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食事

助けたと思ったら恨みますと言わんばかりに睨まれたエリカ。

しかし、一度拾ったら最後まで面倒を見るつもりですよ。

 大きな腹音を鳴らして男は前のめりに地面に突っ伏した。


 ああ、彼は相当空腹なんだ。

 体が回復したことによって、通常よりもきつくお腹の空きを感じているのかも知れない。


 何か食べ物を出してあげよう、どんな料理が食べられるかしら?


 私がメニューを考えていると男は空腹に耐え顔を歪めながら私に言った。


「エリカ……様」


 振り絞るように小さな声で私の名前を口にし、男は屈辱的な表情を浮かべて、


「薄汚い私に……どうか食べ物をお恵下さいませ……」


 は? 


 目が点になる私。


 ええ、いやいや、そんな言い方をしろって私は彼に要求してないし、何このSMみたいな主従プレイは……。


 男を驚いて見ているとまた彼のお腹が大きく鳴り、男はお腹を抑え倒れた。


 ああ! 考えている場合では無いわ。早く何か食事をさせてあげないと。

 取り敢えず、スープにしよう。

 お腹に優しそうだしクリーム系のスープでいいかしら?


 指を鳴らししてホワイトクリームのスープを2皿出した。


 一皿を彼の前へ置き、もう一皿は私の膝の上に置いて男に銀のスプーンを手渡そうとしたら、彼が私を見て止まっている。


 ああ、料理をいきなり目の前に出したから驚いているのか。

 まあ、今は食べる事優先で、食後に説明しよう。


「貴方の口に合うか分からないけれど、一緒に食べましょう」


 声をかけると一瞬男はビクッと反応して、私を見て動かない。


 う~ん、私が怪しいのかな? 男にぎこちなくも微笑んだら、プイっと目線を落としてお腹を片手で押さえて地面に座りながら、目の前のスープを見つめている


 あ、そうだわ! 彼はこういうスープを食べるのが初めてなのかもしれない。

 この世界の食生活を知らないけれど、もしかしたらスプーンが無い世界なのかも。


 私は男の前でクリームスープを食べて見せることにした。


 スプーンにスープをすくい口に入れる。優しくて美味しい味だわ。


「うん、美味しいわ。

 大丈夫よ、毒は入っていないから、食べてみて」


 男は私がスープを飲むのを見て、ゴクッと喉を鳴らすがそれでもまだスプーンを手に取らない。


 あれ? どういうことかしら?

 私が目の前で飲んで見せているし、あんなにお腹を減らしている様子なのに……。

 スプーンが使えないのなら、いっそお皿から直飲みしても許すのに。


 もしかしてさっきの『食べ物を恵んでください』ってセリフは、自分の手からは食事が出来ないから私に食べさせて欲しいって事だったのかな?

 あー、今は傷だらけでみすぼらしい格好だけれど実は貴族の出身とか?


 ……仕方がない、早く元気になってもらいたいから今日だけサービスするか。


 私はそう理解して彼のスプーンを手に取り、男の口前にスープを運んだ。


「はい、あーんして」


 と、言いながら。


 男は時が止まり真顔でスプーンを見つめて、その後真っ赤に顔色変えて「は? え?」と狼狽している。


 ん? 私、空気を読み違えたかしら?

 でも、もうここまでしてしまって面倒くさいからこのまま強行する!


「ほら、口を開けて」


 キッと目力を入れて男に言った。

 男は目に涙を浮かべながら口を開けて、ゆっくりとスープを流し込まれる。


 コクッ……


 男はスープを飲み込み顔を輝かせた。


 そして放心した表情で

「うまい」

 と言った。


「良かった。美味しくて」


 私は笑顔でまたスプーンにスープをすくい彼の口に運んだ。

 男はパクッとスプーンを口に入れて何度も繰り返し、お皿のスープはあっという間になくなった。


 スープを1皿飲み終えても彼の腹は当然満腹になっていないのが分かる。

 そりゃあ、空腹の男性だものもっとボリュームのあるメニューを出した方が良いよね。


 次はご飯ものが良いかしら?


 と考えてリゾットを指パチンで出して、また男にスプーンですくって食べさせた。

 リゾットは熱々で、私は息を吹きかけて冷ましてから男の口へ入れてあげた。

 彼は私の食べ物を全く警戒せずに素直に口を開いて食べた。


 リゾットも男の口に合ったようで、青い瞳をキラキラ輝かせて幸せそうな表情でパクパクと食べていく。


 可愛い! 親鳥になった気分だわ。


 私はニコニコしながらくちばしを開く男に3皿目のオムライスを食べさせた。

 オムライスを半分くらい食べ終えて、男は急にスプーンから目線を外して私を見て、


「あの……エリカ様。自分で食べてもいいでしょうか?」


「え? 自分で食べられるの?」


「……はい」


 私がスプーンを彼に渡すと、男は綺麗な姿勢でオムライスを食べ始める。


 なんだ全然、自分で食事出来るじゃん。何で最初食べなかったのかな?

 んー、突然現れた知らない料理が怖かったのかしら?

 まあ、食べてくれるようになって良かったわ。


 男が食事を取ってくれることに私は安心して、自分も冷めたクリームスープを飲んだ。


 初めて他人に治癒力を使ったせいか、スープを飲みだして自分もかなり空腹なのだと分かり、大盛りパスタを2皿追加でだした。


 男は涼しい顔をしてその大盛パスタをフォークを使って平らげた。


 この数日、自分が食べたい物を出して食事に満足していたけれど、誰かと一緒に食べる食事は美味しくて楽しいわ。


 男の頬は緩み口角も上がっていて、私も微笑みながら食事を終えた。

 私と男が満腹になった頃、周囲は暗くなっていた。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

分かりづらくて申し訳ないのですが、男の食べた食事はクリームスープ→リゾット→オムライス→大盛りスパゲティです。

エリカはクリームスープと大盛りスパゲティだけです。

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