盗掘テイマー 魔物を愛した最弱お人よしテイマーは、生まれ変わる。なので、次からは魔物を支配し、蹂躙する最凶テイマーになります~
テイマーってほんわかしたイメージがあるので、
それとは逆方向の主人公でプロットを作って見ました
とあるダンジョンの奥底。
その奥底に、最強種ドラゴンの姿があった。
翼、爪、長い蛇のような尾。
そのどれもが、かのバケモノの偉大さと強さを見せつけていた。
だが、そんな偉大な最強の赤きドラゴン----レッドドラゴンが、地面に伏せていた。
『グォォォォォォッッ!』
「クククッ……どうした、ドラゴンよ」
そんな地面で伏せをしている状況のレッドドラゴンの背に、1人の少年が座っていた。
少年は、実に平凡そうな見た目の顔立ちの、どこにでも居そうな少年であった。
ススキを思わせるような真っ白い髪と、海苔のような太い眉毛。
その2つの特徴がなければ、ただの没個性のモブのような、男子中学生である。
そんなモブのような少年は、ドラゴンの背の上で謎の紋様を描いていた。
「先程までの勢いはどうした? 人間なんぞに負けるはずがないと、息巻いていた勢いはどこにやった?
まっ、さっ、かっ?! これで終わりか?」
『グォンッ?! ググ、グォォォォーン!』
「……だよなぁ~。伝説にも語られるような、最強種たるドラゴンが、この程度で終わるはずがないよな?
さて、奥の手とか隠し持ってるかもしれないから、もう少し痛めつけておきますかね?」
グイグイっと、少年は謎の紋様に手を突っ込む。
泥の中に手を突っ込んでいるかのように、彼の腕は紋様の中に吸い込まれていた。
『グォン?! グォ、グォォーン?!』
「止めてくれ、とでも言っているのか? 悪いな、人間にドラゴンの言葉は分からんのだよ」
グイッと、彼が腕を捻ると、途端にドラゴンの身体全体に黒い光が駆け巡っていく。
『グヒョォォーン?!』
腕から血が飛び出て、翼には大きな亀裂が入り、鱗の下ではいくつもの体内器官がダメになっていた。
『やっ、やめろぉぉぉぉぉぉ! やめてくれぇぇぇぇぇぇ!』
あまりの激痛に、ドラゴンは背中の人間に念話を送る。
言葉だけではなく、その時に感じている想いまでも相手に送る、ドラゴンのような高等なる魔物にしか出来ない魔術。
「あー、まだいけるなー(棒)」
それを、彼は無視してさらに手を捻って、激痛を与える。
『やめてくれぇぇぇぇぇぇ! おっ、俺様の念話は届いているはずだ!
届いているのならば、俺様のこの悲痛なる想いに共感し、この行動を辞めてくれるはずだっ! そうだろう、人間っ!』
ドラゴンが必死の想いで訴えると、彼は溜め息を吐く。
そして、すーっと息を大きく吸い込むと、
「"うるさいぞ、レッドドラゴン"」
『----?!』
彼はドラゴンにそう伝えたのだ。
普通の者には『グォーン』とか、『グォグォ』にしか聞こえない、ドラゴンの言語で。
『"お主、俺様の言葉を使えるのか?!"』
「"あぁ、一応な。お前らにしか分からない言語って事だが、ろくな言語じゃないがな"」
ドラゴンの言語は、他者には絶対に真似できないはずの、最強種たるドラゴンにしか話せず、聞こえない言語だ。
なにせ、文字の並び、大きさ、発音など、普通の言語では重要になるはずのモノが無意味だからだ。
ドラゴンの言語に必要なのは、魔力----言葉の端々に伝えたい思いを含める事で完成する言語。
「"同じ言葉でも、意味がまったく違うなんて、ふざけた言語だぜ"」
『"待て、貴様っ!? 言語も使えるし、聞こえるって事は、念話を使う前からこちらの言葉が聞こえてたって事か?!
何故だ、それなのに、何故、俺様への攻撃を続けるのだっ?!"」
「えいっ」と、少年は手を捻り、ドラゴンに先程までよりも、より一層きつい激痛を与える。
目的は単純だ、これ以上話すことはないからだ。
「忘れたのか、最強種の癖に? 僕はお前の言葉を散々、念話ですら無視してたんだぞ?
お前がどう思おうが、どう懇願しようが、僕はお前に容赦なく痛みを与え続ける」
それが、彼がここまで来た目的だからだ。
「話す目的があったのなら、話してるさ。僕はドラゴンと会話できるんだから。
殺す目的があったのなら、殺してるさ。僕は手だけでも、お前に激痛を与える魔方陣を使えるんだから。
それらをしないのは、僕の目的が交流でも、復讐でもないからだ」
----そう、交流でも、復讐でもなく、彼の目的は。
「確認な。僕の記憶が、生前の記憶が正しいか、否かという」
彼の名前は、成瀬 司。
つい数年前までうだつが上がらない中学生であったが、とある一件によって前世の記憶を思い出した。
その記憶こそ、"魔物を愛した最弱の、お人よしテイマー"という記憶。
魔物のために生き、魔物を守るために生きた、テイマーとしての生涯であった。
が、彼が生前得たのは、魔物を甘やかしすぎたせいで魔物が戦いをせず、よって得た【最弱】という、不名誉な称号。
そして、人にやさしく接したせいで利用された、【お人よし】という、これまた不名誉な称号。
だから、記憶を取り戻した彼は、決めたのだ。
----これからは、魔物を完璧に支配し、蹂躙する最凶の男になると。
「さぁ、レッドドラゴン。もう少し付き合ってもらうぞ?
生前はあまり練習してこなかった、支配力の訓練に、な」




