忘れ神
「忘」という字がゲシュタルト崩壊してきたなー
と思ってたら
宿題を忘れてたことに気がつきました。
それでは超大作伝承風SFファンタジーの始まり~(大嘘)
たまにありませんか?
必ずかばんにいれたはずなのに
学校や職場に着くと入っていないこと
ずーっと思い出せなかったものが
思い出す努力をやめた途端思い出せること。
それはね、不注意でも痴呆でも小人でも無くって
小さなかわいらしい神様の仕業なのです。
その神様の名前は 忘れ神
忘れ神に正式な名前はありません。
忘れ神は様々な地域で、お忘れさん、忘らせ人等と呼ばれています。
忘れ神は、いつもいろんなものを忘れさせます。
お弁当箱、スモッグ、帽子
筆箱、体操服、リコーダー
参考書、願書、白衣
定期入れ、会議の書類、財布
昔の友人の顔、古い約束、恋人と付き合い始めたときのどきどき
忘れ神は、いろんなものを持っていきます。
そして、期が満ちたと思ったとき
それらをそっと元の場所に戻しておきます。
時には間に合わないこともあるでしょう。
取り返しのつかないこともあるでしょう。
それでも、忘れ神を恨んではいけません。
私達の忘れ神は、いろいろなものを忘れさせます。
つらかったこと、悲しかったこと、苦しかったこと
貴方は、それらのことをずっと忘れていたいと思うでしょう。
しかし忘れ神は、貴方にそっと思い出させます。
つらかっても頑張った思い出
悲しくて皆で慰めあった思い出
苦しみを乗り越えた思い出
忘れ神は、本当に嫌な記憶は食べてしまいます。
思い出しただけで泣き出したくなるような棘のついた記憶は
自分の身体が傷つくのも厭わず、全て食べてしまいます。
やがて貴方が、その記憶を受け入れられるようになったとき
忘れ神はふぅっと息を吹いて
ふわふわの綿菓子を作ります。
それは時に苦いでしょう、時に辛いでしょう。
時には少し棘が残っていたり、痺れ薬がまじっていたりするでしょう。
それでも、それはきっと貴方を傷つけはしません。
頑張って食べてください
飲み込んでください
その綿菓子を食べ終わったとき、
貴方の目の前には優しく微笑むたくさんの人がいるでしょう。
綿菓子を食べるまでは見えなかった、たくさんの人が
涙で曇った瞳では見えなかった、本当の優しさが見えるでしょう。
壁もある、敵もいる、たまに落とし穴だってある
それでも私達は前に進まなければなりません。
傷ついたり、疲れたり、泣きたくなったりしたとき
貴方の傍で、そっと忘れ神が微笑みます。
それは道端に咲く花かもしれない
それは見知らぬ子供たちの笑い声かもしれない
それは心通わせあう友達かもしれない
それは長い付き合いの恋人かもしれない
それは見守ってくれる家族かもしれない
貴方が辛く苦しいとき
傍で貴方を励ましてくれる
それが、貴方にとっての 忘れ神
皆さんの忘れ神は、どんな姿をしていますか?