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動き出す物語
足が重い。全身が怠い。死にたい。
「行ってらっしゃい。お弁当忘れないでね」
明るい母親の声が響く。
学校に行かなきゃ。
死ぬなら準備しないと、それまでは悟られちゃダメだ。
もう、何日も前から自殺方法を検索している。その度に出てくる失敗談に不安が湧いてくるも、もう、戻れない気がした。
その日、少し遅めに教室に入るといつもと雰囲気が違っていた。どこか明るい、浮足立った感じ、そして教室の前方に人だかりができていた。その集団の中心は菅野君でも、橋本君でも、渡辺君でもない。人影から、ちらっと見えた顔に頭が真っ白になった。
色素の薄い髪に整った顔立ち。見間違えるはずない。昨日喫茶店で会った青年が制服を着て立っていた。




