血のつながり
学校にいけない日は、とてつもなく暇だった。基本的に本を読んで過ごすがそれも直に飽きてくる。一人になると、一生ここから出れないんじゃないかという錯覚に陥る。
窓を眺めているとベランダに一羽の雀がいた。
お前は自由でいいな。
ひょこひょこと動き回る雀を見つめる。こいつは、外敵から襲われることはあれど自分の親から殴られたことはないんだろうな。その理不尽さに悩むこともないし、そもそも脳みそ小さいから、悩んだりしないか。なんて、何考えてんだろ。
ぼんやりしていた時、机の上の消しゴムが目に留まった。
ちょっとした、気の迷いだった。
その消しゴムを手に取ってゆっくりベランダに近づく。鍵を開けて、窓を開けても全く動く気配がない。いける、そう思った。
消しゴムを雀にめがけて投げた。しかし当たることはなく、雀はパタパタと羽をばたつかせて飛んでいった。
よかった。
なぜか汗が噴き出してきた。なんでこんなことをしたのかわからなかった。
それから、雀はいい遊び相手になった。食パンを小さくちぎっておいておくと結構な量の雀が集まってくる。そこにめがけて消しゴムを投げる。一度投げると驚いたように去っていくのにまたすぐに戻ってくる。本当に脳みそのない生き物はかわいそうだ。結局また消しゴムを投げられるのに、それを理解できないなんて。
なんてみじめなんだ。
ある日のことだった。その日も何の気なしに消しゴムを投げていた時だった。いつものように何羽もの雀が飛び去って行ったところに、一羽の雀がぐったりと倒れていた。
「え、あたった・・・?」
まさか、当たると思わず全身から冷や汗が噴き出す。
その雀は、バタバタと時折もがくがとても飛べそうにない。
そっと、優しく掌に載せると、綿菓子のように軽く柔らかい。
ぴい、と手の中のぬくもりが小さく鳴いた。体を打ち付けたのか、羽が痛むのか、わからない。どうすればいいんだろう。ベッドの横たわらせて様子を見る。足は平気そう。羽はどうだろう。
右の羽を触ったとき、ぎぃぃ、と苦しげな声が鳴った。驚いて手を放すと辛そうに横たわる雀と目が合った。心臓がどっくんどっくんとうるさく鳴る。
ごめんね。
謝りながら優しくなでた。怖かった。そして、この雀と自分が重なった。
こいつにとっての父さんは、俺か。
自分と父親が重なって見えた。
親子だから似るんだな。お前も将来きっとああなる。
どこからか嫌な声がする。
急いでトイレに駆け込んだ。
「どうした、暁人。具合悪いのか」
父さんの心配そうな声に拒絶する余裕もなかった。
俺は父さんとやってることが同じだった。




