十二騎士と、一闘士
エッティ王国と呼ばれる国に、12人の王命騎士が居た。
王命騎士と言うのは王から直々に騎士の称号をいただいた、この世で12人しか成れない、全ての騎士の誉である。
12人の騎士は知識、体力、技能……その他、様々な騎士として習得すべき技能を極めた騎士。
彼らは皆、12の流派を極めており、その流派に伝わる秘伝を会得しているという。
全ての騎士、さらには全ての民に慕われる12人の騎士ではあるが、その中でただ1人だけ騎士達を慕わない者が居た。
12人と共に学び、共に修行し、共に笑い、共に怒り、共に悲しみ――――裏切りによって地位と名誉、愛する者を奪われた者。
その騎士の名は、ミューティー。後の世に反逆の騎士として語られる事となる、妬射猫流の使い手であった。
「六合兎流跳躍長刀術、跳抜兎!」
ぴょん、と12人の騎士の1人である《卯》の騎士ピョンディールは地面を蹴って飛びあがる。その勢いは天高く飛びあがり、天に浮かぶ太陽に届く勢いである。
飛びあがると共に彼の頭の上のウサミミが忙しなく動き、足場がないはずの空の上を自由に飛んで、さらに上へと上がって行く。
「……空中を飛びあがる、それがお前の秘伝か。ピョンディール」
そう言うのは、甲冑で全身を包み込んだ騎士。
全体的に丸みを帯びたその甲冑、兜には角、いや猫耳のようなものが生えていた。両手に幅広の大剣を手にしたその騎士は、兜の合間から見せる金色に光る眼で相手をじっと睨み付けていた。
「そうです! これこそ六合兎流跳躍長刀術の秘伝《兎張白夜》!
空中さえも足場に、ぴょぴょんと飛び上がるこの技の前では、地を無様に這いまわる猫の流派など当たりはせぬぞ、裏切りの除名騎士ミューティー!
今こそ、この長刀ウサギリンクの錆にしてくれる!」
そう言いながら、器用に空中で方向を整えるピョンディール。
そして地面を強く蹴るように、空中の足場を蹴ったピョンディールは、弾丸を思わせる勢いでミューティーへと放たれる。
勢いがついたピョンディールの身体はそのまま火を纏い、それは手にする長刀に集約される。
「六合兎流跳躍長刀術奥儀、跳抜兎炎兎!」
由房さんのリクエストより、
「心の底から熱くなる作品」です。
十二支や十二星座などをモチーフにした作品は数多くありますが、今回は十二支をモチーフにした騎士の物語です。
話の流れとしては、十二支をモチーフにした騎士達に裏切られた、猫をモチーフにした騎士さんが恨みを果たすために戦って行く、というお話ですかね。
騎士物語や十二支が未だにモチーフとして流行り続けるのは、やはり作りやすいからですね。やっていて楽しかったです。
残念ながら熱い戦いとまでは言えないかもしれませんが、書いていて使える要素はあると感じました。