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蛮族 #3

 "魔王に与するモノ"、または"魔に類するモノ"----それが、魔物。

 その特徴は人ではあり得ない白以外の肌、そして頭が2つ以上ある事だ。


 私達の目の前に現れた巨大狼は、水色の肌を持ち、尻尾が二又の蛇になっている魔物であった。


『グルルルルッ!!』


 水色肌の狼が唸り声をあげ、私は即座に杖を構えて詠唱を始める。


「『母なる神よ』『我らに偉大なる加護を』『安寧たる服を与えたまえ』----【聖壁】!」


 私が詠唱を唱え終わると共に、私とヴォーガン君の2人の身体の前に、透明なバリアが出て来たと思うと、バリアは消えていく。


 これぞ神官のスキルの1つ、【聖壁】。

 神様から攻撃を防いでくれるという、バリアを貰うというスキルだ。


 雑な仕事しかしてない神様なんですけど、そんな神様でも別に仕事の全部が雑な訳ではない。

 そんな雑ではない仕事の1つが、この【聖壁】----っていうか、加護バリア。


 全ての人間は神様から加護バリアを貰っており、この加護バリアはあらゆる攻撃からその身を守ってくれるんですよ。

 この加護バリアは受けるダメージが大きいほど削られるんだけど、まぁ、ある限りはどんなダメージを喰らおうが死なないのである。


 【聖壁】は人間が持つ加護バリアの上に、さらにもう1枚加護バリアを張る、みたいなスキルかな?

 単純に生存率が上がるんで、私のような見習い聖女は、けっこう重宝されたりする。



 ……ちなみに、相手の魔物さんも、魔王さんからそういう加護バリアみたいなのも持ってるんだけどね。

 ぶっちゃけ、魔王さんの加護バリアを神様がパクったとか、そう書いてある聖典もあるっちゃあるんだけど。

 うん、雑仕事な神様なら、あり得るかも。



「よっしゃあ! 行くぜ、おらぁ!」


 さて、まず飛び出して行ったのは、うちの蛮族くんこと、ヴォーガン君。

 ナイフを握り、「ヒャッハー!」と笑いながら、水色狼の首へとナイフを振り下ろして----


『ウグワーッ!!』


 ----"狼の首は(・・・・)吹っ飛んだ(・・・・・)"。



「は?」


 思わず、そんな言葉が出てしまうくらいには、私は驚いていた。


『グルルルッ!!』

『グルルルッ!!』

『グルルルッ!!』


 私が驚いていると、草むらから水色狼がさらに3匹出てきました。


「おいおいおいっ! さらにおかわりとは、嬉しいなぁ! おいっ!」


 新たな狼の登場に、ヴォーガン君の顔は笑顔になっていた。

 そして、そのまま、狼の方に向かって、特攻していく。


『ウグワーッ!!』

『ウグワーッ!!』

『ウグワーッ!!』


 水色狼3匹の首は、先程と同じように、ヴォーガン君のナイフで一瞬で吹っ飛ばされてました。


「…………」


 私はその光景に、驚きを隠しきれませんでした。


 加護バリアは全ての攻撃から、身を守ってくれる。

 だから人間と魔物の戦いと言うのは、相手の加護バリアをいかに効率よく壊しながら、自分の加護バリアを壊されないようにする、そういう戦いなのです。


 ヴォーガン君のように、"加護バリアを(・・・・・・)無視して(・・・・)攻撃する(・・・・)"だなんて、あり得ないのである。


「(蛮族だから? いえ、そんな話は聞いたことがないですし……)」


 私が考えを巡らせていると、


『『『ウグワーッ!!』』』

「ウグワーッ!!」


 ヴォーガン君が行った方から、先程とは別の水色狼達の悲鳴。

 ……とは別に、1人の人間の声?


「……人間の声?」


 なんだか、嫌な予感がしてきた私は、そそくさとヴォーガン君が行った方を確認。



 そこには、水色狼達の首を跳ね飛ばして、大満足の血まみれ蛮族くん。

 そして、いつかのように内股のまま倒れている騎士さんと、高価そうな馬車が一台……。


「…………」


 状況を、私なりにまとめてみます。



 まず、ヴォーガン君は水色狼狩りのために、突っ込む。


 突っ込んだ先で、水色狼に襲われている馬車を発見する。


 さらに突っ込む。


 水色狼達を、先程と同様に一発でノックアウトさせる。


 ついでに、騎士さんもノックアウトさせる。



「こんな感じですかね……って、まずいでしょ! それは!」


 慌てて私は、騎士さんに『回復の奇跡』をかけるために、馬車の方へかけていくのでした。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 魔物が溢れるこの世界で、街の外に出てる者は少ない。

 私のような冒険者か、あるいは外に出ても襲われないための護衛を雇ってる人達か。


 私が見るに、豪華な宝石がふんだんに使われたその高価な馬車は、後者。

 つまりは、貴族様に見えた。


 そして、そんな貴族様の護衛さんが倒れて震えており、その前に高笑いをするヴォーガン君。


「あー……」


 どう考えても、ヴォーガン君が護衛さんを倒したようにしか見えない……。


 そして、ついでに言えば、その馬車も問題だったりしちゃうわけで。


 なにせ、馬車についてる家紋(マーク)----冠を被ったドラゴンの紋様。


 それを馬車に家紋としてつけられる者は、あの方々だけ。

 そう、この街マーズを治めている領主、アルスマーズ様の一族だけ----。



(※)加護バリア

 神様が全ての人間に与えたもので、見えない膜のようなもの。攻撃を受けるとそのダメージ分ずつ削られて行き、受けたダメージがバリアで防ぐ限界を越えると、バリアは消滅する。時間経過や睡眠などにより、加護バリアは復活する

 ちなみに、魔物にも同じように加護バリアが存在し、これらは魔王から与えられたものと言われている

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