぬ事を考えてるぽかったから」
「むぅ」
膨れっ面になるアリス。でも直ぐに笑みに戻して僕の腕に抱き付いてきた。
「ッ!?」
(や、柔らかい………)
「行こ!」
「いや、その、離れて。手を繋ぐぐらいで良いでしょ?」
「えぇ。良いじゃんこっちで。それとも何? まさか、照れてるの〜?」
照れるもなにも、さっきからずっと腕に柔らかい感触が当たってて…………。
「………」
「ふーん。唯、大きい方が好き?」
「はあ!? 何言ってんだ! 僕は別に………ムゴムゴ」
「やっぱり唯も男の子だね!」
「………」
僕はそれに返す言葉が浮かばない。だってアリスの柔らかい感触がする部分を想像してしまったんだから。
今日だけ我慢だ。もう、アリスとは関わる事はない。
中学では距離が置けなかったからアリスとは違う高校を受けてやった。アリスは何処を受けるか聞いてきたけど、そこは違う学校を言っておいた。
高校ではアリスとは違う高校に行き、今度こそアリスに関わらなく穏便に学校生活を送ろう。
「そういえば、唯。高校でもよろしくね!」
「ん。ああ、こっちこそよろしくな」
この時の僕は完全に安心しきっていた。今度こそアリスと距離がとれると。
だけども、アリスの方が一つ上手だった。
進学する高校は受かるまで誰にも言ってなかったはずなのに何処からか情報を掴んで同じ高校になるとはこの時は思ってもいなかった。