アベリア⑥
お城へ来てからのアベリア視点のお話。
「はあ? 俺を奴隷から解放したい?」
「ええ、エリカ様はそうお考えです」
シャクナゲ国魔法使い総帥レンギョウという獣人が俺に向かい言う。
昨日、エリカと俺は城へ連れてこられ別々の部屋を与えられた。牢屋ではない、狭い使用人部屋にいる。
狭い部屋とはいえ机と椅子、ベッドがありオーガで奴隷な俺にとっては良い待遇だ。
「何を言ってんだ? …そんな…奴隷から解放だと?
あの女は俺がいなければ生きていけないんだ。
それなのにむざむざ俺を手放すわけがない」
エリカは食事の心配はないが、その他の生活面では俺に寄り掛かって暮らしているんだ。
俺の事を奴隷だと知らなかったとはいえ、いや、知ったからこそ俺を手放そうとはしないはずだ。
俺を奴隷から解放しようなんざ信じられない。
魔法使いは椅子に深く腰掛け柔らかい笑みを浮かべながら、立つ俺を見上げる。
こいつ男のくせに優し気な瞳で俺に微笑んでくる……気持ち悪いな。
「エリカ様はこの先、自分がお守りしますから大丈夫ですよ」
「はあ!?」
本当に何を言っているんだこの男は。
なんでエリカの事をポッと出のこいつが守るんだよ。
今まで散々エリカを守ってきたのは俺だ。
「エリカ様は異世界から女神様の使いで来られた尊いお方なのです。
ですからエリカ様は見つけ次第、城で保護をすることになっていたんです」
「……尊い?……エリカが?……」
エリカは非常識だからよく危険に突っ込んでいく。保護対象にするのは納得できるが、尊い存在?
そんな高貴な雰囲気をエリカに感じた事は無い。
この男、何か勘違いしているんじゃないのか?
「そんな不審な目で見ないで下さい。
エリカ様が特別な存在なのは彼女の能力を見せていただき証明済みなのです。
女神さまのご神託の女性は彼女で間違いはありません」
「お前、俺の心が読めるのか!?」
「いいえ。自分を疑っているのは貴方の表情で分かりましたよ」
レンギョウは笑みを浮かべたまま椅子から立ち上がった。
「エリカ様は貴方を奴隷から解放することを望んでいますので、明日隷属の輪を解くことにしました。
エリカ様は貴方に今後は自由に生きて欲しいと願っておいでです。
貴方はこの先の奴隷から解放されたご自分の人生を考えられるといいでしょう」
そう言ってレンギョウは俺の横を通り過ぎて部屋から出て行った。
奴隷から解放。
自由な人生。
いつも夢に見ていたことだが……分からない。
エリカを守らなくていいと言われ、主のいない人生を歩んだ事の無い俺にはこの先の自分なんて想像がつかん。
レンギョウが居なくなり狭い部屋の小さな窓から外を眺める。
空は白く重い雪雲に覆われ、地上には真っ白な世界が広がっている。
主人のいない俺の未来はこの外の世界のように白く暗く何も無いと感じた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




