エリカとアベリアの日常
エリカとアベリアの山の中での暮らし。
山の朝は五月蠅い。太陽が昇るとともに鳥たちがけたたましく鳴きだす。
「う~ん、もう少し寝ていたい……駄目だ五月蠅くて眠りに入れない……起きよう」
私はベットから降りて、そっと自分の部屋を出た。
隣の部屋のアベリアはまだ寝ている。
アベリアはこの騒がしい鳥の鳴き声の中は寝ているが、私の動く音には敏感に反応して起きてくる。
だから彼を起こさないように足音を立てない様気を使いながら、私は庭へ移動した。
アベリアが起きる前に朝風呂に使う水を井戸から汲んでおこう。
井戸から水を汲むのは力仕事で大変だけれど、お風呂の為だから苦じゃないよ。
井戸へ着くと桶の付いた縄を下へ落とす。桶に水が入りよいしょと力を入れて桶を引き上げる。単純作業を幾度か繰り返して3個の樽に水を張り終えた。
「おはよう。エリカ。今朝も朝早くから体を洗うのか?」
「おはよう。アベリアお願い。水をお湯にして」
「お前、本当に風呂好きだな」
アベリアが樽の水を魔法でお湯にしてくれた。
アベリアが作ってくれた3方向を木で仕切って屋根を付けた入浴場。
入浴場は全面を板で仕切ってしまうと真っ暗で怖いし湿気もたまるから南面だけ板はつけていない。
ここは山の中だから覗きの心配はないし、動物が近づくのが目視出来た方が安心だとアベリアに言われた。
最初は丸見えになるのに落ち着かなかったけれど、慣れると景色が見れて露天風呂みたい。
入浴といっても、膝丈の大きなたらい桶の中で樽からお湯をかけて洗い、最後にたらいに湯を張って入るお風呂なので上半身はお湯には浸かれないけれどね。
髪と体を洗いサッパリした私はリビングへ向かい、アベリアと朝食を摂る。
実は私はご飯党。
アベリアにも食べたい物を聞くのだけれど、私と同じ食事が良いと言うのでご飯にお味噌汁焼き魚の朝食だ。
アベリアが早くも空になったお茶碗を見つめている。
「アベリア、お替りする?」
と、私が聞くと
「ああ、お願する」
と遠慮がちに茶碗を出した。
「何杯食べても大丈夫だよ」
と、お櫃からご飯をよそって彼に渡すと嬉しそうに微笑んでご飯を食べだすアベリア。
アベリアは出会った頃より大分健康的な肌と体形になった。そして身長まで伸びた。
私は密かにオーガの彼がどこまで大きくなるのか楽しみにしている。
「はあ、ごちそうさま。エリカ食器の片づけは俺がやるから」
「ありがとう、アベリア。じゃあ、私は玄関とリビングの掃除をするね」
ほぼ毎朝、食事の片づけをアベリアが私は履き掃除をする。
この山賊のアジトも片付いては来たけれど、まだまだ物に溢れ壊れた家具や壁の修繕におわれている。
こうして午前中はアベリアと2人で山小屋を片付ける。
「ねえ、アベリアそろそろ昼食にしようか? 何を食べたい?」
「え~と、あれあれあの香ばしい香りのする焼いた麺」
「焼きそばかな?」
「そう、それ食いたい」
「OK」
お昼は麺類を食べる事が多い。多分、私がアベリアと暮らしだした時にお昼に麺類を出す事が多かったから、彼は気を使って麺類から食べたいメニューを言ってくれているのかもしれない。
私は指を鳴らして焼きそばをだす。アベリアの焼きそばは超大盛で出した。
昼食の後は山を散歩する。
山の中を歩くと清々しい気持ちになるし、毎日色んな植物や動物の発見があって楽しい。
アベリアは山にあまり興味がない様だけれど、私を守るために一緒に付いて来てくれる。
「エリカ、俺からあまり離れるなよ」
そう言って倒れた木に座るアベリア。あ、欠伸している眠そうだわ。
私は仕方なしにアベリアからあまり離れない場所から見つけた、木々の間の根本に咲く大きな花を遠目で観察する事にした。
木の根元に直径3メートルはありそうな毒々しい真っ赤な花。
凄いわ、どう見てもあれは普通の花じゃない……多分モンスターだわ。
花は茎が無く地面の上に花弁を広げて葉の部分を震わせていた。
あんな私でも一目で分かるモンスターをこの山で見るのは初めてだわ。
ん? 何? 上から白い粉みたいなものが降って来た。
見上げると私の横、足元の地面から突き出した茶色い根っこがつき上がりその根の先から白い胞子が飛んでいる。
コホコホ、しまった、ちょっと吸込んでしまった。
あれ、体が足が勝手に動く!? ア、アベリア助けて、って口が動かない、声が出せない!
ヤダ、どうしよう!
私、前に前に進んでいくわ……花の中央にデカイ口が開いている!!
ひー、私あのお口へ真っすぐに向かっている!
嫌だあ、食べられたくない!!
もうあと2歩で口の中に入るところで、グイッとお腹に逞しい腕が巻き付いた。
「エリカは本当に毎日……飽きないな」
アベリアは右腕に私を抱き、左手で小さな火を花に飛ばした。火は花の口に入り、花は大きく身震いしてからクタッと動かなくなって内側から燃えだした。
「ふ―、助かった。アベリアありがとう」
声が出せる様になり助けてくれたお礼を言うと、アベリアは片手を上げて倒れた木に戻り昼寝をしだした。
大体毎日、午後はこんな感じで終わっていく。
夕方、日暮れ前に家に帰宅して2人で夕食を食べる。
私はモグモグご飯を食べながら、2人で同じメニューを食べているとアベリアと私は家族みたいだと思う。
いや、新婚さんかな。でも甘い雰囲気はないし、やっぱり家族かな?
「アベリア、ご飯お替りする?」
「ああ、お願する」
私がお櫃からご飯をよそって渡すと笑顔で食べるアベリア。
異世界生活、今日も平穏な1日でした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




