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はじめ

来なきゃよかった。


数年ぶりにやってきた博物館のど真ん中で、俺は後悔していた。


夏のうだるような熱気の中、熱中症にでもかかってしまうんじゃなかろうかという思いをしてまでやってきたのに、目の前に広がるのは社会見学かなんかで来ている高校生の集団。


男女が仲よさそうにペチャクチャ喋っている様は、大学中退絶賛ニートの俺には厳しい光景だった。


とはいえなぜニートの俺が博物館に来ているかというと、高校の行事で地元の博物館を見学するという話を風の噂で聞き、女子高生見たさにやってきたというバカみたいな理由なので完全に自業自得である。


ほんとに来なきゃよかった。ぼっちだった奴が同窓会に行ったけどやっぱりぼっちだったみたいな気分だ。



俺はイヤホンをつけて周りの音を聞かないようにしながら、入場料分は楽しんでやろうと展示物を流し見することにした。


古代の食器やら武器やら、当時の生活風景の模型やら。恐竜コーナーではティラノサウルスをはじめ、何体もの恐竜の化石が展示してある。


それ以外にもむしろ雑多と言いたくなるラインナップがあり、特にこだわりのない俺みたいな奴でもなかなかに楽しめる。

博物館なんて小学生以来だと思うが、案外悪くない。地元だから逆に興味を持ってなかったが、安いし暇つぶしにはいいんじゃないだろうか。



どれくらい見回っただろうか。


俺はふと、ある一角の端に置かれている展示品に目を向けた。


壁には「古代のオーパーツ!?」などと書かれている。どうやら世界各国の超技術やら宇宙人情報を紹介しているらしい。


ミステリーサークルやら海底神殿、モアイ像の写真。

この辺はもうネットでいくらでも解明されてる気もするが、まあオーパーツ史(そんなのあるかは知らないが)的には騒がれてる部類だし、広い目で見れば飾ってしかるべきものかもしれない。


俺の心はそんな複雑な現代人ほどシビアじゃないので、素直に楽しんでやる余裕があるのだ。せくせく働く社会人も見習うべきである。


……と、話が逸れてしまった。俺が興味を持ったのはそんなものじゃないのだ。


ガラスケースに入った、苔が生えた機械…のようなもの。

一体何に使うのか想像もつかないが、その精巧な技術を感じさせる見た目と苔が生えている姿がアンバランスで、思わず目を引いた。


土に半分埋まっているうえ割れて一部になっているが、どうやら輪っかの形状をしていたようだ。何に使うものかは想像もつかないが、円周を考えると結構なでかさだったらしい。


なんかのパチモンなのかもしれないが、それでもこだわりを感じる作品だ。うーん、なんともロマンがあるな。


高校生にはウケが悪いのか人通りも少ないので、俺はしばらくそれに見入っていた。


作品は有名かどうかより心に響くかどうかだよな、とかかっこつけたことを考えていると、ふと機械が動いたかのように感じた。


驚いてじっと眺めてみたが、もうそんな様子はない。やはり俺の目の錯覚だったらしい。


一瞬眠っていた古代の遺産が俺に反応したのかとかファンタジーかSFみたいなことを考えてしまったが、そんなバカなことがあるはずがない。がらにもなくこんなとこに来てしまうから疲れてるのだ。


昔はこんなんじゃなかったのになぁ、などと自嘲気味に笑っていると。


今度こそ、苔生したオーパーツが動いた。


いや、動いたどころじゃない。ゴゥン、と低い音を立て、ついで青白い光を発し始め…瞬く間に眩しさを増して俺の視界を埋め尽くした。


「なっ……!?」


何も見えない。世界が光に包まれた。


周りから切り離され、俺一人取り残される。目すら開けてられなくなり、それでも瞼を突き抜けるほど強烈な光が途切れることなく続き……。



そうして、俺の物語は始まったのだ。






初めに言っておく。


これはありきたりな異世界転移モノだ。


よくあるニートがおくる、


よくある異世界での、


よくある退屈な物語である。

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