大吾「思い出を消す」
俺は縁川佑二。当時中学二年生。
俺は人を騙すのが得意だった。自分で言うのもなんだが、気さくで誰とでも仲良くなれるタイプだ。
ある日、友人の赤崎ん家でクラスの男子が集まってパーティーをすることになった。俺も当然誘われたから行った。
赤崎の家の中は、非常に衛生的で整理されており、みんなが集まっても誰一人不快感を示さないのは明らかだった。
そしてみんなでワイワイとピザを食べたり、テレビゲームをしたり、ビンゴ大会をやって盛り上がっている中、俺は勝手に赤崎の部屋を物色していた。みんな楽しむことに夢中で俺がいなくなっていることなど誰も知らなかったようだ。そして棚の中段に一冊の分厚い冊子を見つけた。これが俺の目的物、小学校の卒業アルバムだ。
俺は見つけて直ぐは興味本位で中を少し見た。赤崎以外の同じクラスの奴らも普通に載っており、奴らとの関係性の深さが少しは感じられた。だが、そんなことにもすぐ飽きた。俺は卒業アルバムを全開にして、ページを片っ端から破った。ただひたすら無心で破った。全てのページを完全に破り捨てた。外装は固かったため、強引に折り曲げて俺のリュックにしまった。
俺は何事も無かったかのようにパーティーに戻った。赤崎から「そこ行ってたの?」ときかれたため、トイレ、とだけ答えた。他の奴らは、「随分長い放尿だなwww」なんて揶揄されたが、俺はその間に赤崎の思い出を壊したのだ。
アルバムには自分たちですら忘れている記憶が収められている。それを捨ててしまったら、思い出は二度と呼び戻せないのではないか? 俺はそれがひたすらに気になった。
あれから五十年が経った。赤崎は、アルバムがないことに対しどう思っているのだろうか? 当時の思い出を再び参照したくなる時が来るのだろうか?
そもそも思い出が消えることは悲しく憎むべきことなのであろうか?




