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逃走中

エリカを捕まえようと冒険者達が追って来ました。アベリアはエリカを抱いて必死に逃げています。

 雪雲に覆われる空が近い。

 ここは建物の屋上。地上では消えた私達を探して冒険者たちが走り回っている。


「……ここが気付かれるのも時間の問題だな」


 アベリアは膝まづき腕から血を流して、屋根の上の誰も踏んでいない新雪の上を真っ赤に染めた。

 私は彼の傷口に手を当てて泣きながら治癒をする。



 ▽▽▽



 私を抱えて冒険者たちから必死に逃げるアベリア。

 そんな私達をなかなか捕まえられなくて業を煮やした冒険者が爆発系の魔法を放ってきたんだ。


 ボッツゴオオオォォォー


 私達と周辺にいる冒険者や雪が勢いよく空へ舞い上がった。


「生け捕りだって言ってんだろうが!」

「魔法使いは攻撃魔法を使うな!」


 冒険者たちの怒声の中、私はもうこれ死ぬんだと思いアベリアの胸の中で手を合わせていた。

 死神様、約束を守れなくてごめんなさい。死神様は「エリカちゃんが何歳まで生きるかは極秘だから教えられないけれど、エリカちゃんはおばあちゃんになって老衰で死ねるわよ」と言っていた。しかし、この状況では今世も寿命まで生きられそうもありません。

 でも、アベリアの温かい胸の中で死ねるなら幸せです。

 そう思いながら意識が薄れて、気が付くと真っ白な雪の上でアベリアが腕から血を流しながら私を膝に抱いていた。



 ▽▽▽



「ごめ……ごめんな……さい」

「謝るなエリカ。お前が悪いんじゃあねえだろ」


 アベリアは私が治した腕を振りながら

「俺は平気だ」

 と、笑顔を私に向ける。

 アベリアのコートは冒険者たちの攻撃でボロボロで彼の顔はもう隠せていない。


 それにしても、特別手配になんて私がなる理由が分からない。


 でも、あの紙に書かれていた特徴も名前も絶対に私の事だ。

 黒髪黒目の人間、胸が大きい20歳のエリカという名前の女性が、この異世界に他にいるなんて考えられない。


 賞金金貨10枚。

 そんな大金が懸けられるような事を私はこの世界に来てやらかしたのだろうか?

 それとも異世界人だから、この世界では異世界から来た者を捕まえなければいけない理由があるのか?


 もしもそれなら進んで私に手配をかけている人の所へ行っても良いけれど、あの冒険者達に捕まるのは嫌。

 怖い。

 荒くれた顔で乱暴な言葉や態度、怒声を発して武器を持って追いかけて来る冒険者たち。

 捕まって何をされるのか分からない怖い。恐怖で泣けてくる。


「エリカ怖がるな。俺が絶対に守ってやるから、ほら立て」


 俯いて泣く私を元気づけてくれるアベリア。


「山小屋へ……家へ帰ろう」


 そうだ、私達には帰る家がある。あそこに帰ればいつもの日常が待っている。

 例えこの街で特別手配になっていても、あの山小屋までは追いかけてこないよね。


「……うん」


 アベリアはそう言って私の手を取り立ち上がらせてくれた。


 私はアベリアと2人で帰れる場所を思い出して元気が出た。

 もう少し、街を出られればアベリアの足の速さならきっと逃げ切れる。


 そう信じて、買った洋服の袋を抱えアベリアにしがみつこうとした時


「ああ、やはりあの山小屋にいたのか」


 伸びやかな低い男の声が聞こえた。


 アベリアが私を自分の背中に隠す。アベリアの体越しに恐る恐る声の主を見た。


 私達がいる隣の屋根に1人、スッキリとした細身の男が立っている。

 長い銀髪を風に揺らして、面長の美しい目鼻立ちをした男。

 あ、髪の毛と同じ銀色の直毛の尻尾がある。獣人だ。


 私は先程アベリアから聞いた差別の話を思い出して身を固くした。

 目の前の男の佇まいからして、獣人の中でも彼は特別な偉い位の人だと感じるから。


 アベリアは男の隙を窺って黙って対峙している。すると目の前の男が長く息を吐いた。


「はあー、まさか戦闘奴隷を手に入れて、生活していたとは思いませんでしたよ」


 目の前の男が言うとアベリアが体を震わせた。


 戦闘奴隷? って何?


「異世界から来てどうやって生きているのか心配していましたが、そうですか。そこの奴隷に守らせていたのですね。いやはや、エリカ様は逞しい方ですね」


 そこの奴隷ってアベリアの事? 

 何でアベリアが奴隷なの? 

 誰の奴隷?

 異世界から私が来た事を知っていて、しかも私の名前まで……この男は何? 何なの?


 と、男が私に向かい軽く頭を下げ右手を胸に当てる。礼かしら?


「エリカ様にやっとお会いできて大変嬉しく思います。

 エリカ様は金色の髪をした女神様をご存知ですよね? 

 私は女神様よりこの地にて、エリカ様のお世話をするように賜れたレンギョウという者でございます。

 女神様からの依頼を達成するため、エリカ様を見つけるべく特別手配をかけたのは私でございます」


 レンギョウさんは美しい紫色の瞳で私を見て挨拶を述べた。


 ええ! 金色の髪の女神って死神様の事よね。

 で、この異世界での私の御世話役を死神様はレンギョウさんに頼んだって事!? 


 ガーン、今までアベリアが私の新生活のナビ役だと思っていた。ち、違ったのかぁ。


 レンギョウさんから戦意が無いのが分かったのか、アベリアは警戒態勢を解いた。


「エリカ、呆けた顔をしているが大丈夫か?」


「う……うん、今まで何か……大きな勘違いをしていたみたい……」


 金髪の女神とか異世界から来た私の事とか知っているレンギョウさんの言葉を疑う気にはなれず、彼が私の本当のナビ役なんだろうと思えた。


 じゃあ、アベリアは。今まで私の世話をしてくれたアベリアは何?


 さっき聞き捨てならない単語が聞こえた、奴隷って。


 この話の流れ的に考えるのならば……私はアベリアの瞳に映る不安気な自分を見ながら聞いた。


「アベリアは私の奴隷なの?」




ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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