怪物退治終盤
エリカは決意します。
「もうあと2・3日で片が付くと思いますので」
「え? あと2・3日って」
新しい診療所へ着き一夜が明けた。
朝、私とリラ姫が診療所に入ると、開口一番レンギョウさんが言った。
レンギョウさんも王子達と前線に出て魔法で戦っていたらしいが、彼は全く疲労した感じはなくお城にいた時と同じ澄ました顔をしている。以前、リラ姫からレンギョウさんは馬族の中でも稀なユニコーン族の獣人だと教わった。
レンギョウさんの血統は魔力が高く、そして皆不思議ちゃん系な性格らしい。
レンギョウさんはこの国一番の魔法使いで、魔力が多いから戦闘も余裕なのかな。
だったらもっと早くレンギョウさんが戦場へ出ていたら、負傷者が少なくなってたんじゃあないの。
「怪物は全てやっつけたの?」
「いいえ。エリカ様。
我々の目的は怪物が住民へ被害を及ばないくらいに撃滅すればいいので。
全滅を狙っている訳ではないのです」
「ふふ、怪物全滅させちゃうと冒険者達のロマンスが無くなっちゃうもんね」
リラ姫が愉快そうに私に抱き着きながら言う。
う~ん、ロマンスの為に怪物と共存していくのは変だと思うけれど、観光資源とか無駄な殺生をしないとか考えればありなのかしら?
「怪物の数がもう少し減ったら、私達は城へ帰れるのね」
リラがレンギョウさんへ向いて言うとレンギョウさんは微笑んで
「はい。私は城での仕事がありますので、今日でお先に帰城させていただきますが、リラ姫とエリカ様も遅くとも3日後には城へ帰れるはずです。
お二人とも不慣れな環境での生活はご不自由だったと思いますが、もうしばらくで帰れますのでお待ちください」
レンギョウさんはそれではお先にと片手を振って部屋を出て行った。
え―――と、急な話で……どうしよう。
お城へ帰る前にアベリアに会いたいけれど、アベリアが怪我をしてここへ来ない限り、もう会うことが出来ない。
アベリアに会いたい。
戦場に行くのが危険なのは分かっているけれど、今アベリアに会わなければ一生自分は後悔する。
言うことを聞く良い子でいる方が簡単なのだけれど、ここは自分の感情に素直になるべきだと思う。
アベリアが私の事を好きではないとしても彼の口から直接聞きたい。
もう2度と私と一緒に暮らさないと。
そうでもしなければ自分の気持ちに踏ん切り着かないし、アベリアを諦められない。
私がお城へ戻れば彼に会う機会は無くなってしまう。…もう時間は無い…
「ちょっと、エリカ聞いてるの?」
私がアベリアへ思いを寄せている間に、治療師さんが今日の患者さんについて説明に来ていた。
私がボーっとしていたからリラ姫が1人で対応してくれたようだ。
「ああ、ごめんなさい。え~と、今朝の治癒は5人なのね」
リラ姫から負傷者さんの情報の書かれた紙を受け取り、目を通す。
「そう、今朝1番に戦場から重傷者が運ばれてきたから、その3人を優先して治癒をかけて欲しいって言っていたわ。
1人は兵士であと2人は傭兵だから、それぞれの宿舎に今いるから、兵士から治して下さいって」
傭兵がいる! もしかしたらアベリアかしら?
あ―――、残念。違った。
書類の名前を見たら全く違うエルフとオーガの傭兵さんだ。
「…これは…本当に兵士の方が重症なのかな?」
「さあ? まあ階級的に兵士を先に治すのが普通だから」
3人とも体の欠損があり、早く治癒しないと体が戻らないかもしれない。
私達は急ぎ歩きで兵士の宿舎へ向かう。
兵士の看護師さんに案内されて重傷者のベッドへ行き直ぐに治癒力を彼の体へ流した。
兵士は大粒の汗を額に浮かべ呻いていたが、大きくえぐられた腹部が回復するにつれて呼吸が整い呻き声が小さくなってきた。
こんな酷い傷、どんな怪物と戦っているのだろうか?
アベリアは今、大丈夫なのか?
兵士の体を9割ほど治し、次の傭兵の負傷者の元へ急ぐ。
エルフの傭兵の方がオーガの傭兵よりも傷は浅いが体力が無いのか弱っていて、エルフから治癒をかける事にした。エルフの噛み砕かれた二の腕に治癒をかける。
大きな怪物なのか、即死でなければ怪我だったら私の治癒で治せるはずだけれど、アベリアが心配だわ。
戦場手前にある陣営に兵士や傭兵がいるはず……私が一人でその陣営にたどり着けるか分からないけれど行ってみたい。
エルフの肩を治して、隣のベッドのオーガの千切れそうな両足へ治癒をかけた。
「ちょ、ちょっと、エリカ連続でこんな重傷者に治癒をかけ続けて、貴女大丈夫なの?」
「……うん。今日はこのままいけそうだから」
リラ姫が心配して私の額に浮かぶ汗をハンカチで拭ってくれる。
普段、1人1人治癒をかけた後、余程の重傷者でない限り私は少し休憩をさせてもらっている。
治癒力を使うには私の精神力が深く関係していて、私が気弱になっていると治癒が早く的確にかからないようで、少し休憩して気分転換してからでないと上手く治癒力が発生しなかったから。
血を見たり凄惨な傷を見るとどうしても気持ちが落ち込んでしまっていた。
でも今は今日は違う。
アベリアの事に心がとらわれて、血や傷ついた体が頭の中に残らない。
オーガの足は丈夫で太い立派な状態に戻った。
それぞれの負傷者を治療士さん達に任せて私とリラ姫は一旦休憩に部屋へ戻る事にした。
「なんか、今日のエリカ気迫が凄いというか……普段と違うけれど何かあったの?」
部屋に戻りポットに茶葉を入れリラにお茶を入れてもらう。
お姫様にお茶を入れてもらうなんて失礼かもしれないけれど、彼女は生活魔法が使えるので私はリラにお茶を貰った。
「え……、いや、ほらもうすぐお城へ帰れるから多少無理しても大丈夫だと思って」
「ふ~ん、まあ、エリカのペースで治癒してくれたらいいけれど、無茶はしないでね」
「うん。ありがとうリラ」
そして、ごめんなさいリラ。
私、どーしてもアベリアに会いたくて…でも…リラに言えば反対されて監禁されると思うから、私1人で戦場近くの陣営に行くね。
リラに黙って行くよ。本当にごめんなさい。
私は心の中でリラに向かって土下座した。
※ ネット環境変更の為、投稿を少しお休みします。
変更が出来次第、投稿をしたいと思います。
ここまでずっと読んでくださった方達には本当に申し訳ありませんが、年内には必ず再開いたしますので宜しくお願いいたします。




