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第3話 危機

 「ハッハー、服だね。ちょっと待っててね、私の子供の頃の服があるからそれを持って来てあげよう、大人しくしてるんだよシオン。じゃないと私がパックリとヤる前に魔物にパックリと殺られちゃうからね」


 ニーアが発見した時は横向きに樽は倒れていたがそれを軽々と縦向きに直し、その中から少年、シオンはヒョイと顔を出しながら辺りをキョロキョロと見回している。


 「あのぅ、ニーアさん。魔物、と言うモノは一体何でしょうか?」


 「んー?何だか深い意味がある問答なのかな?知りたい事は少し後から説明するよ、この煙の周りから離れちゃダメだからね」


 何とも押し切られる形でシオンの質問は中断される、ニーアはさっさと立ち去ってしまった。仕方ないとばかりにシオンは辺りを見回し何とか情報を得ようとする。流れの早い濁った川、地面にはゴロゴロと大小の丸い石、近くには鬱蒼と茂った深い森、その中からチチチと小鳥が飛び立った。


 つまり、シオンが得られた情報はほぼ0になる。


 ふ、とシオンはニーアが置いて行った金属製の筒の中からモコモコと立ち上る煙のニオイを嗅いでみた。清涼感がありそれに独特なニオイが混じった不思議なニオイだとシオンは感じる。


 嫌いなニオイではない、むしろ好みのニオイだとも思った。


 後方を振り返ると濁った川は目視できる距離まで延々と伸びていて果てが見えない。少しだけ不安が頭をもたげた、起きたばかりでボンヤリしていたのかニーアの外見も思い出すと不思議な事ばかりだと思い至る。


 まずはニーアの髪の色、深い青、群青とも呼べるほどの青い髪の色、黒髪にほど近いためかすっかりと見逃していた。それと大きくもう1つ、革鎧。いわゆるコスプレやそんな程度のクオリティの問題ではなくキッチリと使い込まれた、歴戦の雰囲気すら漂う革鎧を着こんでいた。


 そんなこんなを暫く思い起こしていると時間が経ったのかニーアが帰って来る、その手には女の子用の可愛い服ではなく、小さめの貫頭衣のような穴の開いた布、それとこれまた小さめのズボンを手にしている。


 「大人しくしてたみたいだね、じゃあお着がえしましょうねぇククク」


 「ひ、1人で着がえますから大丈夫です!」


 スポッと樽の中に身を引っ込めて手だけを出して服を受取ろうとするが、その手に服が渡る事は無かった。


 「遠慮しなくても良いんだよシオン、私はこういうのは多分上手い方だと思うからドンと任せてね、分かんないけど。ニーアおねーさんに全てを見せなさい!」


 樽から伸びた手を掴まれてシオンは引っ張り出される。ニーアの顔はニチャリと言うべきかある種の期待に歪んでいる。シオンは「アッーー!」と言う間にニーアの魔手により着がえさせられてしまう。




 「じゃあニーアさんは魔族?のケモノナリ?なんですね」


 「獣成ね、私は先祖返りってヤツらしくてね、耳とか尻尾は自分の意思で出したり引っ込めたり出来るんだ、こうね」


 2人は川縁の大きな石に座り互いに情報交換をしている。ニーアの耳が一部変化してピンと群青色の毛を生やした大きな耳に変化する。それをシオンは「おお!」と目をキラキラさせて眺めている、そしてその表情を何となくだらしない顔でニーアが眺めている構図。


 「じゃあ今度は私の質問だ、シオンはどこからやってきたのかな?」


 「あー、それがですね、日本って言えばどこかわかりますか?僕はそこから来たんですが、ここの地名もよく分からないんですよ」


 「ニホン?私は無学だから自分の住んでる村の近場しか分からないんだよ」


 「そうですか。それにニーアさんみたいにキレイな髪色の人も全く居ないし耳がそんな風になる人も居ないんです」


 ニーアはシオンの「キレイな髪色」にとても強く反応し、ヒョイとシオンを抱え上げて自分の膝の上に乗せた。シオンの背丈は160cmに満たないほどの身長だが、ニーアは座った状態でシオンを抱え上げられるほどの腕力を示す。つまり純粋に腕力のみで抱え上げた事になる。


 「シオン、あんまりおねーさんを誘惑するとオオカミになっちゃうよ」


 「み、耳が狼みたいでしたもんね!それと誘惑はしてないです!」


 シオンは体を縮めてアワアワとしている。その姿をニーアが舌なめずりをしながら眺めるも再度シオンの質問が飛び出て来て事なきを得る事が出来た。


 「こ、言葉!言葉が通じるのも不思議ですー!」


 「そんな細かい事は気にしなくて良いんだって、大丈夫、おねーさんに任せて力を抜いてね、シオン」


 「細かくないです、重要、重要なんです!それに僕、ここに辿り着くまで歩けなかったんですぅー!」


 必死!シオンの必死の質問?がニーアの理性に再び火を灯した、まさに間一髪の出来事だと言えるだろう。


 「さっき歩けてたよね?動かしてごらん」


 シオンはニーアの膝の上に腰かけた状態、お姫様抱っこに近い状態でパタパタと足を動かす。


 「動くじゃない」


 「動きますね」


 「じゃあ質問はこれで終わりで良いかな?いただいて良いかな?」


 「あーっ!まだありますよ質問!僕、今17歳なんですけどニーアさんは何歳ですか?」


 「!?」


 ニーアの表情はまさに虚を突かれると言った感じで少し思考に時間を割いている。シオンの年齢と自分の年齢を比べて何かおかしな感覚がニーアの頭の中に電流が如く駆け巡る。


 「私、16なんだけど?もうすぐ17」


 「!!」


 今度はシオンが混乱する順番になった。大きな石に腰かけたまま2人は互いに混乱しアワアワとしている様を森の木に止まって寛いでいる小鳥が眺めていた。


王蟲ラグマルスの作用によりシオンには様々な変化が起こっています、言語理解もその1つ。


果たしてシオンはニーアの魔手から逃れる事が出来るのだろうか!?w

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