エリカの本気
エリカは恋しいアベリアに再会できましたが、彼は瀕死の状態です。
全力でアベリアに治癒をかけます。
全力です!
私の持てる治癒能力を全て出しきる所存です!!
いや、昨日の兵士さん達にだって治癒をかけるのに手を抜いていた訳では無いですが。
でも正直、来たくも無い戦場に連れて来られて血だらけの負傷者兵を見て恐怖で心が負けておりました。
すみません! 土下座で謝ります!!
今、ここへ来て本当に良かったと思います。
まさか、この場所でアベリアに会えるなんて思ってもいなかった。
私を戦場へ連れて来てくれたから、アベリアを治癒することが出来る。
私が気が付かないうちに知らない所で好きな人を失わずに済みそうです!
アベリアに初めて会った時と同じくらい今の彼の傷は重い。
くううう、休みなく治癒を流し続けているからずっと伸ばしている腕が震えてきたし、疲れで目が霞んできたけれど絶対に治す!
破れたお腹から内臓が飛び出そうになっていたのが、もう少しで内臓も治癒されて体内へ戻ります。皮膚が塞がってきたよう。
ほら、見て。
虫の息だったアベリアの息が深く規則正しく吸ったり入ったりしだしたわ。
顔色も良くなってきた。
治癒力の出し過ぎで苦しい……でも、まだ……まだもう少しアベリアの体が治るまで……
あともう少し……もう少し……少し……
「エリカ!」
遠くなる意識の端で鈴の音のようなリラの声が響く。
私の体を後ろから支えてくれるリラ。
さり気なく彼女にボインを揉まれたけれど、アベリアを助ける事が出来た充足感で今はもう何も気にならなかった。
▽▽▽
………………。
「……あれ? ここは……」
目を開くと白い布地の天井が見えて多分、私の寝泊りしている後衛内のベッドの上だ。
横を見るとリラが不機嫌そうにピンク色の可愛い口を曲げている。
「エリカ、気が付いた?」
「うん……あ、リラ。私がさっき治癒したオーガの男性はどうなった?」
私は重い体を起こしながらリラにアベリアの容態を聞いた。
薄れゆく意識の中でアベリアの瞼は動いていたはず。彼は意識を取り戻したよね。
「へー、エリカあの傭兵の事が気になるの?」
リラは今まで私に見せた事が無い暗い表情をして私を睨むように見る。
ん? 何で? リラは私に怒っているの?
「あ、その、あのオーガにはお城へ行く前にもの凄くお世話になったのよ」
アベリアに世話をされていたのは本当。彼は私の奴隷だったから、アベリアは嫌々だったかもしれないが私の面倒をみてくれた。アベリアがいなかったら私は異世界に来て楽しく日常生活が過ごせななかった。
そして、私はアベリアを奴隷にしていた引け目で彼を隷属関係から解放した後、アベリアと深く会話をせずに彼を突き放す様にしてアベリアから離れてしまった。
あの別れを私はとても後悔している。
もっと素直に私の気持ちを彼にぶつけていたら、もしかしたらアベリアと私は恋人でなくても違う形で一緒にいられたのかもしれないって。
リラは両腕を組んで眉間にしわ寄せ私を見る。
「世話?」
「そう。
私、異世界からきてこの世界の事が何も分からなかったから、そんな私の生活を彼は助けてくれていたの」
「……ふ~ん」
「それで、彼はどうだった? 私の治癒で体治っていたかしら?」
そうだ、ゆっくりとベッドで横になっている場合じゃないよ。
またアベリアに会えたんだもの。
今、思いがけず幸運にもアベリアに再会したのだから、私の彼を好きな気持ちを伝えてみたい。恋人は無理でもせめて友達になれたら……。
私がベットから下りようとすると私の動きを制止させるようにリラが肩を掴んだ。
「あのオーガの男の傷は治ったわ。
エリカが物凄い光の魔法であいつの体を長い時間包んでいたから、エリカが気を失ってあの男はベッドから起き上がった。
全快したあいつは戦場へ戻って行ったわよ」
リラは苦々しい顔をして言う。
「……え? 戦場へ行った?」
あんな大怪我をした後にすぐに怪物と戦いに行くなんて、アベリアは何を考えているの?
「うん、そうよ。
あれほどエリカが全身全霊で自分の体を壊すのではないかと思えるほどの治癒をかけていたのに、あの男はエリカをここに置いてサッサと戦場へ行ってしまったわよ」
「……そ、そんな……また戦場へ……」
私を置いて……アベリアは私を見ても私と言葉を交わそうと思わないほど……彼にとって私はどうでもいい存在なの……
涙を浮かべる私にリラは優しく語りかけてくれる。
「エリカがあいつを大事に思っても、男なんて所詮闘いが大好きな生き物なんだから仕方がないのよ」
戦場が好き? 確かにアベリアはとても強い男だけれど、自分から戦いに挑んでいくタイプではなかったと思う。アベリアには何か戦わなければならない理由があるのではないかしら?
……やっぱりアベリアに会いたい……直接会って話したいよ。
「え、エリカ! 何処に行くつもり?」
部屋から出ようとする私の体に縋りついてくるリラ。
「私、彼に会いに戦場へ行きたい」
「ええ、止めてエリカ! 危ないわ」
「でも、もう後悔をしていたくはないの! アベリアに会って彼に伝えたいことがあるの」
「はあ! 駄目だって! 戦場では流石にわたしでもエリカを守れないわ。危険すぎるの!」
「お願い! 離してリラ! …って…胸を揉むのは止めて!!」
私の背後から腕を回してリラの両手は思いっきり私のおっぱいを掴み、遠慮もなく手の平でおっぱいを揉んでくる。
くそ! 何故か力が入らない!!
「嫌よ! 戦場に行くっていうなら、エリカが行くのを諦めるまで胸を揉み続けてやるわよ!」
「私一人で行くから! リラに迷惑をかけないから!っていうか胸揉むの関係ないよ!」
「関係あるわ! エリカに万が一の事があればこの豊かなおっぱいがわたしの目の前から無くなってしまうのよ! そんなのわたし耐えられないわ!」
「リラ、お願い。貴女本命の牛族の女性を探して!」
「嫌よ!
わたし本気でエリカの事、好きなんだからね!
そうでなかったらいくら獣人で王族で戦えるといったって、戦場なんかにわたしは付いてこないんだから!」
私とリラのアホな攻防は結局、私の体力負けで終わった。
ああ、ずっと会いたかったアベリアに出会えたのもつかの間。戦いに行った彼に私はまた会う事が出来るのかしら?
ううん、弱気にならない。
絶対に私はアベリアに会う!
会って人生で初めての告白をするよ!!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




