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良い子でなんかいられない

やっとネット環境が整いました。

再開します。

また、よろしくお願いします。


エリカはアベリア会いたさに冒険します。

 はあ―。


 診療所から出た繁みで深く息を吐いた。


 午前の治癒予定の3人を治し終えた後、リラとお茶を飲んで焼き菓子を食べた。

 それから直ぐに昼食が運ばれてきて、リラは昼食と焼き菓子でお腹が膨れて昼寝をしだす。


 ここに来てほぼ毎日リラは昼食後軽く1時間は寝るのが習慣づいてしまっていたから、私はこの時がチャンスとばかりに診療所を抜け出した。


 一応、抜け出す前に午後の治癒予定の負傷者2名を治した。


 1人で戦場地帯を歩くことに不安はあるけれど、アベリアに会う為なのだから頑張るしかない。

 前世では経験が無かったけれど、恋ってこういう感じかしら。

 普段ならやらない大胆な行動をしていると思う。


 戦場へ続く道は城の兵士や傭兵たちの馬や荷車の通った後で踏み固められて道が出来ているから、この道を進んで行けば自然にアベリアのいる戦場へ着くと思った。


 道が分かりやすくて良かったわ。迷子にはならなそう。


 私は小走りで道を進む。

 夜は危険度が増すと思って昼に出てきた。治療所の人たちの話では新しい戦場はここから片道4時間ほどで陣営までなら3時間だと言っていた。


 胸が邪魔で走れないけれど、このペースで進めばなんとか日が沈む前には陣営に着くはず。


 一足ごとにアベリアに近づいて行っている。

 私はアベリアに会える期待と喜びで心がいっぱいで、この世界に来て教わった危険に関しての知識が頭の中から消えてしまっていた。



 国軍が通った道には生き物のがいないんじゃないかと思えるほど、静かで恐怖を感じるものは何もなかった。怪物を全滅はさせていないとレンギョウさんは言っていたけれど、国民が通る可能性のある道に怪物が現れない程度には倒しているというのは本当なのね。


 道の周囲は見通しが良く草木はほとんどない荒地で、焼かれた大地が広がっている。


 あれ? 前から人が沢山私の方へ歩いて来るのが見える。


 私が小走りで向かう戦場のある方向から、私の方へ10人程が荷馬車と一緒に移動して来た。


「あ!」

「え!」


 向こうから来た団体の前を歩いているのは、先日に治療所でアベリアの知り合いだと声をかけてきた人間の男性シモツケさんだ。


「エリカさん! こんな所で貴女どうしたんですか?」


 シモツケさんはさほど大きくない目をもの凄く開いて、私に駆け寄ってきた。


 しまったあ。

 陣営に着く前に傭兵さんに見つかってしまった。

 これは診療所へ連れて帰られてしまう。シモツケさんを何とか誤魔化さないと。


「あの……その……」


 ここまで小走りできたのと、今朝から重傷者5人に治癒を大急ぎで全力でかけていたから、自分が思っていた以上に疲れているらしくて頭が回転しない。

 もともと嘘とか苦手な方だから余計に何を言っていいのか思い浮かばないわ。


 シモツケさんは私の側に来て周囲を見渡して、凄く険しい目つきで辺りを警戒しだした。

 ああ、こんな所に私一人で来たから、シモツケさんに心配して怒られるかな。


「エリカさん、もしかしてお1人でここまで来たのですか?」


 ああああ、こんな見通しの良い場所で1人ではないとは嘘は言えない。


 私は仕方なしに頷き目を伏せた。


 せっかくここまで来たけれど、陣営には行かせてもらえないかな。

 遊び場じゃないものね。皆命懸けで戦っている戦場だもの。傭兵のシモツケさんが許してくれるわけがない。

 ……でも、待って。

 シモツケさんはアベリアの知り合いなんだし、私がアベリアに会う為こっそりと診療所を抜けてきたことに同情してくれるんじゃないかしら? そしたらシモツケさんは私を見逃してくれるかもしれない。

 そうよ。ここは素直に言ってみよ……う……。


 私が目線を上げて背の高いシモツケさんの顔を見上げると、彼は黒い笑顔を私に向けていた。


 彼の瞳の色は琥珀色なはずなのに今は光を通さない闇のように暗い。


 私は急に雰囲気の変わったシモツケさんに恐怖して動けなくなっていると、シモツケさんの横から女性が艶かしい声で話しかけてきた。


「ちょっとぉ、シモツケ。もしかしてその娘があんたが言ってた子なの?」


 シモツケさんの後ろから8人女性が付いて来ていた。

 女性は皆、顔の特徴が分からないほどの厚い化粧をして、ローブを頭から足首まで巻き女性らしい曲線のある身体つきを強調している。

 陣営近くで兵士たちを慰安していた女性達だ。


「ああ、そうだ。俺はすこぶる運が良い」


 シモツケさんの声に背筋がぞっとして、彼から距離を置こうと後退したら両手首を掴まれた。


「は、離して! シモツケさん何をするの!」


 この人、先日会った時と全然違う! 弱弱しくなんてない! 怖い!


「こんな獲物が自分から1人きりで人目のない場所に来るなんて。

 おい、皆、計画は分かっているな。

 このままこの娘を攫う」


 シモツケさんは舌舐めづりをして厭らしい顔で女性達へ声をかけた。


「さ、さらうって! 何で私を!?」


「くくく、アベリアに皿を売らせていた主人って、アンタなんだろう?

 俺の主人は闇商人で、あの上質な皿を欲している奴らにアンタを捕まえて行けば大金を貰えるんだよ」


 あ、お皿狙いの闇の商人!

 しまった!

 アベリアから注意するように言われていたけれど、この半年はお城で過ごしていたから、全く意識していなかったわ。


「おい、女ども早く此奴に着せるローブを持って来い。

 あと、薬草を持って来てくれ。暴れられると困る」


 イヤー――!

 全力でシモツケさんの手を振り払おうとしているけど、痩せてはいてもさすがは傭兵、シモツケさんに力強く握られた手首は緩まない。


 あ、あ、女の人が手に薬草の入ったコップを握り私の口へ飲ませようとしている!


「ぃやあ―――――! アベリアたすけて―――え――!」


 女性3人がかりで薬草を飲ませられた。

 私は遠のく意識の中アベリアに助けてと叫んでいた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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