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皿売り

山の中で隠れて暮らす2人。

ほぼほぼ順調に仲良く生活していますよ。

 異世界生活101日目。

 こちらの世界に来て3ヶ月以上が過ぎた。

 山での生活は順調で、今日も日課の朝の掃除と片づけをしています。


 ガシャッガシャッシャガシャン!!

「す、すまない! エリカ!」


 キッチンの方からけたたましく食器の割れる音がする。


「あ~……」

 私は玄関の拭き掃除の手を止めてアベリアのいる台所の方へ歩いて行った。


「朝から派手に割っちゃったね」


 キッチンを覗くとアベリアは青い顔で悲しそうに私を見ている。


 怒ってないよ私。

 だって仕方がないと思うの。

 食事の度に増えるお皿にカテトリー。それらを山のようにキッチンの床に重ねて置いている。


 アベリアはオーガという種族のせいか大食漢で1回の食事に3人前くらい食べるからね。

 もうね、倍どころかすごい勢いで食器が増える。


「洗い物をしていて手が滑り落ちそうな皿を掴もうとして、肘が隣の食器に当たり積み重なった皿が崩れて割ってしまった。本当に申し訳ない」


 と洗剤でアワアワな手にお皿を1枚持ちながら謝るアベリア。

 200センチ近い身長の大きな男が肩を落として謝る姿はちょっと可愛い。アベリアは出会った時には175センチくらいの身長だったけれど、私と一緒に山で暮らし出してから見る見るうちに身長が伸びた。

 彼曰く、オーガは背の高い種族でアベリアは青年なのに成長期? が来た感じらしい。


「気にしないでアベリア。

 それよりも割れた食器の破片で怪我をしていない?」


「怪我はない」


「それじゃあ、私が床に落ちている破片を片付けるから、動いて怪我をしないようにアベリアはそこにいてね」


「すまないエリカ。分かった」


 料理を私が出すから、アベリアは食器洗いを進んでやってくれる。


 キッチンは食器棚はもちろん、床面積の3分の2はお皿で埋められていて、天井近くまで積み上げられている。洗い場までお皿の壁で細い道が出来ている状態。

 洗い場に立つアベリアの後ろを、ザシュザシュと箒でお皿の破片を寄せる。


「もう、食器置き場も限界だね。そろそろ本気でお皿をどうにかしないと。

 私としては売ってお金に換えられたらと思うのだけれど」


 ゴミの分別にうるさくない異世界とはいえ、綺麗なまだ使える食器を捨てるのは忍びないもの。

 売ってお金に出来たらお皿も再利用されて嬉しいと思う。


「これだけ美しい器を使っているのは貴族くらいだから普通にはさばけないな……金に換えられるか分からないが闇市に通じていそうな奴を知っているから、そいつの所に持って行ってみようか?」


「……その闇市に通じている人ってやっぱり危ない人だよね」


 そう、今までもお皿が売れたらってアベリアに相談していたのだけれど、庶民が使う食器は木の器だから私の出すお皿は上等すぎて、普通に売ると目立ってしまい警備隊とかに食器の出所を怪しまれたり、犯罪者に狙われたりする心配があるらしい。


「まあ、良い奴ではないが、俺1人で街に行ってそいつに会うからエリカの身の危険はない。

 ただこれだけ見事な器だから、逆に高く買い取ってもらえるかは分からないが」


 アベリアは私が出す食器が美しいと気に入っているから、お皿が二束三文で取引されることが嫌らしい。


 確かに毎回料理を出すたびに、私も大学生活一人暮らしでは買えないようなお洒落な器が出るから、出来れば食器に見合った価格で売れて欲しいとは思うけれど……今やキッチンを占拠するほどの大量の食器。


 お皿洗いの邪魔にもなっているし、最近は安売りしてもいいじゃないと思えてきた。


「安く売れても良いんじゃないかな、こんなに沢山あるし、これからも増えていく一方だし」


 なかなか簡単には食器をお金に換えられそうにないから今まで後ろ向きだったけれど、もう駄目もとで安くても良いから買い取ってもらいたい。


「分かった。エリカがそう言うのなら、後で街に売りに行ってくるよ」

「うん、よろしくね。アベリア」


 こうして、3ヶ月の間貯まりに貯まったお皿をアベリアが闇市へ流すことになりました。

 売れやすいように同じ大きさの白いお皿を30枚ほど重ねて大きな布に包む。


「こんなに沢山、一度に持って行ける?」


「ああ、本当はもっと持てるが売れるか分からないから、今回はこれくらいにしておくよ」


 アベリアは食器を丁寧に両腕で囲んで持ち、


「それじゃあ、行ってくるけれど、エリカ俺がいない間は家の中に居ろよ。

 出来るだけ早く帰ってくるから危ない事はするなよ」


 眉をよせながら優しい口調で私に注意を促してきた。


「分かった。アベリアこそ気を付けてね。いってらっしゃい」


「行ってくる」


 アベリアは食器を割らないように早足で木々の間に消えて行った。


 同居人が居なくなると静かすぎる家の中で孤独になる。

 死神様がナビを用意してくれて本当に良かったわ。1人で世間から孤立して暮らすのは心細くて寂しすぎる。

 アベリアが側に居てくれるから救われるわ。


 アベリアが帰宅するまでどうやって暇を潰そうかな。

 山に散歩に行きたいけれどアベリアのいない今、万が一襲われたら大変だよね。

 正直、多少の怪我は自分で治せるけれど、致命傷を負った場合は分からない。


 例えば一角兎に心臓を一突きされたら私は生きていられないだろうし、小動物の毒にやられて動けない間に肉食動物に体を食べられたら……。

 治せるかもしれないけれど痛いのは嫌だし、アベリアを心配させてしまうと彼に申し訳ないから、私はアベリアに言われたように家の中で過ごす事にした。





ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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