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再会?

人生とは急に思いがけない方向に進まざる得ない事があります。

「は?」


「お願いいたします。エリカ様」


「いやいやいや、本気じゃ無いですよね?」


「いえ、申し訳ございませんが、エリカ様に北の戦場にて兵士の治癒に助力していただきたいです」


 私の足元。

 カルミア王子の部屋のフサフサ毛の長い絨毯の上で土下座しながら私に懇願するレンギョウさん。

 レンギョウさんの整った顔が床ぎりぎりにあって、美しい顔が汚れてしまうんじゃないか変な心配が頭をよぎる。

 っていうか、もう、頭の中の整理が出来ないわ。


 急に私に怪物と戦っている戦場へ行けだなんて。


「このままでは我がシャクナゲ国兵士又は傭兵は怪物たちに全滅させられてしまうやもしれません。

 そうなればこの国まで怪物が攻めてきて民は食われ、国は滅んでしまいます。

 女神さまとの約束で治癒力を王子以外に使わない様にエリカ様には言ってきましたが、国が無くなればエリカ様を守ることは出来なくなります。

 エリカ様が安全に暮らしていく為に、どうかエリカ様のお力をこの国の為に使っていただきたいのです」


 あー、レンギョウさんが言う事が正論な気もするけれど……無理でしょう? 


 だって私、攻撃力は全く無いのよ。

 私は治癒力で余程の事が無い限り死なないとはいえ、首をもがれたり胸に穴が開けば即死する。

 病気や多少の怪我には強くても、戦場で生き残れるほどの体は持っていないよ。


「あ、あの私、治癒力以外は生活魔法の火も風も出せないですし、剣も当然使えないような攻撃力ゼロな人間ですので、怪物のいる場所へ行くのはちょっと……無理かなあって思うんですよ」


「大丈夫だ。お前は後方支援。前線へ出る事は無いから怪物と戦う必要はない」


 出会った時から今まで真面な会話をしなかった私の恐怖の対象カルミア王子が言う。いや、王子の言葉全く安心できません。


「エリカ攻撃力が無いんだぁ」


 と、突然ちょっと嬉しそうにリラが私を見上げて言った。

 ……嫌な予感。


「じゃあ、戦場でわたしがエリカを守ってあげるよ」


「ええ!! リラはこの国のお姫様でしょう? 私以上に戦場に出たら駄目でしょう!?」


「うふふ、わたしはシャクナゲ国末娘虎の獣人リラ姫だよ。

 この国の王族は国を守るため男も女も関係なく戦う戦士なのよ。

 わたしこう見えて強いからエリカ一人ぐらい守るよ!」


 リラは細い二の腕を私に見せ口の端を上げ微笑んだ。

 え~と、リラ貴女、私よりも腕の力瘤が出来ていないのだけれど。どう、反応したらいいの。


「ああ、そうか、そうだな。リラ、お前がこの者を守ってやれ。

 そうすれば俺は安心して前線で戦える」


 カルミア王子が信頼しているぞという風にリラの頭に大きな手を置き言う。


 は? お兄様本気? 貴方こんな可憐な妹を私の用心棒につけるの?


「おお、リラ姫がエリカ様を守って下さるとはとても心強い。

 エリカ様これで安心して北の戦場の後衛にて兵士や傭兵の治癒が出来ますね!」


 レンギョウさんは床に座り上体を起こして私を見上げながら、もう決定ですよと言わんばかりに言い切った。

 3対1、しかも3人とも推しが強く私の意見なんて聞く耳持たない獣人たち。


 ……はあ……、あ―――――、私この異世界で本当に残りの寿命を全うできるのかしら?


 王子の部屋から見える空は何処までも青く澄み渡っている様で、北の戦場など本当にあるのか疑問に持つほど平和に見えた。


 ▽▽▽



 昨日、北の戦場地後衛、負傷者兵が収容されている陣に到着した。


 陣の中は血と生臭い臭い怪我人のうめき声がして、いくら味方兵とはいえ私は心が怯えて陣に入るのが躊躇われる状態だった。

 私は到着後直ぐに城の兵士の中でも上官の怪我から治療するように指示され治癒をかけた。


 う~ん、なんか思うように治せない。

 カルミア王子の治癒の時に気付いたけれど、私の力って私の心の状態に左右されるんだなあ。

 ここに来て沢山の怪我人や死体を見て、私は恐怖で心が委縮してしまっているからアベリアの時ほど集中出来なくて治癒力が上手く出せない。


 そんな私でも治療役の魔法使いたちより治癒能力が高いと認められ、この日は城の兵士達を数十人治癒したら疲れてしまい負傷した傭兵は明日治癒することなった。



 次の日、傭兵の負傷者は城兵よりも人数は少なかった。


「傭兵は使い捨てだから……負傷者よりも死体になる者が多いの」

 リラが小さな声で教えてくれた。


 私は傭兵の立場を聞いて悲しい気持ちになり、傭兵の中でも一番重症だと言われた傭兵のベッドへ向かった。


 陣の奥、暗い場所で傭兵の男は細い息を吐いている。


 今にも消えてしまうのではと思えるほど生気が感じられない肌色をして……え?


 暗くてはっきりと顔が見えないけれど、この人は……この男は……



「……アベリア?」


「……」


「ア、アベリアだよね?」


「……」


「アベリア!」


「……エ……リカ……」



「アベリア!」


 私の恋する人がそこにいた。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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