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アイデア投稿作品群  作者: アッキ@瓶の蓋。


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29/38

その神官、蛮族の女と呼ばれてます

 ----きぃぃぃぃぃぃぃんっっっっっっ!!


「ウグワーッ!!」


 王城の謁見の間。

 貴い貴族様と、国を治める王様達の見守る中、騎士団長の(うめ)き声だけが、響いていた。


 『王を守る最後の盾』とも称される、全身鎧に身を包んだ騎士団長は、内股になりながら、その場に座り込んでいた。


「ふんっ! 軟弱な男だな、っと。蹴り上げただけなのに」


 倒れる騎士団長を見下ろしながらそう言うのは、赤黒い髪と褐色の肌を持つ少年である。

 所々が破れたズボンをはいた、上半身裸の、12歳の少年。


 そんな少年が、騎士団長を倒したのだ。

 そう、金玉を蹴って。


 もう一度言います。

 あの少年は、騎士団長の大切な急所を、思い切り蹴りやがったのだ。


「(うわー、痛そう)」


 ぷるぷると、今もなお震えている騎士団長を見て、私は痛そうと他人事のように呟きます。

 えぇ、他人事ですもの。

 蹴られたの私ではありませんし、蹴ったのも私ではありませんから。


「おりゃあ! おりゃあ! もう一つおまけで、おりゃああ!」

「ウグワーッ!! ウグワーッ!! ウッ、ウグワーッ!!」


 ----なので、さも私に責任を取らせようと、こちらに目線を向けないでもらえません?

 王様も、貴族の皆様も、赤黒い少年ではなく、私を見ていた。


 なんで私に止めさせようとするんですか?

 私、別に関係ないんですけど……。


 あと、ヴォーガン君。

 3回もやるとか、やりすぎなんですよ。


「はぁ……はいはい、やりすぎなんですよ。ヴォーガン君」


 と、私は手にしている杖で、こつんと彼の頭を小突く。


「そうは言うが、サビナ。相手は全身鎧なんだぞ、っと? 鎧を殴ったら痛いに決まってるから、一番効果がある所を攻撃するのは当然なんだぞ、っと」

「急所狙いを攻めているのではなく、騎士団長のメンツを考えなさいな」

「----? "めんつ"?」


 『メンツ』という言葉の意味が本当に分からないみたいで、首を(かし)げる赤黒い少年、もといヴォーガン君。


「……上を立てるって意味ですよ。ほら、族長の長い話とかをちゃんと聞かないと怒られるでしょ? そう言うのと一緒ですよ」

「----? 族長は長い話なんて、一回もしたことがないぞ、っと? いつも『特攻ぅ~!』とか、『やれぇ~!』とか、そういうのだぞ、っと」

「マジかぁ、流石は蛮族。族長さんも戦闘一色なんですね」


 やれやれ、と思いつつ、私は----見習い聖女サビナは王様に頭を下げる。


「国王様、騎士団長の大事なアソコを蹴り上げてしまい、メンツを潰したことをヴォーガン君に変わって、心からお詫びいたします。

 つきましては、謁見の間から退去することを、認めてくださるとありがたく存じ上げます」


 端的に言えば、もう帰りたい。

 ぶっちゃけ、本当になんで一介の見習い聖女たる私が、このような謁見の間に行くことになったかと言われれば、彼のせいだ。


 赤黒い肌を持つ、巷では『蛮族』と噂される民族の少年。

 その名も、ヴォーガン。


 彼と出会ったことが、私の人生の転機と言えるでしょうね、うん。




(※)ウグワーッ!!

 やられる時の掛け声みたいなもの。キャラクターがやられたり、ダメージを受けたりする時の声

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