日本人宇宙
遂に宇宙人が地球に降り立った。
世界中の人々がその姿を見た。
宇宙人は、外見が地球人と変わらなかった。
腰が低く、おじぎをしながら、
「あ、どーも、どーも」
と日本語を使いながら、宇宙船から降りてきた。
凄く、日本人だった。
聞いてみると、彼らの星全体が日本に酷似しており、
彼らの星にも、
東京もあれば京都もあり大阪もあり、
四国も北陸も北海道も沖縄もあった。
東京タワーも道頓堀も厳島神社も金閣寺もあった。
星の人々は、全員日本人の顔であり、
全員日本語を話した。
星の旗も、日の丸だった。
そのことに地球人皆が驚いていると、
様々な星系からも、宇宙船がやって来た。
「あ、皆さん、こんにちは」
「おはようございます」
「あ、すみません」
「いやー、長旅疲れました」
皆、完全に日本人だった。
聞いてみると、日本は宇宙のスタンダードであり、
宇宙の知的生命体は100%
日本人だった。
宇宙のあちこちに、草津温泉があり、
ニホンザルがいて、
奈良の大仏と鹿がいた。
アメリカ人イギリス人フランス人ロシア人中国人…
白人も黒人も日本人以外の黄色人種も宇宙には存在せず、
レアであり、
宇宙には日本人だけがいた。
地球人は皆、宇宙人達を歓迎はしたものの
複雑な表情を浮かべた。
自分達がレアで、
宇宙の中であまりに少ない人種というのは、
戦力・経済力や文化・歴史の面でも、
宇宙の中で儚く消えてしまいそうで、
心細く感じた。
そして、地球の日本人達も、
複雑な気持ちだった。
もちろん、
宇宙の多くの友に出会えたことは嬉しかったし、
他の地球人よりも、言葉も文化も酷似している分、
直ぐに気のおけない仲間となり、
日本人として、宇宙の共同体意識も芽生えた。
とはいえ、
宇宙人全員が日本人というのは、
他の地球人の前で、
あまりに我が強く出過ぎたような、
友達の家に親兄弟がぞろぞろ集まってきたような、
何とも言えない照れくささを感じた。
それに何より、
他の地球人の心細い心情を考えると、
自分達日本人だけが余計に得をしているような、
いたたまれない気持ちになった。
宇宙を知って、他の地球人に対して
同じ星で生まれた地球の仲間としての意識も強くなっていたので、
余計に、そう感じた。
宇宙の中での日本人と、地球人としての日本人に引き裂かれるような
そんな、どうしようもない、いたたまれなさを感じていた。
そのため、地球の日本人は、
宇宙の日本人と仲良くしていても、
置いてきぼりの他の地球人に対して、
後ろ髪を引かれる思いが、常にあった。
宇宙の日本人達は、空気を読んだ。
地球の日本人の心情、どういう立場にあるのか、
どの様な状況なのかを、正しく察した。
彼らは相談し、内々で決めた。
翌日、様々な星系の宇宙船から降り立った宇宙人達は、
体の全てを遺伝子改造していた。
アメリカ人イギリス人フランス人ロシア人中国人…
白人、黒人、日本人以外の黄色人種へと、姿を変えていた。
星々にも、
自由の女神、エッフェル塔、ビッグ・ベン、ピラミッド、
赤の広場、万里の長城、タージ・マハル…
地球の世界中の建物が一夜にして建てられ、
様々な地球の世界の旗が、星々を彩った。
地球人の皆は、嬉しそうに
自分達と酷似した宇宙人と会話を楽しんだ。
宇宙船から降りた宇宙人の中、
日本人の姿は一人だけだった。
宇宙の中の日本に酷似した星も、一つだけになった。
地球の日本人も、宇宙の日本人も、
地球と宇宙の様子を眺めて、
ほっとして、満足していた。




