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朝倉阿君丸

学生生活あと1年しかないよ...【(注意)愚痴です】


不定期更新で作者が勢いだけで作っているものです。よろしくお願いします〜

1568年 一乗谷


「知らない天井だ。どこだ....。」


あれー、会社から帰宅して寝た記憶はあるんだけど....。明らかに俺の家でないし....。どーしよう。


10畳ある和室の中央の布団から起き上がり、ブツブツと独り言を言っている子供が今回の物語の主人公である、朝倉阿君丸だ。ここは1568年、朝倉領越前一乗谷。


朝倉阿君丸は1562--1568年に生きていた朝倉義景の長男であり、7歳で亡くなった人物である。彼の死には色々と陰謀説などがあるとされている。そして、史実通りに亡くなった阿君丸の中へ転移してしまった若手会社員が色々と歴史を変えていく。さて、前置きはこの辺にして物語をすすめていこう。


「なんか、誰か来るのか?あー、何このぎゃあぎゃあ喚く声、うるさいったら。」


部屋に喚く声とそれを咎める声が段々と近づいていた。その声は部屋の前に来ると中へ入らず、外でずっと発声している。




「えーい、退かぬか貴様ら、儂の阿君丸がその様な事で天に召される訳なかろうが!」


「殿、落ち着いてくだされ。」


「そうですぞ。」


部屋と廊下を仕切る障子の前でぎゃあぎゃあと喚く誰かを宥める人々のやりとりが行われている。そして、日の光に彼らが照らされ、室内の畳に影が映し出されまるで影の茶番劇を見ているようであった。


「クスクス。」


室内から子供の笑い声が聞こえ、彼らの劇は終わった。誰もが耳を疑う状況であり、聴覚器官へ神経の集中が意識的に行われていた。明らかにおかしい。言葉はそれで足りるだろう。部屋の中にいるのは医師が生きていないと判断した阿君丸だけ。先ほどまで喚いていた人物、阿君丸の実親の当主朝倉義景でさえも静かになっていた。義景を宥めていた家臣達も静かだった。


「クスクス、あはははは!」


今度は確かに聞こえた。懐かしい声であった。


「あれー、影の茶番劇はもう終わったのかなぁ。面白かったのに。」


義景と家臣達は誰が先に障子を開けるのか互いに牽制している。先程まで誰もが生きていると思っていなかったのに、明らかに生きていると判断できるからだ。妖術の類かと疑っていたことも関係する。


「其の方、中を確かめてまいれ。よ、妖術の類かもしれん、まあ、うむ、あれよ、難しいのであれば、無理強いはせぬが..」


義景は家臣に行くよう促すが、ジト目で睨まれ、語尾を濁らせ他の家臣を見ても、同じように見られて内心オドオドしていた。


「いや、殿が行くべきかと。」


「某もそう思います。」


一向に障子を開けて中の様子を確認しない義景や義景を急かす家臣達の様子は屋敷で注目を集めつつあった。側から見ると当主とその家臣達が障子の前で揉めている様子であり、何かと興味を唆る状況であった。


「Who are you? Oh...Can you hear me?」


そんな時、また部屋の中から声が聞こえた。


「「「「「.......!!.」」」」」


障子の前にいる義景達は冷や汗をかき、一瞬呆気にとられた。


「よ、妖術の言葉でしょうか....。拙者には日ノ本の言葉と受け取る事が出来ません。」


「わ、儂を脅かすでない!よ、よう、妖術の言葉などでないはずじゃ!」


「しかし、殿、言葉は妖術の類かもしれませんが、声ははっきりと聞き覚えがございますぞ。あれは間違いなく、くま」


「いい加減にせい!儂とてそんな事はとうの昔に気付いておるわい!じゃがな、息子が妖になったなぞ、認めたい親がおるか!下手したら、この手で斬らねばならんのだぞ!」


義景が家臣の言葉を強引に遮ったのは声の主が息子、それもつい先程死んだはずの阿君丸だと気付いていたからだ。


「殿、どうなされたのですか?此方は宗滴殿が以前御使用になられていたお部屋ですが....。まさか、阿君丸に何かあったのですか?」


部屋の前で騒いでいる義景の周囲には人集りが出来ていたが、当主と重臣らに話し掛ける身分でないため誰もが見守っていた。しかし、長男の阿君丸の生母である人物なら話は違ってくる。


「あああ、部屋の中から声がきこえてのう。」


肝心な部分は伏せて伝えた。そうすれば、彼女が進んで部屋に入ると考えたからだ。家臣達も義景の言葉に同意する様に頷いている。


「そ、そんな、阿君丸は天に召されなかったのですか?」


「いや、そうではなく.....。」


義景は内心早く障子を開けて欲しかった。理由なんてどうでもいいから、中の様子を見たい欲求が大きく、彼女の話も適当に誤魔化すぐらい全く聞いていなかった。


「阿君丸、入りますよ。」


実親の彼女が声をかけても部屋の中から返答はなく、小さな子供が部屋の中を動き回っている足音しかしない。死んだはずの息子が生きているかもしれない状況と悟り、彼女は一向に障子を開けない。妖の類かと認識していたからだ。


そんな時、その足音が障子の前で止まった。陽の光に照らされて、阿君丸の同じ背丈の人物がいる事を多くの人が認識し、皆一歩後退りをした。


次の瞬間、障子がスッと開いた。そこには子供からすると大きな武士の大将クラスが使用する立派な兜を頭に被り、顔の表情の殆どが見えない子供が立っていた。


「「「「「「妖じゃぁぁぁぁ!!!!」」」」」」


人は思った事を認識する癖がある。先程から妖怪だと信じ切っていた、義景と重臣達は叫びながら、その場で腰を抜かしていた。それと、彼らの声で妖怪と認識し、周囲の者達も我先に逃げていった。つまり、その場に残った、いや逃げ遅れたのは義景と家臣達だけだった。母親である彼女も一目散に逃げていた。誰だって命は惜しいものである。


ガシャン、と音を立て乱暴に兜を脱ぎ捨てた子供の顔を見て、義景と家臣達は呆気にとられていた。


「阿君丸か。」


義景はそれが精一杯であった。


「あーれ、明らかに田舎だよなあ。ここどこだよ。見た感じ、じいちゃんの家の近くじゃないしねー。うん、あーの、うちのじいちゃんの家とか知ってますか?町議員で朝倉って言うんですけど。」


目の前の子供は全く義景の言葉を聞かずに訳の分からぬ質問をしてきた。しかし、義景と家臣達は大部分理解出来ない内容であったが、唯一理解出来た言葉があった。


じいちゃん 朝倉


義景と家臣の中では阿君丸が朝倉宗滴公の力で生き返ったと考えていた。




ストックを現状は放出するだけの予定のため、感想の返信及び文章修正には大幅な時間を要します。夏以降になれば、此方も状況次第では続けていきたい考えています。

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