エリカの奇策
エリカは無い知恵を絞ります。
※残酷な場面、女性が乱暴を受けた場面があります。苦手な方は注意してください。
「利用価値の高そうな女だな。
では、先ずは皿について話してもらおうか」
ライオンの獣人は私を試すように言う。
皿……。私はフッとある案が頭に浮かんだ。これが上手くいくかは全く自信はない。その場凌ぎなだけかもしれないけれど、やるだけやってみよう。
「私の皿は本来の目的の物ではありません。あの皿は付属品なのです」
この場の空気に飲まれないように少し大きめの声ではっきりと言葉を出した。
「付属品とはどういう事だ?」
椅子に座る獣人の男が私に問いかける。私は自分を鼓舞しながら答える。
「私は魔法で料理を出すことができるのですが、料理を出すと皿に乗った状態で出現するのです。
もし、良ければ今この場にて料理を魔法でお出しして見せましょうか?」
私の話を聞いて3人は顔を見合い、ニヤニヤ笑いあった。
「そうだな。激しく体を動かしたばかりで、ちょうど腹も空いている。
出してみせろ」
椅子に座る獣人が私に向かい言う。
私は頷いてライオンの獣人の横を通り抜けて机の方へ歩いた。
歩きながら娼婦達に巻きつけられたローブを脱ぐ。服の上からローブを巻き付けられていたので、暑いし動きづらかった。そして脱いだローブを机の上にいる裸の女性に掛けた。
「おい、勝手な……」
シモツケが声を上げたが
「今から料理を出すのだからテーブルが必要なの。まさか床に置いた料理をご主人様に食べろというの?」
シモツケを見ずに言い返した。
先程、獣人の男が女性を牛族と言っていた。今まで散々牛族の女性は魅力的だと聞いてはいたが、机上で泣いている女性は本当にとても美しい曲線を持っている。彼女は私と同じくらいの年齢に見える20歳前後か、流れる艶やかな黒髪に潤んだ大きな瞳、張りのある豊乳とくびれのあるウエスト丸びをおびたヒップ
女性は意識はあるが一人で起き上がれる状態ではない。三銃士達に乱暴され体は疲れ切り、精神的にもズタズタに傷つけられている。
彼女は少し大きい体だから私では持ち上げられない。せめて少しでも衝撃が少ない様に、女性にローブを掛けたまま彼女の上体を後ろから抱えて、引きずって机から赤い絨毯の上へ下ろした。
床に座った女性はローブを握りしめガタガタ震えている。
彼女を獣人から隠す様に机を挟み、対峙する位置に立った。
ライオンの獣人も戻りソファーへどっかりと座る。シモツケが汚れたテーブルを台拭きで拭き綺麗に整えると獣人達は目で私に催促する。
獣人3人は肉食獣。金色のたてがみの様な髪を持つライオンの獣人。青味がかったシルバーブロンドでアイスブルーの狼の獣人。オレンジに近い金髪で茶色い瞳の狐の獣人。近くで見ると三者三様に美男子な容姿だけれど、内面は残虐非道な下衆な輩達だ。
こんな奴らに本当は料理を食べさせたくないのだけれど
パチンッツ!
指を弾いて、料理を出した。
テーブルの上には山の様な肉料理。ビフテキに串カツ、豚の丸焼きに焼き鳥、豚の生姜焼きやハンバーグ。机に並べられるだけ思いつくまま出現させると、獣人達は一様に驚いた顔をして料理に目が釘付けとなった。
「これは見たこともない料理ばかりだが、やけに良い匂いがするな」
狼の獣人が舌舐めずりしながら言った。
「ふ〜ん、確かに旨そうだが……。毒など入れてはいないだろうな?」
狐の獣人が疑わしそうに私を見る。
毒!? そうか料理に毒を入れたり睡眠薬を入れられれば、私ここから楽に逃げ出せるんじゃない。全然思いつかなかった! あ、でも無理だわ。日本で毒入り料理どころか食中毒ですら私は経験がないもの。自分の知らない料理は出せないわ。
「毒など入ってはいませんよ」
残念だなあ。毒入り料理とか知っておけば良かった。
「よし、シモツケ。毒味しろ」
「は? 何故俺が?」
「この娘が毒味しても嘘を突かれる可能性があるからだ。この料理を知らないお前が食って大丈夫なら、毒は入ってねえんだろ」
ライオンの獣人が威圧しながらシモツケにフォークを渡した。
シモツケはビクビクしながら、料理の中で一際美味しそうにデミグラスの香りを立てているハンバーグを一口大に切って口に入れた。
皆、固唾を飲んでシモツケの反応を見守る。
ムグムグ……ゴックン。
シモツケは蕩けそうな表情で
「う、うまい」
と一言言った。
シモツケの様子を見て料理に毒はないだろうと判断したのか、獣人3人は料理を勢いよく食べ始めた。
う〜ん、なんかないかな毒料理……そうだ! アレアレ! あの魚に毒があったわ! フグ!!
一度だけ家族でフグ料理を食べに言った時にフグの持つ毒の怖さを教えてもらったんだ。
フグにはテトドロトキシンっていう猛毒があって、その毒を口にすると呼吸が出来なくなって死んでしまうらしい。専門家がきっちりと捌かないと危ない。
あ、私が魔法で出す料理はプロの味だから、フグ料理を出しても毒は無い普通に美味しい料理の状態だ。
ああ、もう折角思いつけたのに、いや、待って。フグをそのまま魔法で出せないかしら?
それで獣人達にこの魚の食べ方は腹からかぶりついて下さいって説明して、フグを生のまま口に入れさすっていうのは如何かしら?
彼らは野性味あふれる獣人だもの。きっと思い切って生魚でも食べてくれるんじゃない?
そう期待して食事している獣人達を見れば、獣人達はテーブルマナーは分かっているらしく上手にナイフとフォークを使い優雅に食事をしている。
ちっ! こういう所だけは上品に礼儀正しいのかよ!
もう、ガッカリよ。フグを頭からバリバリ齧ってくれたら楽なのに。
やはり、初めの作戦でいくしかないか。
私は獣人が食べ終て空になったお皿を重ねて、また指を鳴らしてチキンソテーを出してテーブルに並べた。
動物はお腹が一杯になると気が緩んで眠くなったり動きが鈍くなる。だから、獣人達に沢山食べさして油断を誘い逃げ出せる隙を作ろうと考えた。
「良かったらシモツケさんとヤマブキさんも食べてください」
後ろの控えるシモツケとヤマブキにもハンバーグを渡す。
「え…私…いらない」
ヤマブキは見たこともない料理に警戒して手を出さないが、シモツケは先程毒味した時に美味しかったからか、渡したハンバーグを直ぐに食べ始め
「美味いからお前も食ってみな」
と、ヤマブキに食べることを進めた。
シモツケは主人の手前、私に勧められたからといって一人で食べるのは萎縮するから、仲間が欲しかったのだろう。ヤマブキは組織の中で上司にあたるシモツケに言われハンバーグを食べだした。
獣人達は魔法で出す料理を夢中で食べている。私は空になった皿を下げては、新しい肉料理を次々机の上に並べた。
さあ、さあ、皆。動けなくなるくらいお腹いっぱい食べてね。
私はヘンゼルとグレーテルの話に出てくる魔女の気分で獣人達に料理を食べさした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




