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アイデア投稿作品群  作者: アッキ@瓶の蓋。


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今日から俺は、精霊王!

仲間が封印されてる系、一度やってみたくて

 中学3年となってそれなりに慌ただしい日々も過ぎ、5月も半ばを過ぎた頃。

 うちの郵便受けに、とあるチラシが入っていた。


 内容は『冒険者育成学校 受講者、大募集!!』という、良く見かけるタイプのチラシであった。

 学校と書いてあるけど、夏休み返上して冒険者としてのノウハウを叩きこむというような、いわゆる合宿、のようなモノらしい。


 そのチラシは、冒険者を増やそうという意図を持った、これまで何通も見たことがあるタイプのものであり。

 ダンジョンと呼ばれる場所を、冒険して魔物達と戦い、中にあるお宝を取ってきて一獲千金を狙おうなどという、本当にどこにでもあるようなチラシであった。


「冒険者、か……」


 テレビとかでは、偉い学者先生が「数十年前に世界各地に表れた謎の危険地帯であるダンジョンに、冒険者と称して人々を送り込むのはどうなのか」などと討論をしてたりするんだけど。

 生まれる前から、もう既にダンジョン冒険者がテレビとかで、ウハウハ生活を送ってたり、芸能人みたいな感じで出てるのを知っている身からすると、そこまでおっかなびっくり危険地域として扱うのはどうなんだろうか。


 既にこのチラシのような養成学校やら、冒険者の装備を整えるお店だとか、ダンジョン産のアイテムを売りさばく専用商店まで出来てるのに。


 確かにダンジョンは危険だ。

 だが、どんな職業にも危険(リスク)という物は多少なりともあるものだし、その分もらえる金額もデカい。


「いっそ、冒険者になるってのもアリかもしれん」


 正直、俺自身にどのような職業が向いているのか、自分にも検討が付かない。

 ……というか、中学生のうちから、将来とか言われても良く分かんないし。


 けど、冒険者なら、なって見ても良いかもしれない。

 冒険者同士での結婚だとか、たった数回のダンジョン探索で1000万円稼いだ奴とか、あるいは現役高校生の時点で冒険者となってむっちゃ女子にモテた奴とか。


「……うん。アリ、だな」


 まだ見ぬ冒険者----もとい、女性との出会い!

 

 うん、アリ! めちゃくちゃアリ! すっごい、アリ!






 俺、すなわち四宮司(よみやつかさ)は、かなり不純な動機で冒険者への道を踏み出した。

 その日のうちにはチラシの学校に申し込んで、次の日にはパンフレットと、早期申し込み特典として初心者用の木刀が送られてきた。

 どうやら、この木刀で軽く訓練しとけという事らしい。


「『まず第一に、冒険者は身体が資本! よって、ある程度の訓練で身体を鍛えておいてください』か。

 まぁ、そういうのは大事だよな」


 幸いなことにパンフレットに、軽い指導方法なども記載されており、1日30分くらいなので、そこまで苦ではなかった。


 ……というか、めちゃくちゃ楽しい。


 木刀を振ってるだけでも、なんというかワクワクしてくる。

 京都の修学旅行とかで、男子とかが無駄に木刀を買ってるのも、分かる気がする。

 なんていうか、木刀を振るだけでも、なんか楽しい。ワクワクする。


 1回振ると、頬がにやけ。

 10回振ると、もっと振りたいと興奮して来て。

 100回を数える頃には、まだまだやっていたいと、興奮が止まらない。


 いわゆる、ハイ状態って奴だろうか。


 そんな風に、ほぼ毎日、楽しく。

 日課というよりかは、毎日ゲームとかで遊んでる感覚で、俺は木刀を振り続けた。


 まぁ、それで剣術の腕が飛躍的に上昇してる、って感じは、ない。

 ただ木刀を振るう楽しさで、振ってるだけだしな。


 そうして、一月が経過した頃だった。



「やべぇ、やっちまったぜ」



 俺は、ぽっきりと真ん中で折れた木刀を見ながら、そう呟いた。


 ……折るつもりは全くなく、ただいつものように木刀を振ろうかと思ったら、うっかり振り下ろし過ぎてしまい。

 そのまま、地面に強く打ちつけられた木刀が、真っ二つに割れてしまったという訳だ。


「どうしよう、弁償ものか? これ?」


 木刀の値段なんて分かんないし、そもそも合宿参加条件の1つにこの木刀を持ち込む……とかはないみたい。

 パンフレットにも、そんなことは書いてないし。


 けど、折角今まで楽しく、木刀を振り続けていたのに、ガックシだよ。


「はぁ……」


 俺はそう思いながら、要らなくなったおもちゃを捨てるかの如く、木刀を地面へと投げ捨てた。




 まさか、その投げ捨てた木刀が、綺麗なお姉さんに変わるなんて、思いもせずに。



 そう、その日から始まったのだ。

 木刀を折って、その中に封じられていた精霊であるトールを助け出した、あの6月のあの日に。

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