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戦闘4

 ライオンの獣人は華奢な女のリラに投げ飛ばされ怒りを露わに起き上がった。

「小娘め!」

「ヒッ!!」

 ライオンの獣人の怒声に床にうずくまっていた牛族の女性が悲鳴を漏らした。その声に反応してライオンの獣人は自分の横にいる女性に手を伸ばす。どこまでも卑怯で残忍な獣人は自分の盾として人質を欲していた。


「逃げてえー!」

 ああ、駄目だわ。彼女は私以上に恐怖で動けないんだ。


 ライオンの獣人の手が女性のローブを握る。が、リラ姫が腰につけた短剣を抜き俊敏な速さで駆け寄りライオンの獣人の腕へ短剣を突き刺した。


「ガアッツ!!」


 獣人は躊躇なく刺された剣の痛みに女性のローブを離し、怒り心頭でリラを捕まえようと腕を振り回すがリラは身軽に避け、床に尻餅つく女性のローブを両手で握り、虎の獣人らしく小さな体ながらも力強い躍動で彼女を引いてその場から離れた。


 リラのすばしっこい動きに翻弄され怒りに支配されたライオンの獣人は

「じゃじゃ馬があ!」

 と叫び、腕に突き刺さされた剣を抜いてその短剣をリラへ投げようと腕を上げた。


 ガンッツ!!


 ライオンの獣人がリラに振り回されている間にアベリアがライオンの獣人の背後へ近付き、獣人の後頭部を剣の鞘で力一杯殴りつけた。


「グッ……」

 ライオンの獣人は白目を剥いて床へ倒れこみ動かない。

 その獣人へ城の騎士達が急いで駆け寄り罪人の輪を嵌めた。


 今まで戦いで騒がしかった地下室はようやく静まり、皆グッタリと座り込んで戦いが終わった安堵の息を吐いた。長く先の見えなかった戦いが無事に終わったのだ。


 アベリアは気絶したライオンの獣人を見下ろして

「…後ろから殴っておいてなんだが…締まらない最後だなぁ」

 と、深いため息と共に非道な前の主人の終わりを吐き出した。


 アベリアの独り言のような言葉にその場の皆は苦笑いを浮かべるが、死者を出す事なく終わったのだから格好悪い戦いだったけれどコレで良かったという雰囲気になった。


 一息ついてフヨウ隊長は床にのびているレンギョウさんを肩へ軽々と担ぎ、傭兵と騎士達に罪人の獣人を城へ連行をするように指示をしだした。

 騎士と傭兵、アベリアで気絶したライオンの獣人の巨体を地下室から運び出し、狼の獣人と狐の獣人は首に罪人の輪を手首は拘束紐で縛られ騎士達に連行される。罪人の輪のお陰か、獣人達は不服そうな表情だが暴れることはなかった。

 ヤマブキは地下室を出る間際、シモツケの遺体に小さな声で別れを告げ、大人しく騎士に連れていかれた。


 私はアベリアに話しかけたかったが、狐の獣人に傷付けられた騎士の治癒をした。治癒が終わりアベリアを見ると彼はライオンの獣人を運んで行く。アベリアから私に近づく事なく私を見ることも無い。淡々とこの場の片付けをフヨウ隊長と行っていて、とても彼に話しかける隙がない。


 ううん、私に話をする気が彼には無いのかも。

 アベリアは自由な自分の人生を歩んでいるのだから。…今更私に話す事などないのだろう。


 それでもアベリアの姿が見られ、私を助けに来てくれたという状況が私の心を暗くすることはなかった。

 落ち着いたら私からアベリアへ話しかけよう。話す事くらいはきっと嫌がられないだろう。


 リラ姫と一緒に牛族の女性に肩を貸して、屋敷の敷地に止められた城の馬車まで移動した。女性は頭から足まで厚地のローブに包まれているが体が震えている。彼女は恐怖と疲労で体が思うように動かせない。

 私とリラでゆっくりと馬車へ乗せる。リラが先に馬車へ乗り女性を馬車の中へ引き、私が後ろから女性を押した。女性が馬車の中へ入り、私も一緒に乗り込もうとした時

「エリカは乗っちゃ駄目」

 リラに止められた。


「え?」

 戸惑う私に冷たい目を向けるリラ。


「エリカ、今回の事わたし超腹が立ってんの」


 リラに低い声で言われ、言葉が出ない。


 私はリラに黙って療養所を抜け出した。私は彼女を裏切ったんだ。リラが私に怒りを感じるのは当然だ。

 それに私が勝手な行動したせいでリラを含め沢山の人達に面倒をかけてしまった。

 どうしたらいいのか分からずリラを見つめ立ち尽くす。


 謝って済む事でないのは分かってはいるが、リラに嫌われたくないという強い思いがあって、彼女に何とか気持ちを伝えたかった。


「…ごめんなさい…リラ…あの…」

「姫さんが怒るのは当たり前だ」


 急に背後からアベリアの声がした。振り向くとアベリアは私の横に来て私の肩に大きな手を置く。

 アベリアも眉間にしわ寄せて怒っている。

 私は大切な2人に拒絶されるのが怖く何も言えなくなってしまった。


「エリカ」

 リラが私の名を呼んだ。私が彼女の方を向くとリラは困ったように眉を下げ

「わたしへの謝罪は後で聞くわ。城へはそこのオーガに送ってもらってちょうだい」

 と言って、御者の騎士に合図して馬車は走り出した。


 私はリラへ何も言えないのが情けなく、しかも涙まで流している自分が本当に嫌だ。

 泣いてしまっては私が可哀想みたいに思われ、本心からの反省の言葉を聞いてもらえなくなってしまう。

 なのに、それが分かっていても涙が流れる。


 そしてこんな心の状態で私はずっと会いたかったアベリアと2人きり。

 私は涙をアベリアに見られたくなくて服の袖口でグイッと拭った。

 そして少しでも大人な振る舞いが出来るように感情的にならないように気を付け、アベリアに顔を向けてお願いした。


「久しぶりだね。アベリア。

 沢山迷惑をかけて申し訳ないんだけれど、私をお城まで連れて行ってください」







ここまで読んでいただきありがとうございました。


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