表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/57

出会い

この世界に来て初めて聞く言葉が理解が出来てラッキーと思いつつ、エリカは声の聞こえる方へ近づいて行きました。

 高くて太い木々が沢山生えていて、その中の1本の木の根元にしゃがみ込み、声がする方を観察する事にした。

 この世界で初めて見る人類だわ。……地球の人間と同じに見える。


 目線の先には木々の間に作られた広い道があり、2頭立ての幌馬車1台を中心に立っている男達4人と倒れている男が6人。

 馬がいるわ。幌馬車を引く馬はサラブレッドに比べて小さくてかなり足が短く胴も太い。


 それにしても死神様が言っていたとおり地球に近い文明を持っていそう。


 立っている男たちは昔本で見た三銃士のような騎士の恰好をしている。

 大きな羽の付いた帽子に短いマントと吐き口の広がったブーツを履いて、少し遠いから顔の様子までは分からないけれど身なりからは立派な人達だと感じる。

 でも、血の滴る剣を持って怒鳴っているから、声をかける勇気はない。


 倒れている男たちはブラウスとかシャツを着ていてパンツに木靴を着用している。剣や斧みたいな武器が男達の周りの地面に落ちているところから推理して、倒れている男達は山賊かしら?


 見間違えかもだけれど倒れている男性のお尻にフサフサの尻尾が見えるような?


 遠目からだけれど全員地面に寝転んで動かない……はっきり見えなくて良かったわ。


「おい、この剣良いじゃないか」

「ああ、本当に賊風情には勿体ないな」

「しかし見ただけでは剣の切れ味は分からんものだ。……どうせ、使い物にならないなら最後の奉公に試し切りに使ってやろう」


 ん? 幌馬車で見えなかったけれど、もう一人生きた男がいる。

 三銃士の恰好の男性4人と違って、かなりみすぼらしい身なりの男だ。 


 男は怪我をしている様でよろよろと歩いて、山賊の剣を持った三銃士の前に出てきた。


 男が目の前に来ると三銃士の一人が


「これで今までの無能は許してやる」


 と言い、何の躊躇いもなく腕を振り上げ男の細い上体に剣を落とした。

 男は悲鳴を上げず胸から血を吹き上げ、膝から崩れて地面に倒れる。


 私はあまりの事に声を上げそうになる口を両手で力一杯抑えた。


 やばいやばいやばい! 絶対に見つかってはいけない!

 この世界の倫理観は分からないけれど、殺人をためらいなくするような人間には絶対に近づかない方が良いはずよ。


 三銃士の男達は倒れた男の事は気にもせず、良い剣が手に入ったと話ながら満足そうに幌馬車に乗って走って行った。


 ここに来て初めて遭遇した人間は、絶望的な世界を私に見せつけた。


 ▽▽▽


 どうしよう、今走って行った馬車の行く先にはきっと町があるのだろうけれど……。


 あんな野蛮な人間たちの住む町に行って、私は大丈夫なの?

 いや、無理じゃない。どう考えても身ぐるみはがされて殺されてしまう可能性の方が高いよね。


 しかし、人間らしく生活するためには色々と品物が必要だし。


 森の中は絵本に出てくるような可愛い小動物達が暮らすほのぼのとした世界なのに、一歩人間社会を見ればあの血なまぐささは何なのかしら? 


 差がありすぎて理解できない。

 あ、それで小動物は私が餌を持っていても、人間は危険だって分かっているから近づいてこなかったのかな。


 はあー、人間が危ない生き物だと理解して、私が無事に生活用品を手に入れる方法を考えなくちゃ。

 もう、今日は疲れたから帰ろう。


 んん? あ、あれ? 


 先程斬られた男が……お、起き上がった!?


 まさか、ゾンビ? この世界はゾンビ設定があるの?


 あ、いや、男以外の倒れている男性達は動く気配がないわ。

 って事はあんな大怪我をしても男は生きているの?


 なんかフラフラしながら馬車の走って行った道とは反対方向に歩き出したけれど、あ、膝をついて両手も地面に着いたわ。

 肩で息しながら、なんか呟いているけれど……あ、また立ち上がって歩き出した。


 数歩進んでは跪き、また立ち上がって歩く事を男は繰り返している。上を向いて必死に呼吸をしながら、進もうと頑張っている様だ。


 頑張れ頑張れ頑張って!


 私は両手を握りしめて心の中で一生懸命応援したけれど、男はまた地面に倒れ、今度は本当に動かなくなってしまった。


 ……もう、我慢できない!

 この先、この世界の人間に深く関わらないようにするけれど、あの男を今見捨てる事は私には出来ない!


 私は猛ダッシュで木々の間から男に向かった。


 胸が揺れると痛いので両腕でおっぱいを抱えるようにして、足を速く大股に動かす。


 男の元に駆け寄ると、男は目を開けたまま焦点が合ってない。呼吸ももう虫の息のように小さくなっていた。


 男の顔は頬がこけて、細い首には大きく細いリングがはめられている。

 髪の毛は直毛だが痛み汚れで固まっていて、シャツやパンツは真っ赤な血に染まり破れ、足は泥だらけの裸足だった。


「……迷っていて、ごめんね。

 直ぐに治してあげるからね」


 私は涙で見えない目をタオルで拭って、男の治癒をする事にした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

パソコンが新しくなって嬉しいけれど、操作になかなか慣れず文章を打つのに時間がかかります。

でも、読んでいただけているのを励みに頑張って最後まで書き上げますので、よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ