その戦いは誰が為にあらず己が為にあり
「前々から使おうと思ってたんだがよぉ、中々丁度いいデカブツが居なくてなぁ???」
「|天罰執行・爆破式加速鎚」
ライカがそう言うと、立方体は姿を変え、2m程のハンマーになった。ただしその形状は1部異なっていて、後方にはブースターのような金属部品が付いている。
鎚を全く気にしない様子で石像は、工事現場のような石同士が擦れる音を鳴らしながら石像は再び剣を振るう。今度は横でなく縦に。
壁は避け足場には亀裂が走るも、ライカは回避し、石像に向かって走っていた。
「認めるぜ。お前の攻撃力はよぉ。重さはパワーだし、当たったら俺も無事じゃ済まない。だけどよぉ!根本的に鈍臭いんだよ!!!」
ライカは石像の足元で飛び上がり、鎚のブースターも使い高度を上げていく。石像には次の攻撃まで、明らかに間がある。
「これが俺のフルパワーだ!!!」
ライカは石像の頭上でブースターを再点火し、ハンマーを全力で石像に叩き込んだ。
石像はボロボロと崩れていく。
「呆気なかったな。結局1番ヒヤヒヤしたのは気味悪いコウモリかーい」
完全にノリ、というか不運でクソダンジョンに当たったが、あのコウモリとカマキリなら俺でなくともなんとかなっただろう。案外弱いダンジョンだったかもな。これじゃ聖遺物もショボそ
「危ねぇじゃんか……。まだやる気かよ」
今の一瞬でライカに向かって金色の何かの光のような刃のような物が放たれた。ライカはそれが何か判断する前に、本能でとっさに身体を逸らし回避した。
「先程はやってくれたな。この私を汚いと罵ったのは、万死に値する」
崩れ行く石像の中心から声がし、ライカが確認すると、そこには人のサイズの黄金の騎士が刃先をライカに向けていた。全身が鎧に覆われているため、表情すら読み取れない。
「冗談ですやん。仲良く行きましょうよ〜先輩」
マジかよ何だこいつは。人型で言語が通じるって魔物だとしたら相当上澄みだぞ。
「私は殺す者にも名を名乗る。死後象徴として畏怖しやすいように。私は黄金のエルテーゼだ。よろしく頼む。そして、死ね」
あぁ冗談通じないタイプだ。
エルテーゼの剣が光った瞬間、崩れた石10個程度がそれぞれ黄金の刃に代わり、ライカに向かって発射された。
「天罰執行・刀」
ライカは鎚を白鞘に変え大部分を弾き、残りを間一髪で避けた。
「こんだけか?」
石を刃に変えて攻撃ってなんだよ。しかもクソ速ぇし、とにかく情報が足りてねぇ。手口を把握しな
「期待外れだ」
エルテーゼは先程の攻撃をもう一度放つと共に接近し、剣でライカの右の鎖骨辺りから腹にかけて切り裂き、壁に蹴り飛ばした。
ライカは割れた壁に半身がめり込み、息も絶え絶えになっていた。
「今の蹴りは……避けられた。お前、何をした」
「まだ息があったか、殺すつもりだったのだが。……そうだな、足元を見ろ」
先程までは石像の欠片が散乱していたはずが、いつのまにか床1面黄金に塗り潰されていた。
「美しいだろう?あの石像には私の魔力が籠っていた。私は1度魔力を定着させたものを黄金として操る事が出来る。それが私のスキル、黄金世界だ。それによってお前は足場を奪われ、速度を落とされた。気付かぬ内にな」
「なんで最初からそれで戦わなかったんだよ」
「何故か?起きたらよく分からない石像の中に閉じ込められていた。色々頭が混乱したが私は本能で理解した。あの御方を守れという命令だと」
エルテーゼは真後ろのドアを指差しながらそう言った。
「あの御方?人間が封印されてんのか?」
聖遺物を敬ってるって事か?それとも文字通り何か人、のような何かか。いずれにせよ、生物が聖遺物であったことは今までに無い。やっぱりこのダンジョンはおかしい。
「黄金よ、彼奴を切り裂け。安心しろ、貴様の血の一滴までも私の黄金に変えてやる」
人の話ぐらい聞けよ、金メッキ。
またアレが来る。持久戦であの金ピカに勝てんのか……?とりあえず避けるしかッない!
ライカはめり込んだ状態からとにかく斜め上に飛び、黄金の刃を避けながらエルテーゼの頭上を越えるように着地し、背後から刀で切りかかった。
「あの状態からそこまで動けるのは驚くが、そのバレバレの奇襲で正面から突っ込むのは悪手だな」
刃が後ろからエルテーゼに触れる寸前でライカの地面の黄金が火花のように弾け、ライカはまたもボールのように軽々と吹き飛ばされた。
「……頑丈なんだな。これで死なないのは流石にちょっと引くぞ。下半身を消し飛ばしたつもりだったんだがな」
エルテーゼはライカを憐れむような声色で語り掛けた。
「生憎……頑丈な事だけが取り柄でよぉ……」
「だがもう脚の骨が砕けて苦しかろう。次は細切れになるまでやってやる。楽にしていろ」
……肺が潰れてる。息がし辛い。足が痛い。痛いっていうか、もう足なのか感覚がよく分かんねぇ。腕ももう動かねぇ。でも、ここまで来れた。とりあえず、無理やり立っているフリだけでいい。なんとか持っているフリをしろ。
ライカは壁に寄りかかりながら全身に無理やり力を入れ、かろうじて立ち上がる。
「……立ち上がるか。見上げた根性だ。だがな、勝てぬ相手に抗う事は愚かだと思うぞ」
「……奇遇だなぁ。……俺もそう……思うぜ」
空気が肺にかろうじて入るレベルだぜ。もう血の臭いしかしねーな。あぁ、ホントにクソしんどい。帰ったら絶対1週間は休みを貰うぜ。勿論、特別有給みたいな感じでよぉ。
「ならば何故立ち上がる。実力差は明白だろう。仮に私が黄金世界を使わずとも貴様は勝てないだろう」
「……誰もお前を倒すなん……か言ってないだろ。お前はまんまと俺……の策にハマった……訳だ」
「は?まさか、貴様」
「わざわざ真後ろに吹っ飛ばしてくれてありがとよ……。オラッ!」
ライカはそう言い放つと、寄りかかっていたドアに残りの魔力と力を全て捧げた。
ドアが少しずつ開くと同時に、寄りかかっていたライカは倒れ込んだ。
「……貴様の勝ちだ。門番が門を通してしまったら、本末転倒だからな」
「……頼むから二度と俺の前に現れるなよ」
ライカは仰向けになりながらもエルテーゼの会話に応えた。
「その御方を守るのは今後、貴様の役目だ。怠ったら、今度こそお前を黄金にするからな」
エルテーゼの身体はそう言うと、砂のように溶けて霧散した。一面の黄金も、いつの間にか砂に変わっていた。
「……とりあえず、一旦休憩だな」
おう




