元ダンジョンマスターは、伝説の吸血鬼の【主様】にして【従者】です #02
----拝啓、魔王様。
俺です、スサオです。
あなたが送り込んだロタなる魔族によって、死地へと転移させられた元ダンジョンマスターです。
俺、自分で言うのもなんですが、けっこうダンジョンマスターとして頑張ってた方なんですよ。
それなのに、いきなり解雇&死亡せよ、ってのは酷くないです?
転移させられた後、俺、冗談だよね的なノリで、状況確認しましたよ。
でもここ、どこにも入り口がない、どこかの洞窟の中みたいで、これ、本当に俺死んじゃいますよ?
「あー……マジかぁ」
バタッ、と俺はその場に倒れる。
そして倒れた俺の頭に浮かぶのは、魔王様……いや、魔王のクソ野郎と、ロタなる魔族への恨みつらみだ。
真面目に仕事をしていただけの俺が、なんで解雇される?
いや、解雇されるだけならまだしも、なんでこんな殺されなければならないのだ?
「ヤバい……考えたら、ムカムカしてきた」
あー! もう、ムカムカしてきたぁぁぁぁぁぁ!!
こうなりゃあれだ、やってやる! ただでは死なん、という奴だ!
「----という訳で一発、奴らに風穴でも開けるなら、ここだろうな!」
俺はそう言って、洞窟の奥にぽつりと鎮座している、似つかわしくない豪華な扉を見る。
俺の数倍はあろうかという、大きな扉。
紅く大きな扉には、所々が豪華そうに金で飾り付けられており、金がかけられているのが見て分かる。
この豪華そうな扉を見て、俺には心当たりがあった。
----これは、ダンジョンボスがいる部屋に繋がる扉だ。
俺が作り出したダンジョンにもあった、ダンジョンボス前にある扉。
つまりここは、どこかのダンジョン----そして、この先にはダンジョンボスと呼ばれる、このダンジョンの親玉がいるはずだ。
この先にいるダンジョンボス、理屈通りならば、そいつを倒せばダンジョンから出られるはずだ。
「問題は、ここがあのロタなる魔族のチート能力で送り込まれた場所って事だな」
"【帰還不能の即死罠】"だったか。
ヤツが得意げに語りまくっていた内容から察するに、絶対に帰ってくることが出来ないような場所への転移、ってのが能力なのだろう。
なら、可能性としては、この先に居るダンジョンボスが、俺がどんなに全力を傾けようとも倒せない、そんな勇者レベルのヤバい奴がいるに違いない。
「……ふっ、舐めんなよ。こちとら100年近くダンジョンマスターとしてやって来た身だ。
よそ様のダンジョンとは言え、ダンジョンであるなら、この俺が負ける訳がねぇ」
ダンジョンマスターとしての力、存分に発揮してやろうじゃないか。
そして、ここから出た暁には、魔王のクソ野郎とロタなる魔族に復讐してやる。
なぁに、魔王がどこにいるかは知らんが、俺が担当していたダンジョンの場所は知っている。
なら、後はそのダンジョンに向かって、人間様を焚きつけて、極大魔術でも撃ってもらって、消し炭にしてやろうじゃないか。
ダンジョンの中にさえ入らなければ、あんな能力、恐れることなどない。
「よしっ、行くか」
俺はそう言って、その豪華そうな扉を開く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「恐れる事無く、妾のいるこの部屋に入って来るとは……感心したぞ、褒めてやろうではないか」
----カハッ?!
「まぁ、褒められるのはそこくらいじゃがのう」
そう言って、その部屋の主、つまりはダンジョンボスである"彼女"は不敵な笑みを浮かべていた。
そして、俺はそのダンジョンボスの放つオーラに当てられて、その場に倒れ込んでいた。
「まさか、上位種、その吸血鬼、かよ」
魔族の中にも、種族的な序列というモノが存在する。
例えば生まれながらに他種族に奉仕する事を決定づけられている種族や、別の種族との共生が義務付けられているような種族。
そして、そんな魔族の中で、上位種----文字通り、上位としか思えない種族の1つが、吸血鬼と呼ばれる種族だ。
魔王は、魔族の頂点であるが、それは魔王だけが凄いという一事実に過ぎない。
吸血鬼は種族そのものが、赤子から老人にいたるまで、種族全体が強いのである。
闇夜の中でも生える、白い肌。
細く長い、藍色の尻尾。
そして、銀色の王冠のようにも見える、特徴的な角。
完璧なボディラインをした、絶世の美女。
そんな吸血鬼の美女が、玉座に座りながらこちらを見下ろしていた。
「このダンジョンに、人が来ること自体久方ぶりの事じゃからのう。ちょうど良かろう、この妾【セミガル・レーネディア】様がお主を従者にしてやろうかのう」
ゆっくりと、そのレーネディアと名乗った吸血鬼は近付いて来る。
その歩みは余裕そのもの、勝利を常日頃から確信している王者の歩み。
彼女自身は意図した攻撃すらしていないのに、自身が存在するだけで発する呼吸のようなモノで倒れ込む俺を見て、彼女は悠然と歩いてこちらに近付く。
「吸血鬼が何故、上位種と呼ばれるのか、魔族であるお主ならば、知識として知っておるじゃろう? そう、上位種たる妾達は従者、自分達に奉仕する下位種族を作れる」
大きく口を開けたレーネディア、その口にはひときわ大きな牙が2本、光り輝いていた。
「1人で居るのも暇で飽きて来たところなんじゃ。お主はここで、妾に永遠に従属する従者として、過ごすことを許可してやろう」
----がぶっ!!
そして、彼女は俺の首筋に、その大きな牙を突き立てた。
「~~~っっ!!」
俺は必死に声をこらえていた。
痛いからじゃない、その"逆"である。
----気持ちよかった。
俺の身体に感じるのは、快楽。悦楽。極楽。
自らの身体が、この少女にご奉仕できることを喜ぶという存在に変えられていく。
身体の奥底から、別のなにかへと変えられていくのを、俺は感じ取っていた。
「気持ちよかろう、嬉しかろう? なにせ、このダンジョンボスにして、伝説の吸血鬼と呼ばれたこのセミガル・レーネディア様の従者になれるのじゃから。
これは例え、億千万の宝を献上しようとも得ることが出来ない機会! 存分に、味わうが良かろう!」
自分の身体が、別の存在になっていく。
その影響からか、俺の顔が自然と笑顔になっていく。
「ほぅ、妾の従属化の力が効いて来たようじゃな。どうじゃ、どうじゃ、妾に仕えられて嬉しかろう! 嬉しかろう!」
「あぁ、嬉しいよ----"狙い通りで"」
「何っ……?!」と、レーネディアは驚いていたが、もう遅い。
「そう言えば、俺の自己紹介がまだだったな。俺は魔族の、スサオ。前職は、ダンジョンマスターをやっていた。
あんたがどれだけ強かろうが、上位種だろうが、ここがダンジョンである以上はダンジョンマスターである俺の方が有利だって事を」
(※)上位種
他の種族よりも、上位であると定められている種族。頭の角が王冠のようになっていることが特徴
基本的な能力が強いという特徴以上に、自分にかしずく従者を生み出すことが出来る
(※)吸血鬼
魔族の、上位種の一種。銀色の王冠のような角を持っており、血液を操ることが出来る種族
他者の血を吸い取る事で体力を回復できて、血を注ぐことによって相手を従者にすることができる




