大悪党
誘拐されたエリカが連れてこられた先は……。
※残酷な場面、女性が乱暴を受けた場面があります。苦手な方は注意してください。
荷馬車の外へ出るようにシモツケに命令され大人しく従った。
隙を見て逃げたいけれど、ボインで思うように走れない私が此処から逃げるためには、シモツケ達を油断させてタイミングをみなくてはいけない。その為に今は彼らに逆らわずに従順に行動しよう。
降りた場所はスラム街ではなく、立派なお屋敷の敷地内。
白と黒の配色がカッコイイ、四角型が積まれた形をしていて、この国の中でも裕福な人が住んでいそうな建物。
悪い事を沢山して儲けているのね。
視界のかなり遠くの方にシャクナゲ国のお城の塔が少し見える。
お城にいるはずのレンギョウさん、私に気が付いてくれないかしら?
いくら国一番の魔法使いとは言ってもこの距離では私を察知出来ないか。
娼婦の女性達が移動で疲れた為、今夜くらいは仕事を休ませて欲しいとシモツケに言っている。
シモツケは片眉を上げて
「ヤマブキ、エリカを連れて来い。他の女は店に行け。稼がなければ生きられないだろうが」
と、慣れた口調で娼婦たちに指示を出し彼女達を追いやった。
娼婦の女性達は深く溜息を吐いて、重い足取りでお屋敷とは逆の方向へ歩いて行った。
「ほら、アンタはシモツケの後をついて行きな」
ヤマブキと呼ばれた私に刃物を向けている娼婦が命令する。
ヤマブキは私とほぼ同じ身長で体格も痩せている。でも、彼女はナイフを持っているし、こういう事をやり慣れていると感じた。
ヤマブキには隙がない。
今、私が逃げようとすればヤマブキは躊躇なく刃物を私に刺してくるだろう。
焦らず何とか油断させて此処から出る方法を見つけなくては。
「こっちだ」
シモツケはお屋敷の外壁にある松明を一本手に取ると、地下へと続く階段を照らした。地面に開けられた穴の階段は狭くて、木の葉で隠され人目につかぬように屋敷横に作られている。
成る程、悪の地下組織って感じね。って、感心している場合じゃないわ!
こんな場所へ監禁されたら逃げられないよね。
「わ、私をどうするつもりなの?」
もう、どうしていいのか分からないけれど時間稼ぎでシモツケに聞いてみた。時間を取ったところで何か出来るわけではないけれど、大人しく言いなりにばかりなりたくない。
「さあな、それを決めるのは俺じゃないから」
シモツケは口の端を少し上げて私のボインを見ながら
「もし、エリカを俺の好きにしてイイってんなら、さっきの馬車の中での続きをするがな」
と、愉快に言う。
「なっ!!」
気持ち悪いいいいー!!
なんでこんな男が奴隷繋がりとはいえアベリアのことを知っているの!
アベリアはあんなに紳士だったのに、此奴は私の気持ちを考えずに嫌な事をする。
…ああ…そうだ、多分アベリアの方が貴重な存在なんだ。
奴隷として酷い環境で生きてきたはずなのに正義感や優しさを彼は持っていた。
「ほら、静かにして階段を降りて行きな」
ヤマブキが私の背中を押して階段を下りるように背中を押した。
仕方が無くゆっくりと階段を降りる。
地下の道は暗くてシモツケの持つ松明の灯りを頼りに足の置き場を確認しながら進んだ。
階段は13段。
地下へ降りるとすぐに重厚な木の扉がある。
なんかとっても嫌な予感。
地下へ降りて来る途中から女性の細い泣き声と野太い男の声に荒い息遣いが聞こえていた。
背筋を冷たい汗が流れて心臓がドキドキと強く打ち付けた。
この地下の扉の向こうでは現在進行形で犯罪が起きていると感じて。
シモツケが手を伸ばしてゆっくりと重い扉を開けた。
見たくない! 部屋に入りたくない!
扉の前で足がすくんで動けない私を背後からヤマブキが力強く押して、無理矢理地下の部屋の中に入れられた。
「おお、予想よりも早かったな。シモツケ」
「はい、ご主人様。お楽しみのところ、お邪魔してしまい申し訳ございません」
地下にあるとは思えない広い豪華な部屋。赤い絨毯が敷き詰められ白い壁にはインテリアの如く大小様々な剣が飾られていて、天井には魔法で輝くシャンデリアが下がり部屋の中を明るく照らしている。
部屋の中央には美しい彫刻の掘られた重厚な応接セットがあり、そこには3人の体格の良い獣人が座っていた。そして、中央にある大きな美しい机の上で裸の女性が横たわり、か細い声で泣いている。
「ああ、気にするな。一通り終わったところだ」
「全くこの女には騙された。処女だと思って拐ったのにヤリマンだったとは。
やはり女は外見では処女だかどうかわからんものだな」
「貴重な牛族の女だが処女でないならやはり価値は落ちる。全く残念だ」
男達の会話の中、裸の女性は動かずに仰向けで、只々静かに涙を流していた。いや、動かないんじゃなくてショックで動けないのか。
女性を可哀想にって思う感情よりも、この空間の状況が怖くて体の内側から冷たくなってくる。
息が苦しい。
私は震える足に力を入れて、その場にへたり込まないように必死に立っていた。
力で勝てなくてもせめてこれ以上、精神的に負けないように。
「ご主人様。これがあの皿に関わっていたと思われるエリカという女です」
3人の獣人が私に注目した。私も負けるものかと3人を見る。
…あれ? この3人の服装…それに体格とか雰囲気…あ!! アベリアを斬りつけた三銃士に似ている。というか、この3人があの時の三銃士、アベリアを奴隷にしていた非道な奴らじゃないかしら。
三銃士の一人が椅子から立ち上がり私の方へ歩いて来る。
デカイ、今のアベリアと同じくらいの体格。
豊かな神々しく見える金髪はたてがみの様で此奴はライオンの獣人か。大きくシッカリとした鼻に凛凛しい金色の瞳。外見は美丈夫な男。
男は私の手前まで来てジロジロと私を見回してきた。怖いけれどこの程度の恐怖はカルミア王子で耐性が出来ているよ。
「ほほう、外見もなかなかの上玉な女だな」
「エリカは治癒魔法に長けており、治癒に関してはあの城の魔法使いレンギョウよりも上だそうです」
「それはそれは」
ライオンの獣人は手で顎をさすりながら、厭らしい悪い笑顔で頷いた。
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