とある秋のバス停にて
少し肌寒い秋の夜風を受け、銀次は上着を持ってこなかったことを後悔した。
バスが来るまであと十数分。手持ちぶさだ。
鞄からミュージックプレイヤーを取り出し、イヤホンを耳に着け適当に再生をする。流れた曲は、もとは音楽ゲームの曲らしい。結構お気に入りたが、雑に詰め込んだリストのせいで、名前までは覚えてなかった。
耳心地のいいリズムに満足し、自販機を探す。
少し離れたところに目的のものを見つけ、財布の中身を確かめながら近づいた。
蛍光の光に照らされた数種の暖かな飲み物に、子供がメニューを捲るときのような、不思議な高揚を感じた。
選ばれたのは、綾鷹でした。
ほう、と一息。吐いたそれは白く、今年も冬になることを実感した。
遠くに、こちらに向かうバスが見えた。