拳闘のゴーレム・アワード!!
ゴーレムで、戦い合う学園物が書きたかった
----新入生に、すっげー美人がいるらしい。
そういう情報を知ったのは、この魔術師高等学園である上野木学園に入学して3日目、春の桜並木が咲き誇る日の事。
教室での出来事、なのである。
クラスで一番お調子者である、皆川スグルの会話からだった。
「なぁ、知ってるかよぉ、コウタ? 俺らとタメの1年に、すっごい美人の女がいるっていう話。
見に行こ、見に行こうっ! すっげぇ、美人らしいぜぇ!」
興味がない、物凄い興味がなかった。
「スグル、そういう噂で"美人"なんてのは大抵は誰かのひいき目だったりするんだ。だから、別に本当は美人じゃなかったりするじゃないか。
そんなの、全然あてにならないよ」
中学の時、美人の女の子がいるとの事で、実際に見に行ったことがあるのだが、全然そんな感じじゃなかった。
ただ異常にクールだった。クールだから、なんかそれっぽく見えてただけ。
実際はただ顔が良いだけの、何も考えてないバカだった。
そういう経験があった。経験則があった。
だからこそ僕は、スグルの言葉をほんわかぼんやりと聞き逃していたのだけれども、次の言葉には興味があった。
「なんだよ。その1年、すっげーおっぱいらしいのによ」
「ほら、あいつ。あいつだよ、あいつ」
1階へと降りて、僕とスグルは廊下で彼女を見つけた。
スグルが指さす先、そこには1人の女子生徒がいた。
まるでモデルさんかのような美しい顔立ちの美女、八頭身で素晴らしい身体つき。
胸もまるでちょっぴり大きめの風船のように大きく、腰つきも艶めかしい。
マジでスーパーモデルのような、凄い身体つきの彼女は、部活募集の掲示板の前にてそのしなやかな肢体を見せつけていた。
「なっ! すっげぇ美人さんだろうが! あの男子とタメ張れる身長! それにばるんばるんと揺れる胸! 確実にDはあるよな、Dは!
やっぱ女はデカさだよなっ! ちっぱいなんかよりも、見ていて楽しい巨乳だよなぁ!」
確かに、スグルのいう通り、相手さんはすっごい美人さんだ。
艶めかしい身体で、おっぱいも凄い。
けれども、気になったのはそこではない。
‐‐‐‐彼女の学生服、だ。
短く肩の上あたりで切り揃えられた黒髪だからこそ、良く分かる。
新入生として与えらた濃い緑色の冬服のブレザー、そこには【ゴーレム部 新入生歓迎!!】などと言う文字が書かれていた。
「(マジかよ、あのブレザーは5万くらいするのに!)」
学生にとって、5万はなかなか高額なのだ。
そんなブレザーに、わざわざあんな風に文字まで書いて。
しかもあれは、ペンで書いたとかじゃないよ。
普通に糸で縫い付けてあるよ、すっごい手間暇かかってるタイプのやつだよ。
「(ヤバいぞ、あれは。あれはどう見ても、残念なタイプだ。
残念なタイプの、美人さんの女性だ。関わり合いになったらいけないタイプの、美人さんだ)」
「と言うか、あの娘はなにしてるんやろう? なんか紙を貼ってるみたいだけど」
スーパーモデル女は、掲示板になにか紙を張っていく。
その紙には【ゴーレム部 新入生募集! 一緒に部活を作りましょう!】などと書いてある。
「(作りましょうって、なに?! 今から作る気?! 新入生でしょ、あの娘!)」
かき乱される、ただただ気持ちがぐるぐるとかき回されていく。
美人なだけあって、一挙手一投足が本当に気になってしまう。
「こらっ、ミズホさん! その紙は部の申請届を受理してないでしょうが!」
「‐‐‐‐げっ、女帝!」
反対側の廊下から現れた眼鏡をかけた教師女を見て、スーパーモデル女は顔色を真っ青に変えて、紙を抱えてそのままこちらに向かって走って来る。
「ちょっ……!」
「やばっ……!」
僕とスグルは驚いていた。
スーパーモデル女は杖で周囲の物を浮かしながら教師の足止めをしつつ、こちらへと向かってきている。
「そこの2人! 丁度いいから、一緒に逃げましょう!」
どう言うことなんだよ! どう言うことで関係ない俺達を巻き込もうとしてるんだ、この女は!
「えっ、やっば! 俺達は関係ないのに! なぁ、スグル!」
僕がそう言ってスグルの方を見ると‐‐‐‐
「なにっ、なにっ! すっげぇ、面白そうな感じじゃん! 乗って置こうぜ、コウタ!」
‐‐‐‐めっちゃ、こっちが引くくらい、乗り気だった。
嬉しそうだった、本当に。
スグルは悪戯する時の子供のような腹立たしい顔で、僕の手を掴んでいた。
「おい、おっぱい! 一緒に逃げるぞ!」
「えぇ、知らない人! 一緒に逃げましょう!」
まるで旧知の友と会ったような、そんなテンションにてスグルとスーパーモデル女はハイタッチ。
そしてそのまま、僕はスグルと一緒に、スーパーモデル女と逃げていた。
これが出会い。
僕が、この女のせいで、ゴーレムなんていうモノに興味を持ってしまった出会いである。