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死にたい僕と殺したい君と  作者: 相良美斗
10/23

苦しい日々

 次の日は、ちゃんと場違いな教室に入った。

 イヤホンをして勉強をする。教科書の例題や参考書の問題をひたすら解いて時間を忘れれば、あっという間にホームルームが始まった。

「今日の欠席は立花だけだな」

 珍しい。先生の言葉に立花さんの席を見れば、きれいに空いていた。

 元気で快活なイメージだったし、昔からあまり休む方じゃなかったのに。

 彼女がいない教室はいささか静かだった。それが寂しくもあり、でも個人的には平和でちょっとだけ安堵してしまった。




 修学旅行の準備が進んでいた。

「今週中に決めなきゃいけないらしいけどどうする」

「昨日言った案でいいんじゃない」

 話し合いの声が聞こえた。他の班も休み時間に声をかけあって話しをしている。

 僕に声がかかることはなかった。

 教室を出て図書室に向かう。別にいい。修学旅行も行く気がないし、それまでに死んで問題にしてやる。遺書でも残そう。そこにあいつらの名前を書いて、残せば話題にはなるだろう。何だったら学校に送ってみようか。もしかしたらいじめを隠蔽しようとするだろうか。学校のイメージが悪くなるし、その可能性もある。それならマスコミに送り付けてみようか。自殺予告して自殺すれば少しは話題性があるんじゃないんだろうか。多分、未成年だから実名はさらされないだろうけど、今はSNSがある。中学や小学の同級生からちょっとずつ噂が広まって肩身の狭い思いをすればいい。人殺しだと、後ろ指さされる人生を送ってほしい。

 休み時間のぎりぎりまで図書館で勉強して過ごした。




 一日休むと少し気持ちがリセットして、生きていける気がしたのに、どんどん効かなくなってきた。薬も飲み続けると効果が無くなってくるというけどそういうことだろうか。休んでも家では心が落ち着くのに学校に行くと途端に息苦しくて腹痛がする。頭の中が死にたい、で満たされるのが嫌で必死に曲を聞いたり勉強した。それでも、刻一刻と限界が近づいている感じがした。

 今日は、神崎君と立花さんが休みだった。立花さんもあの日以降休むことが増えてきた。

「本当に一人で帰れる?お家の人に連絡しなくていいの?」

「本当に大丈夫です。ゆっくり帰るんで」

 修学旅行の話し合いなんて、出るつもりもなかった。どうせもう関係ないし。

 体調が悪いのも全く嘘なわけじゃない。授業中の廊下は驚くほど静だった。この時間に制服姿で歩いていたら不審がられると思っていたが、思ったより変な目で見られなかった。それだけ他人に興味がないということかもしれない。希薄な人間関係にすくわれた。どうせ家に帰っても何もないしコンビニによることにした。とはいっても家や学校の近くだと知り合いに見られる可能性があるから、少し離れたところにむかう。どうせ時間はいくらでもあるし、悪かった体調も学校を出れば楽になる。久しぶりの外は心地よかった。

 コンビニに入ると、平日の日中だからか空いていた。店員さんも少ない。特にほしいものもないけどとりあえず前部の商品を流し見する。結局買ったのはパックジュースとガムだけだった。

 会計が終わってすぐに店を出ようとして振り向いた瞬間、誰かとぶつかった。

「すみません!」

 持っていた紙袋が落ちる音と相手のうめき声がした。そこまで、強くぶつかったつもりはなかったのに、と不思議に思いながらバランスを崩した相手を見た。

 しりもちをついた拍子にかぶっていたフードがとれたのか色素の薄い髪が揺れた。

「大丈夫ですか」

 声をかけつつ、うつむいている人の顔を覗き込んで呼吸を忘れた。

 そこには、目や頬を腫らし、痣だらけになった神崎君がいた。






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