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アベリアは奴隷

 窓の外は猛吹雪でホワイトアウト状態。

 何も見えず荒れている。私の心の中の様だ。


 美しい調度品がセンス良く配置されて、ベッドには天蓋までかかっている。

 シャンデリアは無いものの壁やタンスの上にあるランプが、部屋の中を明るく照らしている。


 私は何度目かの溜息を吐き、椅子に膝を抱えて座り呟く。


「アベリアは私の奴隷……私はアベリアを奴隷にしていた……」


 奴隷。日本で生きていた私には身近にはいなかったけれど歴史で教わった身分。自由や権利を主に奪われて従わされる存在。


 彼を助けた時アベリアに名前を聞かれたから、自分の名前を言った。

 その瞬間、アベリアの首に嵌る銀の輪が光った。

 あれが隷属契約だと知った。


 そう、よくよく思い出せばアベリアを助けた時、彼の態度は私を憎んで睨んできてた。

 私は助けてあげたのにお礼を言わないアベリアに対して不満で、彼が何故私を睨むのか聞かなかった。


 もしも、あの時に……私が思い上がらずにアベリアの態度の理由を聞いてあげていたら、若しくはアベリアを奴隷にする契約を結んでしまったと彼が私に教えてくれていたなら、もっと早くに彼を奴隷から解放してあげていたのに。


 コンコン、ドアがノックされて若い男の使用人が部屋へ入って来た。

「レンギョウ様がお呼びです」

 私は頷いて男の後に続き部屋を出る。


 アベリアはオーガだからこの世界で差別されて生きてきたんだと思う。


 何歳から奴隷なのかは分からないけれど、この獣人の支配する世界で彼は奴隷にされて生きていた。


 奴隷は尊厳を奪われ苦渋の中生きるしかない……

 そんな言葉を綴っても奴隷について私は本で読んだことがあるだけで、どれだけの悔しさや苦しさ悲しみをアベリアが抱えていたのか分からない。


 当たり前だけれどアベリアは奴隷をやめたかった。


 あの非道な三銃士がアベリアの主人でアベリアを斬って捨てた時、隷属契約が解かれアベリアは重体の体で自由を求め歩き出していた。


 そう、そうだわ。思い出せばあの行動はそういう意味だったんだ。


 今頃になってアベリアに出会った時の記憶を繋いで彼の真実を知ったところで、私がアベリアを束縛していた現実はどう償えばいいの?


 私はアベリアが私の側に居てくれるのは死神様の配慮だと思っていた。

 だから奴隷として無理やり銀の首輪で縛って彼に世話を焼いてもらっているなんて思いもしなかった。


 あの時もっとアベリアの事を詳しく聞いていたら……



「エリカ!」


 アベリアの声、ああ3日ぶりに会うわ。

 随分久しぶりな気持ちになる。

 アベリア、少し疲れているの。目の下に影がある。



「エリカ様。こちらへ」


 レンギョウさんがアベリアと少し離れた席へ私を座らせた。

 このお城の中では狭くて質素な部屋。私とアベリア、レンギョウさんと従士が1人だけいる。


 私は椅子に腰かけて再度アベリアを見た。

 アベリアは相変わらず美しい青い瞳で私を真っすぐに見つめてくれている。


 アベリアを見ると自然に彼の首に嵌る隷属の輪が目に付く。

 あれがアベリアを縛るリング。奴隷の証。


 日本で習った世界史では、主は奴隷の足に鎖をかけ体罰や食事を与えないなどして奴隷を従わせていた。


 お城に来てからレンギョウさんから聞いた。

 この世界ではあの銀色の細い輪で奴隷を従わせていると。

 奴隷が主人に従わない時にあのリングにかけられた魔法が反応して、奴隷の首を死なない程度に締めつける。とても苦しいのに死ねないから奴隷は主人に絶体に逆らわなくなるらしい。


 そして主人が奴隷を捨てた時には、また新たな主を求めるように隷属の輪が奴隷を誘うと。


 そう教えられて見ると、あの銀色の輪はなんて気味が悪い色をしているの。まるで呪いの首輪だわ。


 そうだ、アベリアの性格から考えても彼が好んでアクセサリーを身に付けるはずはなかったんだから、何故銀の首輪をしているのかアベリアに聞けば良かった。


 私はアベリアに胸をときめかせていたのに、彼の事を深く知ろうとはしなかったんだ。


「では、初めても宜しいでしょうか?」


 レンギョウさんの声で我に返った。


 私はレンギョウさんに頷く。

 アベリアは私を見てずっと口を横に結び黙ってこちらを見ている。


「アベリア・ゴーチャーこちらにいる異世界からの客人エリカ・ジャノメ様を今まで助けていただき、シャクナゲ国代表として私レンギョウから礼を言わせていただく。

 君はこの世界に不慣れなエリカ様を助け、王都まで連れて来てくれた。

 この功績をたたえて君を奴隷から解放し、一般市民権を与えたいと思う」


 レンギョウさんはにこやかに微笑んでアベリアに告げた。


 アベリアはニコリともしないで、レンギョウさんではなく私をじっと見つめている。

 私はアベリアに微笑んだ。


 3日前、シャクナゲ国王城へ連れてこられ私はアベリアと離れた。

 アベリアを私は奴隷にしていたと知ってとてもショックで1人になって落ち着いて自分の気持ちを整理したかったから。


 彼の優しさと思っていた行動は私が彼の主人で奴隷は主に逆らえないし、離れられないからきたもの。

 もしも主に逆らえば死ぬよりつらい苦痛を銀の首輪から与えられる。


 アベリアに苦しまないで欲しい彼に私から自由になってもらいたい。


 レンギョウさんに彼と私の隷属契約を解除が出来ないか聞いた。

 レンギョウさんはあっさりと出来ると言ってくれて、今まで私の世話をしてきたアベリアに特別手配の賞金金貨10枚も渡すと言ってくれた。


 これでこの半年、アベリアを奴隷に縛っていた私が彼に許されるとは思わないけれど、アベリアは新しい人生を手に入れることが出来る。


 レンギョウさんはシャクナゲ国一の魔法使いで隷属解除の魔法も使えるらしく、アベリアの前に進み隷属の輪に両手をかざして歌うように呪文を唱える。


 レンギョウさんの歌に合わせて白銀の光がアベリアを包むとやがて長いような短い時が終わり、パキッと乾いた音がたってアベリアの首に嵌められていた銀のリングは2つに割れて床に落ちた。









ここまで読んでいただきありがとうございました。

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