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  作者: K
15/26

自殺

翌日、江藤医師の自殺の詳細が明らかになった。

丁度、巧の着替えを持ってきたときに、喪服姿の白川が、病室にたち寄ったのだ。

「病院に喪服なんて、縁起が悪いだろ」

文句を言う巧をスルーして、白川は、爽に軽く手をあげて挨拶し、ベッドの下から椅子を引っ張り出して、巧の前にどっかと座った。

「江藤の通夜に行ってきた。」

そして、電話で約束していた詳細を語りはじめた。

江藤は、若くして結婚したが、妻とは一年で離婚している。

子どもは男の子が一人いたが、江藤は、息子を手放さなかった。

子どもが幼い頃は、江藤の両親も健在で、息子は優等生のボンボンとして育つ。

しかし、その両親も相次いで他界し、大学入試を4度失敗した自慢の息子が、ニート状態になった。

江藤は、毎日、息子を罵っていたらしい。

ついに息子が切れて、家庭内で暴れだしたのが今月の初め。

江藤は、たまりかねて、息子を殺し、自らも自宅の屋上から飛び降りて自殺したのだ。

彼の自宅は、悲惨な状態であったという。

「相変わらずの情報網だな。真由ちゃん経由?」

「おう。ナースはやたら情報通だからね。」

どうやら、白川は、江藤の病院のナースと付き合っているらしい。

普通なら知りえないプライベートもナースの恰好の噂のネタになっているようだ。

「ただ…」

と白川の話は続く。

「自殺の線ってのは、流れ的に不自然じゃないんだけど、どうやら、背中から落ちてるらしんだよね。」

白川は、腕組みしながら首を傾げる。

「背中?」

「自殺する奴って、まあ、頭からなんだけど、前向きに飛んで落ちるのが、普通じゃね?。最後の最後で、怖かったのかもしれないけど、後ろ向きだったらしいんだよね。それと、声を聞いた奴がいる。」

「声?」

「叫び声のようなものを聞いた奴が近所に何人かいてさ。自殺するときに叫ぶ奴っているのかな?」

「気合?」

「さあ。」

「な、もんで、一応って言いながら、刑事がうちにも来たぞ。それでさ」

と白川が含み笑いする。

「お前、一番最初に江藤のところに行かされて帰ってきたとき、江藤のこと、ぶっ殺すって、薬局で、騒いだろ? それを、聞いてた患者さんが、多分チクったんだぜ。」

「え?」

「薬剤師の志筑さんはいますか? って名指しだったぞ。」

「俺が容疑者?」

兄貴は、何か楽しそうに笑ってる。

「ぶっ殺すと言っていたのを聞いた人がいるってさ。平さんが、足骨折して入院してるって説明聞いて、納得してたけど、ここにも来るかもしれないな。」

「わお、事情聴取か、一回されてみたかった。」

楽しそうな兄貴を睨んで、爽は、白川に聞いてみる。

「他の人は、事情聴取されなかったのですか?」

「いや、ひと通り、みんなから。」

「斧田さんも?」

「斧田さん?」

白川は、不思議そうに爽を見る。

そして、巧を見て、思い出すように言った。

「そういや、斧田さんにも、殺人動機はあるな。こいつが担当になる前は、ターゲットだったから。」

でも、と、白川は、僕に、安心するように言った。

「多分、自殺で片はつくと思うよ。」



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