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転性剣士商売  作者: 明之 想
第一章
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第三話  状態確認

 

 さてと、ここが異世界かどうかは、まあひとまずは置いといて。

 現状解っていることは。

 

 ここは、見知らぬ世界にあるあの老人の家の一室。

 俺は倒れていたところを助けられ、ここで休んでいたということ。


 そして、俺は剣が大好き高坂颯人!


 ・・・。


 さて、分析を続けよう。


 俺は本当に俺だよな。

 自分の顔はどうなっているんだ。


 この部屋、鏡は無いな。

 窓に顔は映るかな?


 窓に自分の顔を映してみる・・・。

 この明るさの中じゃあ、判りにくいけど、まあ、なんとなく俺だな。


「っ!」


 なんだ?

 背後に感じた名指し難い気配。

 それを追うように目を向けるが。


「・・・」


 何もない・・・。

 誰もいない・・・よな。

 数秒凝視するも、結果は同じ。

 

「うーん、やっぱり疲れているのかな」


 そうなんだろうな・・・。



 では、まあ、そういうことで。

現状分析の続きをと。

 えーっと。


「・・・」


 何すればいいんだ。

 

 うーーん、どうしよう。


 これがゲームなら、ステータスとか見ることができるんだろうけど。

 できないかな?

 違う世界に来てるなら、できるんじゃあ。

 恩恵とか貰っているみたいだし。


 まあ、もし可能だとしても、どうすればいいか分からないけど・・・。

 よし!

 駄目もとで試してみるか。


 いや、決してイタくないからね!

 あっ、あくまで確認だから。


「ステータス。 ステータス表示・・・」


 さすがに出ないね。まっ、どこに出るかも分かんないか。


 でも、まあ。

 ちょっと待て!

 こういうのって、信じることが大事なのでは。

 信じて強く念じたりする必要がある。

 そうすれば可能になる、そんな感じじゃないの。


 よし、試してみよう。

 いや、だから、イタくないからね。


 俺は気を練って、それから念じてみた。


「ステータス表示」


「・・・!?」


 マジか!

 まじか!

 本気か!!


 出ちゃったよ。

 何だかそれらしいもの。


 どこにって?

 なんとなく脳内イメージ的にね。

 何というか、目に見えている訳ではないのだけど、見えているような感覚。脳に直接訴えかけてくるような感覚と言ったらいいのかな。とにかく見えた。


 体力と、・・・魔力!?


 魔力がある!

 やはり、ここは異世界なのか。少なくとも俺の知る限り現代世界では魔力なんてないのだから。

 魔法なんて使えちゃうのか。

 凄いぞ!!


 と、とりあえず落ち着こう。


 ステータスの確認が先だ。


 体力と魔力がどのように知覚できているのかというと。

 頭の中に体力と魔力いうイメージとともに、それがいっぱいに詰まっている感覚があるのだ。実際に体力が100などと見えるわけではなくて、なんとも言葉にしづらいのだけど、例えばコップに水が入っているように、俺の体力と魔力という器にそれが満たされているイメージがあるという感じ。もしくは、ゲージがいっぱいに溜まっているというイメージだろうか。


 この体力と魔力の量の多寡は判別できないが、今は満タンみたいだね。

 たっぷり寝たのだから、それはそうか。


 ステータス表示の感覚はまだ残っている。

 さらに他の何かがイメージできるみたいだ。


 出てきた。


 うーーん、何だろう。

 特殊能力??

 そんな知覚とともに、次のイメージが脳内に広がる。

 

  自動翻訳

  鑑定

  2倍速


「これは・・・!?」


 独り言が出てしまう。

 すごいな。

 やはり異世界。

 これって誰もが持ってる能力なのかな?

 それとも、恩恵!?


 文字通りの力なのか。

 とりあえず試してみよう。


 と、その前に。

 まだ、ステータスに残りがある感覚が。

 

 イメージが脳内に。


  魔法


  水魔法1

  火魔法1

  治癒魔法1



「!?」


 やっぱり魔法使えるのか!

 これは、すごい。

 凄いぞ!!



 もちろん、それからは特殊能力と魔法の実践、というかお試しをしましたよ。


 鑑定は物の性質を見抜く力があるようで、部屋にあったテーブルに使ってみると、材質や価値などといった諸情報が頭に浮かんできた。

 2倍速はそのまんま。スピードが2倍になるみたい。部屋の中で試してはみたけど、相対的な判断が難しく、多分2倍になっているのだろうなという感じ。

 自動翻訳は、あの老人が部屋に戻って来た時に判断できるだろうけど、多分この地方の言葉が使えるでしょ。


 この3つの特殊能力は、使った後に体力と魔力が減るようだ。

 翻訳と鑑定では、少しだけ魔力が。2倍速では、魔力と体力ともそれなりに減少するのを感じた。

 使える力を考えたら、そんな減少など些細なこと。


 うん?

 それほどの力でもないのかな?

 まだ判らないね。


 魔法に関しては、室内でもあるので控えめに試した。

 窓から外に向けて水と火の魔法を使ってみると、コップ一杯くらいの水とライターの火程度の炎が表出した。

 ともに威力はあまり無かったけど、魔法が使えるってことに興奮したね。

 治癒魔法も試してみたけど、どこも悪いところがないのか、全く実感がなかった。


 魔法は使うと、当然のごとく魔力が減るようだ。

 現状の3つの魔法での魔力減少は多くはないのだけど、それは効果や威力の問題なのかな?



 ホントに異世界にやって来たのかもしれない。

 ステータスの確認、特殊能力と魔法の実践の後、しみじみと思ってしまった。

 どう考えても、現代社会常識を大きく逸脱しているもんなぁ。

 それは、まあね、無理やり考えることもできるよ。

 現代日本でも、実はこういった特別な力が存在していて、それを行使できる人たちもいる。単に自分はそういう能力を持っていない多数派の一人だったと。


 あれっ、この考えアリかも!


 うーん、そんな訳ないか・・・。

・・・多分。


 とにかく、帰納的思考をすればするほど異世界感が湧いてくる。


 ここは異世界なんだろうなぁ・・・。


 などと、感慨にふけっていると、ノックの音とともに老人が入って来た。



「タベルモノ ツクッタ」


 英語もどきだ。翻訳の効果か、さっきとは全く違うように感じる。

 翻訳の力で、俺が完璧に英語を理解できるようになっているからなのかな。

 不思議な感覚だ。


「ありがとうございます」


 これは英語なのか、この地方の言葉なのか?

 自然に出てきた言葉に少し戸惑う。

 多分この地方の言葉だ。


「おぉ!?  標準語が使えるのか?」


 やはりこの地方の言葉だったか。


「はい。先ほどは気が動転していて、つい違う言語を話してしまいました」


 そういうことにしておこう。


「それは助かる。私は神聖言語をうまく使えないのでね」


 英語もどきの正体は神聖言語という言語なのか。

 しかし、英語に近かったよな。不思議だ。


「そうでしたか」


 さて、まずは、きちんと感謝の意を表明せねば。

 さっきもお礼は言ったけど、この言語でもう一度。


「あなたに助けていただいたようで、本当にありがとうございました。その上、この様に世話していただき感謝の言葉もございません」

 

 微妙な表情をしているぞ。何か変なこと言ったか?


「丁寧な言葉使いだ。若いのに立派だな」


 俺って若いのか?

 それは、まあ、ご老人に比べたら若いけどね。

 ちょっと堅苦しい言葉遣いだったかな。


「助けていただいたのです。言葉にも敬意を込めたいですから」


「ありがたいことだが、そんなに気を遣わんでもよいよ」


「はあ」


「それより、まずは食事にしなさい。話はあとでいいのだから」



 こうして、俺は食事をありがたくいただきました。

 味はというと・・・。

 現代日本の食に慣れている俺にとっては、非常に美味というわけではなかったけれど、それなりに美味しくいただけたかな。


 その後、俺を助けた経緯、今の俺の状態などの話をしてくれました。


 どうやら、村に買い物に出かけた帰り道、倒れていた俺と遭遇したらしい。ご老人の見立てによると、俺は崖から落ちたのではないのかとのこと。老人の家は村からは離れた山中にあるらしく、その山道を行く途中の崖の下で俺を見つけたからだ。

 ただ、崖から落ちたにしては大した傷もなく、身体にも問題はないと。

 俺もさっきステータス確認しているから、それは間違いないね。


 あとは、この場所の話。

 この家は、ゼルディア大陸にあるマインツ帝国の南端にあるサニア村のさらに南外れの山中にあるらしい。

 ・・・。

 さっぱり解らんね。

 聞いたことも無い地名ばかりだ。

 そんな地名を一度聞いて覚えている自分を褒めてあげたいくらいだ。

 とにかく、これは俺の知っている地球ではないね。

 異世界決定です。

 まあ、予想通りですよ。



 俺の話もした。

 もちろん、違う世界から来たなどと言ったら、どういう目で見られるのか分からない。

 ここは記憶障害を起こしていることにしましたよ。

 自分の名前は分かるのだけど、それ以外は何も分からない。どこから来て、なぜこの近くの山中に倒れていたのかなどは見当もつかないと。

 我ながら微妙な話だとは思ったけど、まあ、なんとか納得はしてくれたみたいだ。


 そうそう、老人の名はケヘルさんというらしい。

 わけあって、山中で一人暮らしをしているとのこと。

 年齢は51歳。まだ老人という年齢でもないか。

 よく見れば、確かに老齢というほどではないよな。




 そんな話をしばらくした後。

 ケヘルさんは俺の体調を気遣ってくれ、今日はもう休むようにと言い残して部屋から出ていった。詳しい話は、明日にでもしてくれるそうだ。


 今は何時なんだろう?

 夕方っぽいけど、夜だったりするのかな。

 まだ眠るには早いような気もするし。だいたい俺は24時間以上も寝ていたのだからとも思ったんだけど、なぜだか眠気が襲ってきた。


 色々と試したいことはあったけど、考えることも沢山あるけど、まあ明日でいいや。

 

 そして、異世界生活激動の一日は数時間の活動だけで終わるのでした。


 そういえば自宅に洗濯物干しっぱなしだったなぁ、でも部屋干しだからいいか・・・。

 なんて、どうでもよいことを考えながら眠りにつく俺は、まだ異世界に居る実感なんてなかったのだろう。



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