もしもーし
「なに?」
「昨日のお礼でもいいにきたの?」
いきなり声をかけてきたのは真っ黒なローブを纏い綺麗で真っ白な髪をした白い瞳の女の子だった。
ゴブリン達を警戒していたはずの友也はまったく予想と違う展開に面をくらってしまう。
「あわわわ、、」
「あれ?」
「もしもーし?」
白い髪の女の子はキョドキョドする友也にキョトンとした顔で尋ねる。
友也は訳が分からずどんどんパニックになっていき意味もなく辺りをキョロキョロしてしまうが森の光景が広がるだけで何もなかった。
(あれ、ゴブリン達は?何で女の子がいきなり、、)
元の世界で友達がまったくいなかった友也は悲しい事に女の子に対する免疫力がまったくなく、さらに真っ黒なローブから見える白い髪の女の子のたわわな胸の破壊力も相まってさらに動揺してしまう。
「あわわわ、、」
「もしもーし?」
白い髪の女の子はそのクリクリした白い瞳を友也の方に向ける。
「と、、と、と、、」
「と?」
「と、友達になってください!!」
友也はなぜかこの状況で選択するのはありえない言動と行動、さらにぎこちない笑顔で右手を前に差し出す。
(またやってしまった、、)
(どうしよう、、)
一度視線を地面に落とし恐る恐る視線を上げていく、足元からたわわな胸元そして白い髪の女の子の顔を見ると女の子はキョトンとした顔で友也を見つめていた。
「うわーーー!!!」
キョトンとした顔の白い髪の女の子を置き去りにしたまま反転し、自分の出せる全速力で走り出し、その場を逃げ出してしまう。
「えー!?」
「ちょっ、ちょっと何で逃げるの!」
「ちょ、待ちなさい!」
その声は完全にテンパってしまった友也にまったく届いておらず友也は茂みをかき分け、時には転んで、傷つき、でもそんな怪我をもろともせず駆け抜け、まるで小動物のように逃げだしていく。
(やってしまった!)
(またやってしまった!)
(どうしよう、、)
この半年の間慣れ親しんだ洞穴に駆け込み少し冷静になってきた友也は自分のやった行動を思い出して自己嫌悪におちいる。
なぜなら昔から友也には友達がいなかった。
幼稚園の時も小学校のときも中学のときも。
厳しい両親にまったく遊ばせてもらえなかった友也はコミュニケーション能力がまったくといっていいほど育っておらず、遊んだと言えば家で飼っていた猫にずっと独りで喋りかけてぐらいだ。
「どうしよう、謝りに行った方がいいかな」
「昨日のお礼でもいいにきたの?ってことは助けてくれたのはあの子なのかな?」
考えがまったく纏まらず、独り言をずっと繰り返し言っているうちに外はすっかり日が落ちて暗闇になっていた。
すると猫の声が聞こえてくる。
「ニャア」
暗闇の中からディアと名付けた白猫がまた友也の元にやってきた。