4.ラスボスのトラ
この話に出て来る、二人の男を比較して検討を冗談で言ったら。
「大学の卒論のテーマ、これにする」
って言ってたなぁ。
うん、アカデミックな文系も面白いんだろうなぁ。
(理系でレポートと実験漬けだった私の学生時代)
アナウンスが流れる。
ステージ2のフーリガンのトラをクリアしました。コングラチュレーション。
続きまして、ステージ3のラスボスのトラを開始します。
「さぁ、ラスボスですよ。新右衛門さん」
「コイツに勝てば、私達は解放されるのだろうな」
2人の話に対して、将軍様からの返事はなかった。
多分、2連敗して屏風の前で悔しがっているのだろう。
昭和の下町に転送された二人が、しばらく待つと、一人の中年男性がこちらに向かってやってくる。
彼の輩は、トラである……定職はまだない。
ハット帽をかぶり、ダボシャツに腹巻、ベージュ色のスーツを着ている。
「……トラさん?」
「毒蛇に噛まれて死んだ、フーテンの?あの人?」
そうして、中年男性は、二人の近くまでやってきた。
「おぉっと、出てきた時に言う、おいらのキメ台詞、それを言っちゃおしめぇよ。運営に消されちまう」
「いや、言ってるし、別のキメ台詞」
「そうか。そん時は、そん時だ」
そうして、トラさんは、一休さんを見て言い放った。
「かかってこい、トンチ少年!
人間はね、理屈なんかじゃ動かねえんだよ」
そう言われた一休さんが、スッと表情をかえる。
「この人に、トンチは通用しないと思います。新右衛門さん、僕を召喚した術式を、少年から晩年の一休宗純に」
「わかった。老体になっても、私の事を忘れないでくださいね、一休さん」
「本来なら、この年の僕は、千菊丸なんで、大丈夫でしょう」
そうして、新右衛門は呪文を唱える
「アラ=ノル・ヴァリ=サル・ゼグ=エン・ファラ=ドミナス……」
すると、少年の姿だった一休さんは、どんどん歳をとっていき、老人となった。
「うむ、新右衛門。ありがとう」
「いえいえ、一休和尚。ここからはよろしくお願いします」
一休の老化を見ていたトラさんが言う
「なんでぃ、一休さんよ?ジジィになったら、知恵袋でもできるんかぃ」
老僧、一休宗純は、それに答えた。
「蓮の花は、泥に染まらず、
この露のような姿は、ただそのままで、真実の真の姿を現す」
「はいッ、日光結構東照宮、とんち小僧が世にはばかる、ね」
室町時代の風来坊と昭和時代の風来坊とが、この令和の時代に対決するのだった。
「ふむ、禅の形式や権威を否定し、徹底した自由の中に悟りを求めた拙僧と、庶民の道徳を説いたお主か」
「お前、さては(さしずめ)インテリだな?」
「そうだ、皇族の血筋をもち、寺にて修行を行った。勝手に家を飛び出した団子会社の御曹司とはワケが違う」
「てめぇ……坊主なんだから、女遊びも知らねぇ、つまんねぇヤツが偉そうに」
愛の遊びはあなたを不死にすることができる。
一夜の恋の秋風は、10万年の不毛な座禅よりも優れている。
「そう、説いたのが拙僧だがな。妻もいたし。遊女とも色々と……」
「な、なんだと。寺の坊主がそんなことしていたんかい」
「ククク、そして拙僧の思想的な意味を伴う旅と、お主の行商しながら渡り歩く無計画で気ままな旅と、比較してみるか。特に女性関係を中心にな」
中年独身の男なら、涙で画面が見れない失恋だらけのトラさん。心に大ダメージ。
「男ってものはな、引き際が肝心よ」
「そうだな。達者でな」
「あばよ、ドクロの杖ついた、クソ僧侶」
そうして、ラスボスのトラさんは去って行った。
「……新右衛門さん。勝ちましたよ」
「ありがとうございます。一休さん……で、結婚とかも晩年したんですね」
「ああそうだな。初体験は、10代前半にスキスキ♪スキスキ♪な、あの娘と」
「そうでしたか。アニメのオリジナルだから、名前出すと消されますね」
「うむ、それから。まぁ妻をめとり、遊女達とも色々あったのぅ」
「禅宗なのに……」
そんなことを話していると。
ゲーム・クリア
と、音声が聞こえて、倒されたトラが表示された屏風の前に、二人は戻ってきた。
「ほっほっほ、ワシの勝ちじゃ。少年一休では太刀打ちできんかったようじゃのう」
勝ち誇る将軍様……
「さすがに、トラさんは、トンチが通じませんからねぇ」
「情の人ですから、壊れかけの橋の真ん中を歩き進もうもんなら『アブねぇじゃねぇか』って助けに入るタイプは、トンチとの相性が悪すぎます」
「じゃ、ワシの勝ちでいい?勝ちでいいよね?」
うっきうきの将軍様
「いいですよ、お疲れ様でした。それじゃ」
「気が済んだのなら、地獄へお帰りください」
そうして、新右衛門が呪文を唱える。
「え?ちょ、おまっ……まって……アァーーーーーっ」
将軍様は地獄へ帰っていった。
「それじゃ、一休さん。少年時代の姿に戻しますね」
「よろしく、お願いします」
呪文におって老僧が小坊主の姿になる。
「まだ、数日この時代にいることができますので、一緒にでかけましょうか」
「そうしましょう、新右衛門さん」
2人は、令和時代の日本国を一通り見聞し、浄土に戻ったのだった。
万博だと、ブラックジャックとアトムの夢のコラボがですね。
ロボットのアトムに、タンパク質な人工心臓を、ブラックジャックが移植して、クローン人間的な何かに。
ちょっと胸アツ。
そんなこんなで、新右衛門と一休がコラボになって、万博パビリオンの暗い鏡の中に見えて、この作品が。




