夢見心地でも
「う、、ん、、」
友也は暗闇から徐々に意識を回復させていき最後に意識を失った状況を思い出しバッと起きあがる。
「はっ、、あれっ?」
「ゴブリン達がいない、、」
周囲を見渡してもどこにもゴブリン達はいないどころか、辺りを見回すとそこは異世界に転移してからこの半年間程拠点にしている割と慣れ親しんでいる3畳ほどの洞穴の中にいた。
「あれ、なんで、、」
この半年間に経験した朝と同じく焚き火が夜中の内に消え少し残った火種がパチン!パチン!と音をたてている。
「どうして、、」
視線を入り口付近にやるといつもと変わらず友也が造った木と葉っぱで、できた建具で入り口にしっかり蓋がしてある。
「夢、、?」
「それにしてもリアルな、、」
「よかったぁ」
夢だとでしか判断できない様な状況にやっと心の荷がおり安堵していつもの癖の独り言を喋りだし友也は気になって不意に夢で刺された右足を確認する。
(もちろんどこも痛くないし傷跡もどこにもない、、よな、、どこもおかしくない、、)
友也の視線の先はこの世界にきて半年の間、友也が大事に洗濯しながら大切に扱ってきた一張羅である学校指定のジャージがあった。
そのジャージの右足の部分に小さな穴が開いていた。
ちょうど友也が夢の中での出来事と思っていて、最後に意識を手放す前に持っていた小さな投げナイフの刃と同じぐらいの大きさが。
「なっ!」
「夢、、じゃない、、」
そう思った瞬間、急に景色がぐるぐる回り始め一気に気持ち悪くなり目眩が襲ってくる。
「絶対に夢じゃない!」
「なんで僕は助かった?」
完全に意識を失ってから魔女と名乗った女の子に助けてもらった友也は思い出そうと考えても答えがでるはずもない。
頭の中でぐるぐる思考の波が押し寄せる。
「ナイフはあるし、弓矢もいつもの場所にたてかけてある」
1つ1つ確認できることを確認しながら、やがて友也は腰の鞘からナイフを抜き入り口付近にたてかけてある建具からの隙間から外を確認する。
目を凝らし、さらに物音にも気を配り確認するが辺りにはまったく何の気配も感じることはできない。
「ゴブリン達の気配はない、、」
昨日の出来事を出来るだけ詳細に思い出してみるがまったく答えがでてこない。
友也の額に変な汗がながれ、やがて1つの答えをはじきだす。
「昨日の場所、、行ってみるか、、」
「場所はなんとなく、、覚えている、」
癖の独り言を呟きながら洞穴にたてかけてある50cm程の半円状の弓と友也が造った石の矢尻がついた矢が入った筒を背中に背負い、そのまま入り口をでて木と葉っぱでできた建具を戻す。
この半年の間繰り返してきた朝の出発前の作業だ。
外はいつもと変わらず朝日の光が差していて、森の方からは風で木々が揺れる音や鳥の鳴き声などが聞こえる。
森に入ってからは体感時間で30分くらい歩いただろうか昨日見た景色とまったく同じ景色の視界に広がってくる。
ドクン。
ドクン。
(まったく同じ景色)
ドクドク。
ドクドク。
友也の心臓の脈打つ鼓動がどんどん激しくなってくる。
いつもより慎重にゆっくりとゴブリン達と昨日遭遇した場所へ、、弓を左手に構え矢を右手にそして矢を弦にかけていつでもひける状態にしておく、、
ゴブリンと遭遇した場所には円形状に草が剥ぎ取られ、土肌が露出した後がハッキリと残っていた。
「こ、、これ」
「なんだこれ、、?」
すると不意に後ろ方から声が聞こえてきた。