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転性剣士商売  作者: 明之 想
第一章
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第十話  エイドス



 さて、もっとも訊きたかったこと。


「それで、実際に僕は一人暮らしできるのでしょうか?」


「ハヤトの腕なら問題はあるまい」


 自信たっぷりに答えてくれる。

 でも、腕では無くてでしてね。


「いえ、あの・・・。生活の糧という点で・・・」


「ああ、仕事のことか」


 そうです。

 未成年14歳、働き口ありますか?


「はい。僕を雇ってくれるところがあるかどうか?」


 ケヘルさん、笑ってるぞ。

 何かおかしいこと言ったか?


「だから、ハヤトの腕なら問題ない」


「??」


「ギルドに所属して依頼をこなしていけば、生活費を稼ぐことなどは造作もあるまい。もちろん、ハヤトが他にしたい仕事があれば別だが」


 この世界にギルドがあるという話は聞いている。

 ギルド、組合、座。国、地方によって呼び方に違いはあるが、要は同業者の権利団体だ。前世社会と同じだな。

 この世界には、小国を上回る程の権力を持つギルドもあるらしい。

 どこに行っても強いのは、やっぱりお金ですか。


「どのギルドでしょうか?」


「冒険者ギルドだ」


 当然、というような顔だ。

 当然なのか?


「叡竜を一撃で倒す腕だ。たいていの依頼ならば問題なかろう」


 冒険者ギルドか。

 本当に異世界じみてきたな。

 もともと異世界だけどね。


 確かに、やって行けるような気もするな。

 ケヘルさんが、これだけ俺の腕を褒めてくれる。

 話半分に聞いても、それなりには強いんだろうな。


「では、当面はその方針で行きたいと思います」


 しかし、俺の自動翻訳機能。前世世界の常識に照らし合わせて翻訳しているのだろうけど、たまにカタカナ語が入ったり、かと思えば固い言い回しだったり。基準は何なのだろう?


 もしかして、俺が希望している語を選択しているとか。

 だったら、イタいな。

 組合の前に、ギルドって訳されるなんてね。

 それに、冒険者!?

 他の翻訳なかったのかよ。

 どう考えても、ゲームや本の中の単語でしょ。

 かなりイタい翻訳だ。


 異世界だから、いいけどさ。


 でも、もう25歳なのに・・・。



 いや、いや、まあ、そんなことより、ギルドの話だ。

 ギルド、そう冒険者ギルドだ。

 俺は恥ずかしくないぞ!


「ギルドに入会する際の問題点については何かありますか?」


「通常は、成年となる15歳以降でないと、ギルド員としての正入会は認められない。しかし、その者の技量次第では15歳未満であっても、仮登録を受けて依頼を遂行することができる。報酬はいくぶん少なくなるがな」


 青田買いだな。

 俺の腕で大丈夫か。

 大丈夫だと思いたい。


「ハヤトの場合は、14歳だから仮登録になるな。まあ、問題なく仮登録されるだろうが、一応私の方から推薦の手紙も書いておこう」


 ケヘルさん、やっぱり大物?

 伝手があるのか。

 これはありがたいよね。


「ありがとうございます」


「もうすぐ15歳になる。それまでは仮会員として頑張ることだ」


「はい。推薦に恥じないよう頑張ります!」


 この辺りの国の成年は15歳から。15歳になって初めて、色々な権利と義務が発生するのだ。年齢は、新年1月に一括で歳を重ねることになっている。それゆえ、誕生日を祝う習慣は基本的にはない。身分の高い者や金持ちの中には、祝う者もいるらしいのだが。


「レントにあるギルドの支部に、私の推薦状を持って訪ねるとよい。そこで、エイドスを提示して、内容に問題なければ仮登録が認められる」


 エイドス??

 何だそれ?


「エイドス提示の前に手紙を渡しておけば、滞りなく事は進もう」


 何を提示するのか解らん?

 翻訳はどうなってる?

 前世社会になかった概念なのか。


「あのぅ・・・。エイドスって何ですか?」


「!?」


 言葉を失ってるよ。

 エイドスって、そんな超常識なんですか?


「エイドスを知らないのか・・・。そんなことが!?」


 まずいのか?


「この大陸の者なら、幼い子供でも知っておるし使うこともできる筈なのだが・・・」


「いや、あの、記憶を失っているのかもしれません」


 またまた苦しい言い訳。

 でも、なんとか通じたかな。


 ということで、教えてもらいました。

 久々に前世社会を軽く超えていく異世界設定。

 

 なんでも、この世界では命あるもの全てにエド(多分、魂や霊魂みたいなモノ)が備わっているらしい。亡くなるということは身体からエドが抜け去ることを意味すると。

 エドには、その者が経験した事を含めその者の情報全てが記されている。その情報一つ一つが、それぞれエドの欠片に記されているそうだ。そして、このエドの欠片をエイドスと呼ぶらしい。

当然、エイドスは数多く存在しているのだが、一般人が通常閲覧できるのは、その中でも自分の年齢、性、種族と名前、階級、所属の六つが記された一片のエイドスだけとのこと。

 普段エイドスと口に出す際は、このエイドスを意味している。


 ちなみに階級とは、王、公爵などの支配階級から奴隷までの、そんな身分階級。

 所属とは、何々ギルド所属とか、そんな感じらしい。



 エイドスは、略式詠唱で誰でも簡単に脳内にイメージできる。

それを表示させたい場所に映写するイメージを送れば表示できるらしい。

 例えば、掌に送るとイメージすることで掌に表示されるということだね。


 年齢、性、種族は先天的にエイドスに刻まれているらしく、変更不可。名前、階級、所属は後天的なもので、通常は人為的に刻まれるものらしい。ものによっては自然とエイドスに刻まれる場合もあるということだ。


 あれか、伯爵という位に相応しい行動をとっていると、エイドスに伯爵という文字が自然に刻まれるとか。


 違うのかな?

 ホントだとしたら、不思議設定だよな。




 エイドスねぇ・・・。

 何となく分かったような気がする。


 うーん、こんな感じかなぁ。


 生物はエドというハードディスクを持っていて、そこには様々な個人情報が保存されているファイルが多数存在し、それをエイドスと呼ぶと。一部のエイドスは自分で見ることも可能だし、他人に表示することもできると。



 ちなみに、その六つを表示する一般的エイドス以外のエイドスは閲覧が困難なのだが、高等魔法を駆使して閲覧できる者もいるとのこと。



 と、詳しく講義してもらったんだけど。

 ・・・。

 ステータス表示と同じでは?


 頭の中にステータスを表示してみる。


  体力、魔力


  特殊能力-自動翻訳、鑑定、2倍速


  魔法-水魔法1、火魔法1、治癒魔法1


 これを確認する時って、ページをめくるようなイメージがあるな。

 三種類のエイドスを見ているってことかな。


 うん?

 これって凄いことかも!?

 基本の六情報以外のものが確認できているよね?

 通常見ることができないものを見れるということか。


 通常、見ることのできる個人情報は・・・。

 当然、確認できるな。


 もう1ページめくって。


  高坂颯人 14歳  人間種


 これが一般的に言うところのエイドスだね。

 年齢と種族は前に見た時にもあったけど、その時には名前がなかったような・・・。


 例外的パターンかな。

 後天的に自然に記されるというやつね。

 しかし、例外が多いなぁ。

 ラッキーだけど。


 ところで、なぜ性が記されていないのかな?

 階級と所属は俺には無いから、無記載なのは当たり前だけど。

 これも例外か。

 ホント、俺って例外だらけ。


 例外と言えば。

 俺、物の鑑定できるんだけど。

 これもエイドスを読み取っているのかな?

 生物だけって言ってたけど、実は物にもエイドスがあるのかねぇ?

 それとも、何らかの違う仕組み?

 物が鑑定できるって話聞かないから、これも一般的ではないみたいだし・・・。


 まあ、例外で恩恵一杯ってことにしておこう。



 さて、では、イメージ映写してみるか。

 何となくだが、できる確信がある。


 やっぱり!


 手の甲に表示できました。



「エイドスという呼称は知らなかったのですけど、同じことはできます」


 そう言って、ケヘルさんに手の甲を見せる。

 

  高坂颯人 14歳  人間種


 もちろん、いわゆる一般的なエイドスだけを表示させてある。


「そうか! 安心した」


 本当にホッとした顔をしている。


「この世界では、エイドスが身分証になるからな。表示できないとなると、色々と厄介だ」


「これが無いと、ギルド加入も難しかったのですか?」


「そうだな。無理だったかもしれん」


 よかったぁ。

 いきなり就職難に陥るところだった。


「ところで、僕のエイドスには性別が記されていないのですが?」


「それは・・・。例外的に表示が消えていることもあるからな」


 やっぱり例外。

 遺伝子異常みたいなものか。


「ギルド加入に問題ないのですか?」


「他が記されているなら、まず大丈夫だろう。推薦書もあるしな」



 なら、無問題!

 ギルド加入だ!!










次話で・・・。



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