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転性剣士商売  作者: 明之 想
第一章
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第七話  勇気

 村に来たらやりたいことがあったので、一度ケヘルさんとは別れ、一時間後に厩に集合することにしました。


 さてと、まずは少しだけ散歩を。


 土塁や柵といった防御設備は無かったけれど、村の中はそれなりに整っている。村を横切る大通りも砂地のままきれいに整備され、歩きやすい。通り沿いには、各種商店が並び、訪れる者にとっては便利なつくりだ。田舎だと聞いていたのだけど、訪れる者も多いんだろうね。


 ぶらぶらと歩きながら、通りにいる人に挨拶すると笑顔で返してくれる。

 亜人種の方にも話しかけたけど、愛想よく答えてくれましたね。

 ホント、この村に差別はなさそうだ。

 なかなか居心地がいい。


 それでですね。

 うん。

 なんといっても、亜人種の方たちですよ。


 いましたよ!

 エルフっぽい人もいた!

 ドワーフっぽい人ももちろん!


 感動的だ!

 本当に会えるなんて。

 この感情、口では表現しきれないよね!


 当たり前のことだけど、普通に通りを歩いていました。

 興奮したなぁ。

 最初なんか、ケヘルさんが話している横で、平静を装うのが大変だったんだから。


 噂には聞いていたけど、エルフって美男美女揃いなんですね。

 いやぁ、目の保養にもなりました。


 この世界に来てから、ケヘルさん以外の人に会ったのも初めてなんだよなぁ。


 それが、エルフ、亜人種!

 これは興奮するでしょ!

 男なら誰もが振り向きたくなる美女エルフ!

 最高です!


 結構な露出をしている美人もいましたよ。

 これは違う意味で興奮するね。

 さっき挨拶したエルフ美人さんなんて、下は普通だったけど、上はほとんどビキニ状態ですよ。

 しかもボリュームあり!


 目が釘づけ!


 いや、もちろん、釘づけにならないようにはしたけどね。

 こんなところでセクハラって言われたらもう・・・。


 思わずチラっと。

 そこは仕方ないよね。


 久々の興奮・・・?

 うん?

 あれ?

 思ったほど興奮していないな!?


 14歳男性。10日以上何もなし。


 なのに、あの姿を見て興奮しない。

 いや、興奮していないわけじゃないか。

 見るべきところは、しっかりと見つめてしまうし。

 チラ見するし。

 好物だし・・・。

 なんか違うなぁ。うまく言えない。


 うーん・・・。

 やっぱり、まだ本調子じゃないのかもしれないね。

 まあ、まあ、とりあえず、この件は置いときましょ。



 そんな感じで、一人歩きをしながら、あっちを見たりこっちを見たりと、お上りさん状態だったんですが、1時間しか時間がない。

 もっとゆっくり見て回りたいけど、次の機会にしようか。



 さてと、武器屋に行きたかったんだよね。

 これだけ剣が好きなのだから、武器屋には興味津々てなものです。


 武器屋を見つけ、入ってみると。


 まさにファンタジックな世界!


 いやぁ~~、にやけてしまう。

 エルフを見かけた時にも、思わず顔が緩んでしまったけど。

 うーん、男のロマンだな。

 多種多様な武器が揃っていること!

 剣に槍に弓に、なんだか良く解らないものまで!


 しばし、鑑賞しました。

 

 今の所持金でも買えるものは結構あるな。


 ちなみに、この国の物価、貨幣価値もケヘルさんに教えてもらったわけですが、その話から判断するに、おおよそ1セルクが100円に相当すると考えて問題なさそうかな。


 今の俺の所持金は5100セルク。

 51万円持っていることになる。

 少なくない金額だ。

 前世の俺の2ケ月分の給料くらいはある。

 とりあえず、1ケ月は働かなくても生きていけるな。

 節約すれば、2、3ケ月可能かも。


 だからといって、無駄遣いするつもりもない。

 そもそも武器を買いに来たわけではないし。

 ちょっと見たかったのは事実だけど。


「すみません。剣の整備道具ってありますか?」


 刀の手入れのための道具を揃えておきたかったのですよ。

 前世の鞄の中にも少し用具は入っていたのだけど、手に入る時に入手しておきたい。特に、錆止めのための油。これは消耗品なので是非欲しいな。あとは、研磨用の砥石をどうするか。


 日本刀の研磨は包丁のように誰にでも簡単にできるものではないし、また、それなりの砥石も必要となる。俺は師匠に教えられていたので、多少なら研磨もできる。しかし、砥石が無いんだよなぁ。日本刀専用じゃなくてもいいから、使えそうなものが見つかればいいんだけど。


 刀の手入れって気を遣うよね。

 特に、虎徹なんて名刀。

 下手な扱いできません。

 俺の虎徹が異世界規格になっていて、整備がしやすいなんてないかな?

 前世の日本刀とは違って、随分と丈夫な感じがするんだけどねぇ。


 この異世界に日本刀のようなものが存在するかどうかは知らないけれど、確実に剣は存在する。ケヘルさんも持っているし、店でも売られている。だから、手入れ用具もあるでしょう。


 売ってるよね?



 結果。

 数種類の砥石を買うことができた。

 一応、剣専用砥石だ。

 油も買うことができた。

 他にも諸々整備用具を。

 値段も高くはなかったし、上々の買い物といえるかな。


 ちなみに、日本刀らしきものは置いてなかった。

 大きな町や都市に行けば、あるのかもしれないね。

 刀については、ケヘルさんにも訊いていないから、実際のところは分からないか。



「さあ、そろそろ厩に行くか」

 

 手入れ用具を次元袋に仕舞って厩に向かう俺。

 上機嫌です!






「どうやら日が暮れる前には家に着けそうだ」


 帰り道の間中、ケヘルさんはずっと浮かない顔をしていた。

 どうやら、村に行けば俺の情報が何か見つかるものだと思っていたらしい。

 サニア村には縁が無いように思うと俺は言ってたんだけどね。

 常識的に考えて、サニア村を経由せずに俺があんな崖下に倒れていたはずはないと思っていたようだ。

 往復の山道から考えると、俺が倒れていたという崖下は、確かにサニア村を無視しては考えられない場所だった。いきなり、あの崖下に現れるなんて普通はないかな。


「やはり夜道は危険なのですか?」


 重い空気を破るには会話が一番。

 話しかけてくれてよかった。


「この辺りは、昼も強力な魔物が出るから安全ではないが、やはり夜の方が危険度は増すな」


「そういうことでしたら、明るいうちに帰れてよかったです」


 会話が途切れる。

 もう少し話したい。


「ですが、小さい結界石を携帯されているのですよね。それなら夜でも安全ではないのですか?」


 往路に続いて、帰りの道中も魔物に遭遇していない。

 姿を見かけることもなかった。

 危機感が薄れるなぁ。


「あくまで携帯用の小石だ。ある程度の力を持った魔物には効かない」


 ケヘルさん、用心深いのかな?


「その割には、魔物を見かけませんね」


「幸運なのだろうな」


 そこで、急に馬車が止まった。

 ケヘルさんが止めたのだけど。


「?」


「悪いが小用だ。少し待っていてもらえるか」


 しょうよう・・・?

 あぁ、小のトイレのことね。


「わかりました」


 ケヘルさんは、山道からそれて茂みの奥の方に入って行く。

 そんな奥まで行かなくても。

 恥ずかしがり屋さんですねぇ。

 

 しかし、この山道。

 魔物にも遭わないけど、人にも遭わないのな。

 もしケヘルさんに助けてもらっていなかったら、意識を回復した俺はずっとこの山中で彷徨っていたかも。


 ぞっとしないな!

 などと考えていると。


「&%$#・・・!!」


 なっ、なんだ!?

 ケヘルさんの声か?


 そこに、獣の咆哮!!


 これは・・・!?


 まずいぞ!!


 急いで駆け付ける。

 茂みなど無視して、ひたすら突っ走る。

 次元袋から虎徹を取り出しながら。


 急行すると。


 そこには、予想通りというか予想以上というか。

 

 魔物がいた!!

 

 初めて見た。


 魔物だ!!


 茂みの奥に入ると、そこは少し開けており、川というにはあまりにも小さい水場が。

 そこに対峙する2つの影。光の加減で見辛くはあるが、間違いない。

 ケヘルさんと魔物だ。


 駆け付けた俺の脚が止まる。

 恐怖ではない、驚き・・・。

 いや、恐怖か。

 

 見たことも無い生き物だった。

 大きさは大型犬くらい、それが蜥蜴のような体と翼を持っている。

 前世で言うと、小型恐竜の有翼型。

 そうだ、コモドドラゴンに似ている。

 コモドドラゴンに鋭い牙と翼を付け足したような造形だ。

 体高も・・・、高いな。


 その眼には、爬虫類にはありえない知性が宿っていた。


 現実とは思えない。


 魔物が存在することは承知していたし、近場に生息する魔物の話も聞いてはいた。

 でも、こんな魔物がこの辺りに出るとは聞いていない。


 助けに来たのに、足が出ない。

 足元がふらつく。


 そんな俺に一瞥しただけで、コモドは再びケヘルさんの方へと身を向ける。



「来るな。逃げろ!!」


 ケヘルさん・・・。

 背中に傷を負っている!

 背後からやられたのか?


 再びコモドの咆哮!


「っ!?」


 咆哮を上げるやいなや。

 コモドの脚が地を蹴り、鋭い牙を見せつける様に、その顎がケヘルさんに迫る。


 あっ、危ない!!


 声を出すこともできない。

 恐怖が喉を締め付ける。


 間一髪のところで直撃を避けたケヘルさんだが、牙が肩にかすったか。

 服が裂けている。

 背中からの出血も尋常ではない。


「早く逃げろ・・・」


 ケヘルさんの声に余裕はない。

 再び睨み合ったまま対峙する。


「・・・」


 迷っている場合ではなかった。

 恐怖に負けている場合ではなかった。


 何のために鍛錬をしてきた。

 何のために剣を学んできたんだ。

 確かに、魔物を倒すためにやってきたわけじゃない。

 でも、こんな状況で怯んでどうする。


 俺は心を鍛えてきたんだ!!



 一つだけ深呼吸。

 瞬間、気を練る。


 足が出た。

 よし、行ける!


「うぉーーー!!」


 今できる最速。

 一瞬で間合いに入る。

 コモドは動かない。


 抜刀!!


 気を纏わせ。

 そして右上から左下に袈裟斬り!!


「くっ!!」


 大した抵抗もなく振り抜けた。


 コモドと視線が絡み合う。

 コモドの目に浮かんでいるのは驚愕?


 瞬間。


 真っ二つに割れた・・・。



「やった・・・」










ここまで読んで下さった皆様。

ありがとうございます。


やっと動きが出せました!




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