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アイデア投稿作品群  作者: アッキ@瓶の蓋。


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前略、カードバトラーでダンジョン攻略はじめます。 #2

 ----2時間で、6万円。


 俺はいま、たった2時間ぽっちで稼ぎ出した、1万円札6枚を噛みしめて、喜びを感じていた。


 "たかが6万円ぽっちだろう"、そういう考えの人もいるだろう。


 だがしかし、それは6万円を少額のお金と見なす金持ちの発想などではない。

 ただ単に、事の重要性を理解していない、愚者の発想である。


 重要なのは、この6万円をいかにして稼いだのか。


「----だよなぁ、ダンジョン妖精さんよぉ」

『…………』


 無視かよ、つれねぇぜ。


 俺はそう思いながら、目の前でぷかぷかと浮かんでいるダンジョン妖精に視線を向ける。

 カードから(・・・・・)実体化した(・・・・・)、ダンジョン妖精さんに。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 楽して稼げる仕事を探していたこの俺、月城柚は『ダンジョン攻略』という、世間一般的に言えばなんとも怪しげとしか言いようがない仕事を受けた。

 そしてパソコン画面から実体化したカード、【ダンジョン妖精】の効果である【ダンジョン探知】の能力を用いて、ダンジョンへとやって来ていた。


 ダンジョンの入り口がどこにあったかと言えば、なんと、いつも買い物に行くスーパーの近くに、普通にあった。

 俺の目の前で、人3人くらいが横になっても入れそうなくらいのバカデカい穴が、道のど真ん中に普通に浮かんでいた。

 人が通る何の変哲もない道路であるし、なんなら今まさにダンジョンの入り口目掛けて通行人が数人ばかし通った後でもある。


「(なるほど、【ダンジョン探知】というよりかは、ダンジョンへ入るための入り口を作り出す能力という事か)」


 この【ダンジョン妖精】のカードがなければ、ダンジョンに入れない。

 言い換えれば、【ダンジョン妖精】のカードさえあれば、カード自身が、その効果で道の真ん中にダンジョンの入り口を作り出すという事なのだろう。


「(そして、その入り口を入ろうとする俺を見ても、誰も違和感を覚えない効果もある、っと)」


 入り口に片腕を突っ込んで、今から入ろうとしている様子を見ても、誰も驚いたりしない。

 多分だが、認識阻害か現実改変だかが働いていて、ダンジョンの出入りも見られていても、何もおかしくない光景として処理されているのだろう。


「それじゃ、まぁ、遠慮なく入らせてもらおうか」


 俺はそう言って、初めてのダンジョンに足を踏み入れたのだった。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 踏み入れたダンジョンの入り口付近で、俺は2時間、ただゆっくり座り込んでいただけ。

 そしてさも当然のようにカードから実体化したダンジョン妖精から、俺は2時間分の魔力と引き換えに、現金6万円を頂いた訳だ。


「マジかよ、本物の金だぜ」


 まぁ、パソコン画面からカードを実体化して送り込んでくるような、とんでも技術を持つ会社に何を言ってんだという話だが。

 それでも、やっぱりお金となると、興奮して来るよなぁ、うん。


「まぁ、でも----楽ではない(・・・・・)、な」


 と、俺は立ち上がって、ゆっくりとあたりを見渡した。


 ダンジョンの中は、遺跡を思わせるかのような、幾何学模様が入った石造りの天井と床。

 石に触っても、冷たくも、温かくもないのは、ダンジョンならではの効果なのだろうか?

 まぁ、長時間座っていても痛くないのは、現実離れしているが、問題はそこじゃない。


 ここには----電波がないっ!!


 そう、現代人にとってはお馴染み、携帯の電波!

 携帯の電波がないという事は、勿論ながら、Wi-Fiなんかもない訳で、つまりはスマホで時間を潰すなんてことも出来ない訳だ。

 ダウンロードしたネット書籍とかなら大丈夫だが、ただスマホもろくに使えない場所に、ただ2時間ぼーっと座っているというのは、果たして俺が目指す『楽な仕事』と言えるだろうか?


「いや、言えないな」


 そこに妥協してはいけない。

 俺が仕事に求めているのは『金』ではなく、『いかに楽して金を稼げるか』だからな。


「まぁ、その解決策も分かったし」


 俺は『(株)バッカス・エージェンシー特製スターターセット』を取り出す。


 要は、1時間3万円というダンジョン妖精が出す報酬は、ダンジョンにただ居ただけの報酬。

 そしてダンジョンには魔物と呼ばれる危険生物達が居り、そいつらを倒すと魔力が出るのだそうだ。


「ダンジョン妖精は、魔力を吸い取って、お金に変えるんだよなぁ。

 ----それだったら、その魔力を増やせば良い」


 ダンジョンにただ居るだけで得られる魔力。

 それにプラスして、魔物を倒して得られる魔力。


「追加報酬、ゲットしようじゃねぇか!」


 俺はスターターセットから、3枚のカードを取り出す。


「来いっ、【ピクシー】【ケット・シー】【マンドレイク】」


 俺が3枚のカードの名を呼びあげると共に、3枚のカードから描かれた魔物達が現れる。


 昆虫のような(はね)の生えた緑服を着た小人妖精、ピクシー。

 レイピアを構える二足歩行の黒猫、ケット・シー。

 分岐した根が2本の脚のようになっている叫ぶ植物、マンドレイク。


 3枚のカードから現れた魔物達を率いて、俺はダンジョンの奥へと向かう。


「さぁ、ダンジョン攻略スタートだぜ」




(※)ダンジョンの入り口

 見えないだけで、世界中のあちこちに点在するダンジョンの入り口。【ダンジョン探知】の能力を持つカードを持っていなければ、認識もできないし、触れて入ることも出来ない

 また、認識もできないため、ダンジョンの入場退場も、一般人には認識できない

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