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シャクナゲ国の危機

アベリアと別れて悲しみの中お城で隠棲生活するエリカ。

月日の流れとともに彼女の環境も少しづつ変わっていきます。

 異世界に来て12ヶ月。1年が過ぎようとしている。


 色んな事、主にアベリアへ恋をして失恋した私は精神的に成長した気持ちになっている。


 今だにアベリアの事を想うと胸が締め付けられるから、失恋から立ち直るにはもう少し時間がかかりそう。

 それでもさすがにもうアベリアを思い出しても涙を流す事は無いわ。


 その要因の一つはお城での生活が思いの外騒がしくなったから……。


「おっはよう! エリカ起きてるぅ」


 朝早くからノックも無しに私の部屋へ入って来たリラ姫。


「姫様、この部屋に来てはいけないと何度言えば分かるのですか?」


 少し遅れてレンギョウさんも入室して来る。


「えー? 何で来ちゃ駄目なの。わたしはエリカとお話ししたいだけよぉ」


 リラは私に軽めのハグをしながらレンギョウさんに顔を向けた。

 レンギョウさんは肩尻を寄せて少し困った風に


「エリカ様の邪魔になります」


「邪魔なんてしてないし、第一こんな狭い部屋で一人きりでいる方が精神状態を悪くさせるわ」


 ここ毎日、リラもレンギョウさんも私の存在そっちのけで2人で言い合う。


 リラにとって私は彼女の初恋の人に似ていて外見がドストライクらしい。

 外見って、まあ胸の大きさがリラのタイプらしく毎日ボインをお触りしに私に会いに来る。


 う~ん、リラは私よりも小柄で華奢な美少女で正直胸を触られても嫌悪感は持たないけれど、お姫様として同性にセクハラするのは問題かな? 他の女性に私と同じように接してはいけないといつかしっかりと教えなくてはと思っている。


 レンギョウさんはここ数日、仕事が忙しいらしく目の下には薄っすら隈を作っていた。その為リラに対してもイラついているのが分かるわ。リラは末娘とはいえ王族だから普通はレンギョウさんでも強くリラに注意なんてしないもの。


「はあー、もういいです。エリカ様、王子の元へ行きましょう」


「……はい」


 レンギョウさんが疲れているのは2週間前カルミア王子がまた怪物退治で大怪我して帰城したから。


 何故に王子を戦場の最前線に出すかな?

 あと、私の治癒力、王子には無限に使うみたいな状態なんだけれど……死神さんとの約束上これっていいのか?

 レンギョウさんに聞きたいのだけれど、疲れと苛立ちのピリピリ状態の彼に聞いてはいけない気がする。


 私は重い足取りでレンギョウさんの後をリラと一緒に付いて行く。


 ああ、本当にアベリアとの気ままな山暮らしが懐かしいわ。


 カルミア王子の部屋に着くと王子は部屋で腕立て伏せしてた。

 背中には肩から腰にかけて大きく切り裂かれた傷がふさがりきっていないのに。


「お、王子! 何をされているのですか! 背中の傷が開きます。お止め下さい!」


 レンギョウさんが慌ててカルミア王子の近くへ走り寄った。


「うるさい! これくらい平気だ! 俺が弱いばかりに……くそ! 俺は一刻も早く戦場に戻らなければ!」


 うわ~、本当に何でこの人が王子なんだろう?

 獣人は戦闘民族だからこういう血気盛んな人でないと逆に王子が務まらないのかしら?

 しかし、怖いわぁ。治癒をかけに近寄るの嫌だわ。

 カルミア王子の怒声を聞いて私足震えてる。


 レンギョウさんが王子をどうにか説き伏せてベッドに連れて行き、私を呼び寄せる。

 私は仕事だと割り切り勇気をもって王子に治癒をかけようとしたが、王子はレンギョウさんを見上げ話し出した。


「俺を助けたあいつは大丈夫だったのか?」


 カルミア王子はいつもの鋭い瞳を不安げに揺らしてレンギョウさんを縋るように見た。


「……あいつ……ですか?」


 レンギョウさんは王子が誰の心配をしているのか見当が付かないらしく考え込んだ。

 カルミア王子は少し苛立ちながら


「あいつは……オーガの傭兵だ。

 俺がワイバーンの群れに突進した時に唯一、俺に後れを取らず一緒につっ込んで来た男だ。

 かなり腕の立つ男だったが俺の死角からワイバーンが襲って来て、俺は背中に大傷を負いその場に倒れた。数匹のワイバーンに囲まれた俺を救出に来たオーガ、あいつも体にかなりの傷を負っていたはずだ」


 カルミア王子は苦渋の顔をして落ち込んだ。


 オーガかあ、私の好きな人と同じ種族だなあ。

 オーガには良い人が多いのかな。


 私1人呑気に考えていたが、カルミア王子レンギョウさんリラすら暗い顔をして俯いた。


「西の怪物は何故これほど数を増やし凶暴化したのかな? 以前は1年に1回討伐隊が出れば良かったのに数年前からは討伐隊が向かう頻度が上がっているし、冒険者も探索中に今までのレベル以上の怪物に遭遇して亡くなる人が多いと聞くわ」


 リラが不安げに私に抱き着きながら会話に混ざる。リラ姫は側近の世話係や貴族達の会話から世間話を聞いている様だ。


「そうですね。1つの要因として考えられるのは西山の火山噴火ですね。

 怪物達が西側に多く生息するのもこの火山があるためで、噴火によって怪物の生息環境が彼らにとって豊かになったのでしょう。そして我々には逆に自然環境は厳しくなったようですね」


 レンギョウさんは目を伏せ溜息を落とした。


「くそっ!! 俺にもっと力があれば……シャクナゲ国初代国王ロードデンドロンくらいの能力があれば、この危機を乗り越える事が出来るのに……」


 おぉぅ……シャクナゲ国私が思っているよりも危ない状況なのかも……


 このお城でお世話? になって半年。

 シャクナゲ国が平和であって欲しいとは思いつつも、もしも出来るならば私は山に帰りあのアベリアとの思い出の家で一人暮らしたいと願ってしまう。


 あの家にアベリアはいなくても彼との思い出を感じて生きていきたいな。




ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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