前略、カードバトラーでダンジョン攻略はじめます。 #4
大きな扉を開けて、俺の目の前に映ったのは----数百体にも及ぶゴブリンの群れ。
そして、部屋の奥にある祭壇、その前で司祭風の恰好をしたゴブリンが1体。
「【ゴブリンシャーマン】か」
中に入ると、扉は完全に閉まり、代わりに目の前に半透明な板のようなものが現れる。
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【(3)闇神を祀る暗黒遺跡】 ボスの間へ ようこそ!!
ボスを撃破して、報酬を手に入れましょう!
勝利条件;ゴブリンシャーマンの撃破
勝利報酬;魔物カード【ゴブリンシャーマン】、装備カード【群れなす者】など
【ゴブリンシャーマン】 (無・コスト[1]) ※ダンジョンボス
;ゴブリンの中でも、呪術や魔術に長けたゴブリン。暗黒の神々との契約により、ゴブリン達を率いる術師として君臨する
暗黒の神々との契約により、信仰と闇を捧げる事により、闇の中からゴブリンの群れを召喚することが出来る
【ゴブリントークン】 (無・コスト[0])
;ゴブリンシャーマンが暗黒の神々との契約により、魔力と引き換えに召喚できるようになった疑似生命体。基となったゴブリン系統の魔物よりも耐久力が著しく低い
本来は最大20体までしか召喚できないが、ダンジョンボスとなったゴブリンシャーマンの影響により、魔力がある限り、無限に召喚できる仕様になっている
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なるほど、この大量にいらっしゃるゴブリン達は、本物のゴブリンではなく、ゴブリンシャーマンが作った疑似生命体ね。
耐久力は低いようだが、戦闘能力は一緒みたいなので、そこは気を付けて対処しよう。
【ラコウマオ、ゾタキガコウニケイ! ダンカジノシクチコ! ヨチタゴブリン、コウマシテッヤ!】
ゴブリンシャーマンが良く分からない言葉で号令をかけると、数百体にもなるゴブリントークン……いや、ゴブリンの群れが、一斉にこちらへと向かって来る。
1体1体はさして強くもないゴブリン達だが、こうも何十体も居るとなると危険だろう。
なるほど、このダンジョンのボスは、数の暴力で来る訳か。
「それならこちらは、数ではなく、個の暴力で勝負だ」
俺はデッキを操作して、【ピクシー】と【マンドレイク】のカードを、【墓地】と書かれた専用の場所に置く。
カードが墓地へと送られたことで、該当する2体の魔物が目の前から消える。
今から召喚する魔物カードは、2コストの魔物だからな。
新しく召喚するには、そのコストと同じだけの魔物カードを墓地に置いて、コストを抽出しなければならない。
ちなみに、墓地に置かれた魔物カードはダンジョンの外に出るまでは復活しないのだが、このボスを倒したらダンジョンを出るつもりだから関係ないだろう。
「それに、コイツにはそれだけの強さがある。出でよ、【アックスドラゴン】!」
俺がそう言って、カードの名を呼びあげる。
呼びあげると共に、カードから巨体のドラゴンが現れる。
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【アックスドラゴン】 Level.1 (無・コスト[2])
頭の角と尻尾の先端が鉄斧になっている、茶色の巨体のドラゴン。鉄鋼などの金属を食べて身体に取り込み、身体の鉄斧がどんどん頑強になる生態となっており、翼が退化して飛べなくなっている代わりに、鉄を思わせる非常に硬い身体を持っている
効果
;【ドラゴンボディ】=ドラゴンの血を継ぐ者の証。各種ステータスが飛躍的に上昇する
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【----グゥゥゥオオオオオオッッッ!!】
アックスドラゴンが雄たけびをあげ、尻尾をぶるんぶるんと大きく振るうと共に、尻尾の先端の鉄斧がゴブリンの群れを吹っ飛ばしていた。
圧倒的な強さでゴブリン達を薙ぎ払っていくのは、壮観な光景である。
「そして、装備カード【万能の鞍】をケット・シーに装備させる」
装備カードを掲げて名を呼びあげると共に、ケット・シーの手に、藍色の豪華そうな鞍が出現する。
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【万能の鞍】 装備カード (コスト[1])
動物の背中に取り付けられる鞍の、装備カード。ありとあらゆる魔物の上に鞍を取り付けて、その魔物の上に騎乗することが出来るようになる
鞍を取り付けられた魔物は装備者の意思で操れるようになり、戦闘能力は装備者と魔物、お互いの数値を合わせたモノとなる
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ケット・シーは手にした鞍を抱えて、アックスドラゴンの上に降り立つと、鞍をそのドラゴンの上に置く。
ドラゴンの上に置かれた鞍の上に、ケット・シーはその上に座る。
座ると共に、ケット・シーの【装備アップ】の効果が発動し、ケット・シーの戦闘能力が上昇。
装備者であるケット・シーの戦闘能力が上昇したことにより、【万能の鞍】と一体化しているアックスドラゴンの戦闘能力がさらに上昇していく。
ただでさえ強いアックスドラゴンを、【装備アップ】の効果を持つケット・シーと組み合わせる事で、さらに強力な存在として活躍させる。
「やれ、アックスドラゴン!」
【グオオオオオオオッッッ!!】
アックスドラゴンは尻尾を大きく振るい、爪で遠慮なくゴブリン達を肉塊へと変える。
大量に居たゴブリン達は、アックスドラゴンが動けば動く程、ゴブリン達は消えていく。
「いけっ、ゴブリン達を蹂躙せよ、アックスドラゴン!」
【グッオオオンンッッ!!】
俺の指示のもと、俺の魔物カードから出てきたアックスドラゴンが、ゴブリンシャーマンへと向かっていく。
自分へと迫りくるアックスドラゴンに、ゴブリンシャーマンは危機感を覚えているようであった。
【イバヤ、ルクガツヤイバヤ!! クチメト、チタイヘサンユノゴブリン! ダンバデ、ンバデ!】
相変わらず何を言っているか分からないゴブリンシャーマンの指示のもと、シャーマンの足元に黒い影溜まりが膨れ上がる。
膨れ上がると共に、その中から数十体のゴブリン達が、闇の中から現れる。
闇の中から現れたゴブリン達は、弓を持って現れていた。
弓兵のゴブリン----例えるなら、【アーチャーゴブリン】。
「(あいつ、トークンを別の種類のゴブリンに変えることが出来るのか!?)」
そうやって召喚されたアーチャーゴブリンのトークン達はアックスドラゴン、その上に跨るケット・シーに、弓を向けていた。
【----テナヤ!】
ゴブリンシャーマンが手を振り下ろすと、アーチャーゴブリンが弓矢を放つ。
弓矢を放つと共に、数百本にも及ぶ弓矢がアックスドラゴンへと放たれるが、鉄鋼を食べるアックスドラゴンの体表には傷一つとしてつかなかった。
そんなアックスドラゴンに跨るケット・シーも、手にしていたレイピアを振って風を生み出して防いでいた。
……俺?
俺は、サポートカード【安全地帯】っていう、魔物カードが全滅しない限りは安全に状況を見ていられるっていうカードを使ってるから、安全! 安全!
っていうか、こんな便利カードがなくっちゃ、ボスのいる所なんかに行かないよっての。
【グオオオオオオオッッッ!!】
「おっ、そろそろ終わるか?」
安心して余裕の表情で居てたら、いつの間にか勝負は終わっちゃってたみたいだ。
既にアックスドラゴンはゴブリンシャーマンと目と鼻の先くらいに、もうめちゃくちゃ近くにまで行っていた。
そしてアックスドラゴンに殺されないようにという訳だろうか、ゴブリンシャーマンが召喚した、めちゃくちゃ体格が良いゴブリン数十体に取り押さえられていた。
「なるほど、1体じゃあ無理な相手を複数体のゴブリンで動かないように押さえているのね」
あのめちゃくちゃ体格が良いゴブリン達も恐らくはトークンなんだろうが、区別つかねぇ。
というか、判断基準が耐久力だけって、おい。
体格が良いゴブリン達がアックスドラゴンをなんとか押さえ込んで動けなくする。
そんな光景を見て俺の頭の中に浮かんだのは、暴れた牛を押さえこむ農家の人達の姿。
テレビとかで見る、殺す訳にはいかないからこうしました的な、あの光景ね。
まぁ、つまりは----
「余裕、って訳だ」
----ザシュッ!!
アックスドラゴンを部下のゴブリン達に押さえ込ませ、自分はその間に逃げようとしていたゴブリンシャーマンは、その首を刎ねられる。
刎ねたのは、アックスドラゴン----その背中に乗っていたケット・シー。
ケット・シーはアックスドラゴンが取り押さえられたのを見ると、そのまま鞍から降りて、レイピアでゴブリンシャーマンの首を刎ねたのだ。
乗ってただけで、ケット・シーとアックスドラゴンは、別の魔物だからな。
【ナカバ……ガゴブリンシャーマンノコ、トリサッアナンコ……】
そうして、ゴブリンシャーマンはガクッと倒れて、淡い光となって消えていく。
それに伴い、周囲に居た大量のゴブリン達が影のようになって、あっさりと消えて行った。
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【(3)闇神を祀る暗黒遺跡】 ボスを撃破しました!
報酬;
『魔物カード』
【ゴブリンシャーマン】(無・コスト[1])……ゴブリンの中でも、呪術や魔術に長けたゴブリン。暗黒の神々との契約により、ゴブリン達を率いる術師として君臨する。暗黒の神々との契約により、魔力を集めて、【ゴブリントークン】(無・コスト[0])を召喚する
『装備カード』
【群れ為す者】(コスト[2])……魔物カード1体を対象に装備可能。装備した魔物を5体に増やす
【闇の火の祭壇】(コスト[1])……自分のゴブリン系統の魔物カードを召喚するコストを[1]減らす。ただし、コストは[0]以下にならない
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(※)ダンジョンボス
そのダンジョンのボス。出てくるボスはそのダンジョンと関連する魔物がボスとして出現し、ボスモンスターを倒すと周囲の魔物も消滅する
この時、ダンジョンボスはコストの制約を受けず、出せる数の制限もないため、今回のダンジョンボスとして出現したゴブリンシャーマンはゴブリントークンを無限に召喚できた
(※)トークン
魔物の姿をした、疑似生命体。基となった姿の魔物よりも耐久力が低い代わりに、魔力さえあれば最大20体までノーコストで召喚できる
このトークン5体を生贄にする事により、次に出す同系統の魔物カードの召喚するコストを[1]減らすことが出来る。ただし、コストは[0]以下にならない




