おくすりの国その2
真奈美ちゃんが、食べられる!
だけど、声が出ません。
そして、動けません。
とうとう、あたり一面、真っ暗になりました。
ようやく、輝君は動けるようになりました。
だけど、周りは真っ暗、真奈美ちゃんもいません。
「真奈美ちゃん!」
輝君の声が、くらい世界に響きます。
輝君は、かなしくなりました。
そして、泣き出しました。
「輝君!」
輝君の足元から、声がします。
輝君は下を見ました。
そこには、フーちゃんがいます!
「フーちゃん!」
輝君がフーちゃんを、抱きかかえようとします。
だけどフーちゃんは、それから逃げました。
「どうしたの?フーちゃん」
輝君は、フーちゃんを見ます。
「輝君、今までありがとう。実は僕、真奈美ちゃんをお迎えに来たんだ。」
フーちゃんは、言いました。
「真奈美ちゃんは、違う所で幸せに暮らすの!」
フーちゃんは言い続けます。
「そこには、真奈美ちゃんのママやパパはいるの?」
輝君は、聞きました。
「いないよ!でも、真奈美ちゃんは幸せになるよ!」
「ならない、家族がいないなんて………ならないよ!」
輝君は、叫びます。
フーちゃんは、その叫びを体で受け止めました。
「真奈美ちゃんは、良い子だ!間違いなく良い子だ、だから、輝君は生きろ!生き続けろ!それが、真奈美ちゃんの願いだから。」
フーちゃんはそう言うと、向こうを差します。
「あそこにむかって、歩きなよ。そこに、お母さんとお父さんが待っているから……」
フーちゃんは、言いました。
ん?
何か聞こえます。
「あ………ん」
「あ……ら、く…」
それは、声です。
輝君の大好きな……
「あきら……くん!」
お母さんのそして、みんなの声です!
「お、お母さん」
輝君は、笑いました。
心から笑いました。
あっ!
輝君は、左のお胸に心地よいぬくもりを感じます。
どうやら、輝君の左胸にぬくもりが、付いたようです。
「さっ、お母さんを悲しくさせないで!」
フーちゃんは、そう言い声のほうを見ています。
「うん、フーちゃん、帰るよ。みんなの所へ!」
「さようなら、最後にいい?」
フーちゃんは、輝君を見ます。
「僕ね、フーちゃんって名前じゃないんだよ」
「えっ?」
「僕、『死神』って名前なんだ。」
そう言うと、フーちゃん……いいえ、死神はまた声のほうを向き、輝君に「早く帰れ!」と命令しました。
輝君も、命令にすなおに聞き声のところまで、走っていきました。
最終 真奈美ちゃんは?
輝君はなんだかいっぱい機械があるお部屋で、目が覚めました。
ここはどこ?
首を小さく横に動かしていると、メイドさんがそれに気が付きました。
「輝君!」
おどろきと、よろこびの声は、お部屋いっぱいに広がりました。
みんなが、輝君に集まります。
みんなが、よろこびます。
そんなよろこびの中、輝君は一言
「真奈美ちゃんは?」
と、言いました。
みんな、静かになります。
メイドさんの一人が、泣いています。
そっか……
真奈美ちゃんは、フーちゃんと違う所へ行ってしまったんだ……と、わかりました。
すなおに、よろこべない輝君でした。
その後に、お母さんとお父さんが泣きながら喜びながら、お部屋に入っていきました。
お母さん、お父さんはみんなに、お辞儀をしています。
あの日のお父さんが、真奈美ちゃんのパパにしていたように……
「ごめんね、真奈美ちゃん」
輝君の声に、お母さんとお父さんは、動かなくなりました。
お父さんは、お母さんの肩をだきしめています。
お母さんの泣き声が、お部屋いっぱいに聞きます。
輝君は、心を真奈美ちゃんからもらったのです。
そして、真奈美ちゃんは……
お部屋の中の機械は、むなしく輝君のお胸の波を作っていました。