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こんな夢を観た

こんな夢を観た「浜辺で宝探し」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/08/29

「早朝の浜辺に行かね?」いきなりやって来て、そんなことを言う。まあ、桑田孝夫らしいけれど。

「そんなに早く行っても、水が冷たいだけだよ。人は少なくていいだろうけど」わたしは言った。

「そうじゃねえよ、泳ぎに行くんじゃねえんだって」と桑田。「砂浜ってのはな、昼間の客が落としていった硬貨やら貴金属なんかが、けっこう落ちてるんだ。そういうのを拾いに行こうって言ってんの」


「落ちてる物は届けなくっちゃね」

「ばかっ、ボランティアじゃねえ。小遣い稼ぎだ」口を尖らせてムキになる。

「そういうの、良くないんじゃないかなぁ……」わたしは渋った。

「いつだったか、金の延べ棒が見つかったことがあってな。落とし主が現れなかったんで、時価4千万円がそっくり、自分のものになった、てなニュースを見たな」 

「へー。あのう、ちょっと行ってみようか、浜辺。ほら、ガラスの破片とか、そういうの落ちてたら危ないから、片づけついでに」どうせ、暇をもてあましていたところである。それに、海岸のゴミ拾いがてら、もしかしたら4千万円が手に入るかもしれない。


 浜辺に来てみると、すでに桑田が何やら棒のようなもので砂の上を探っていた。

「掃き掃除でもしてるの?」わたしが聞くと、

「ばかっ、これは金属探知機だ」と答える。

「今日で2回目だよ、『ばか』って言うの」ムッとして言い返した。

「いいから、お前もこれで砂浜を探せ」桑田は、もう1本の金属探知機をわたしに渡す。

「どうやって使うの、これ?」

「ほら、そこのスイッチを入れて、棒の先の円盤で地面の少し上を浮かせながら――」

「こう?」辺りを、掃除機でもかけるように滑らせてみる。とたんに、ビーッと音が鳴り響く。

「おっ、さっそく見つけたな。今、鳴ったところを掘って見ろよ」

 言われた通り砂を掘り返すと、10円玉が出てきた。「すごーいっ。こんな小さな物まで見つけちゃうんだ」

「なっ、面白えだろ」桑田はニカッと笑った。


 小一時間ばかり探し回り、桑田とわたしとで、合わせて1,800円ほど集まった。10円がほとんどで、50円玉、100円玉の順に枚数が多い。

「時給900円といったところか」桑田は額の汗を拭いながら言った。

「悪くはないと思うけどね」とわたし。とは言うものの、反応のほとんどは空き缶かビールの王冠だったりする。期待をした分、精神的な疲労は大きい。

「ここいらで、ドカーンと一発、すげえもんが出ねえかなあ」桑田はぼやくが、それを虫のいい話、と笑う気にはなれなかった。4千万円の金塊、とは言わないまでも、せめて金貨の1枚でも見つからないかなぁ、と思っている。


 桑田の金属探知機が、ビビーッと鋭く音を立てた。

「むっ、こりゃでかいぞっ!」桑田は、探知機を放り捨て、両手で浜をざくざくと掘り始める。「うわっ、なんだこりゃ。金歯付きの入れ歯じゃねえかっ」

 どこかのおじいさんかおばあさんが、砂浜に忘れていってそのままになったのだろう。

 ビビッ! ビービーッ!

 わたしの金属探知機も激しく反応した。手許のメーターは、すでに振り切ってしまっている。

「桑田、ちょっと来てっ。何だかすごいんだ」

「おうっ」入れ歯を片手に、桑田が走ってきた。

 いったい、何が埋まっているというのだろう。


「この辺り。もしかしたら、金の延べ棒だったりして」あんまりドキドキしすぎて、目眩がしそうだった。 

「よし、一緒に掘るぞっ」

 桑田とわたしは、向かい合ってしゃがみ、慎重に掘り進める。

 30センチほど掘ったところで、「宝物」が現れた。

「金……だね」わたしは言う。

「ああ、間違いない。確かに金……だ」桑田がうなずく。

 銀なら5枚、金なら1枚の、あのくちばしだった。

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