迷推理
エリカ、今まで体験したことない緊張状態が続き、精神が不安定になります。
三銃士たちの食事風景を見てアベリアを思い出す。
アベリアも食事の姿勢が綺麗だったな。
彼は奴隷の身分だったのに何故テーブルマナーを知っていたのかな?
ずっと疑問だったけれど、一緒に山で暮らしていた時には聞かなかった。
山小屋で同居していた時にアベリアのプライベートにもっと踏み込んでいたら、離れ離れにならなかっただろうか?
今さら過去にああやっておけば良かったのかなんて、考えても無駄だよね。
それを言うならアベリアに会いに一人で治療所を出なければ悪党に捕まらなかったんだし。
三銃士が空にしたお皿を下げつつまた肉料理をテーブルに並べ、シモツケとヤマブキにも唐揚げを渡す。
そう、考えても今の現状は何も変わらないけれど、つい考えてしまう。
アベリアが私の奴隷だと知った時に彼を自由にしなかったら良かったのかとか。
でも、それは出来ないよ。アベリアを首輪で縛り付けて、私の側に彼に居てもらうなんて身勝手は。
第一、好きな人に強制を敷いたら、アベリアに私を好きになって貰えないよね。
アベリアを奴隷から解放して、私を好きになって欲しいという気持ちも私の我儘だけれど、少なくとも彼に嫌われたくは無かった。
今、アベリアは私の事をどう感じているのかな?
というか、アベリアは何故傭兵になっていたのかしら?
アベリアは強いけれど戦いが凄く好きって性格ではなかったはず。お金だって賞金を貰ったばかりで沢山あるだろうに、何故、命の危険がある傭兵になっていたのだろう?
傭兵になって戦場に出たせいで彼は大怪我を負っていた。偶然私が治療所に行ったからアベリアは助かったけれど、そこまでして戦う理由がアベリアにはあるのかしら?
あ、またお皿が空になった。パチンッ。ほれ、どんどん食べなさい。
アベリアが戦う理由かあ、何だろう。
私が知る限り彼が戦う時って私を守ってくれていた時だわ。
ん? って事は、アベリアは今誰かを守りたくて戦っているのかしら。
……その誰かって私ではないよね。
だって、私はお城で保護されている安全地帯にいる人間だもの。
ってことは…アベリアに大切な守るべき人が出来たってことかな…
そうだわ!
そう考えると、治療所で私がアベリアの大怪我を治したのに私と話さずに、アベリアは直ぐ戦場に行ってしまったのも合点がいく。
あれってアベリアは私に会いたくなかったって事だったんだ。
だって私に一言も言葉を交わさないって、一緒に生活をしていた時は私が彼に治癒をかけるとアベリアは私に微笑んでお礼を言ってくれていた。
私の奴隷でなくなって好きな人がいる今、元主人の私と顔を合わせたくなかったんだ。
ガーーーーーン!! 完璧な失恋。
アベリアに告白する前に恋が終わってしまっていたの私!
凄くショックだよ!!
それにこれからどうしよう!?
何だかんだあっても最後にはアベリアが私を助けに来てくれるんだと甘えた事を考えていたけれど、アベリアには大事な人がいるのなら彼は危険を冒して私なんて助けに来てくれるわけないよ。
リラは私の事を心配してくれるだろうけれど彼女はお姫様だから勝手に動けないだろうし、この屈強な大男3人にはリラ姫だって太刀打ちできないよね。カルミア王子は私の事なんて大した存在に思っていないだろうから私を助けに来てなんて期待出来ないし、レンギョウさんも最初に私を見つけられなかった人だから、国一番の魔法使いとはいえイマイチ頼りない。
えええええーーー!!
今さらながら私この悪の巣から自力で脱出しないといけないんじゃない!!
「おい、エリカどうした? 急に青い顔をして震え出して」
ライオンの獣人がナフキンで上品に口の端拭きながら私に聞いてきた。
「何だ、魔法の使いすぎか?」
狼の獣人も横目に私を見ながら言う。
「…あ…急に現況が見えてきたと言うか、どうぞ私の事はお気になさらず食べて下さい」
私は指を鳴らして新たな肉料理を机に乗せたが
「ああ、もう腹が一杯で張ち切れそうだから、料理はいらん」
ライオンの獣人に料理を出すのを止められてしまった。
テーブルの端には空になった皿が山のように積み上げられている。
これだけ食べたのだから少しは逃げる隙を見つけられるかしら?
私は淡い期待を抱いて獣人達を見る。しかし彼らはゆったりと椅子に腰掛けて寛いではいるが逃げ出せるような機会はうかがえない。
「ふー、腹が満たされ皿の出所も分かった。
これだけ使える女だとは思ってもいなかったから、エリカを手に入れられ満足だな」
狐の獣人が切れ長の目を細めて私を見ながら言う。
ウッ、背筋がゾッとする。
「ああ、そうだな」
ライオンの獣人は狐の獣人に同意しながら
「ん、まだエリカには能力があったよな。治癒が出来るとの話だが。
そうだ、その能力も今拝ませてもらおうか」
ライオンの獣人は言いながら椅子からスッと立ち上がり、部屋の隅に歩いて行って壁に飾られた剣を手に取り戻ってきた。そして、何の躊躇いも無く私の横にいるシモツケさんの胸を剣で貫いた。
人を傷つけるにはあまりにも自然なライオンの獣人の動き。
目の前で胸から血を吹き出してシモツケさんは床に崩れ落ちる。
目の前の光景に思考がストップしてしまいただ立ちつくす私は「いやあああ、シモツケ!」と、ヤマブキの甲高い悲鳴で我に返った。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
新年明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いいたします。




