第8話 有能と無能の違いがハッキリ出る【学園合宿】②
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――次の課題【魔法学習と連携プレイ】が終われば、合宿は終了となる。
俺とリオンの二人は慣れているので難なく課題をクリア。
問題はダリアとだったが……。
「俺に身体と魔力を預けると思って……深呼吸を」
「ええ……すぅ……はぁ……」
「俺が必ず合わせる。お前の出せる力で出してこい」
「ええ。力まず行きます」
「自然な形でいいぞ。よし、おいで」
「はい!」
息を合わせて俺とダリアの魔法。
魔法障壁にヒビが入ったが、きっちりと課題をこなし、難なくクリア出来た。
わっと上がる歓声は、俺達のバディの良さを物語っている。
「凄いわ! アルカ様にダリア様!」
「息ぴったりね!」
「見たかよ……魔法障壁にヒビ入れたぜ?」
「余程相性の良い力だったんだろうな……スゲェ」
そんな声が上がる中、気に入らないのは件の連中だ。
何としてでも、この国の王太子としての威厳を見せねば気がすまないのだろう。
身分を隠しているとはいえ、俺はエルフ王の孫。
魔法くらい熟知していなければ、次の王とは呼べないのだ。
本来父が次の王となる予定だったが、母である妻を大事にするあまり、王にはならなかった。
あの父の血を引いている俺も、ダリアを娶ると決めなければ、どうなっていたやら。
「ええい! 他国の蛮族な王族に、我が歴史ある人間王国の王太子が負けて溜まるか‼ 我が国の王太子としての意地を見せてやる‼」
「そうですとも‼」
「見せつけてやりましょう!」
「ダリアにいいところばかり見せられないわ! 私もやる‼」
他の者たちがまだ試験を受けているというのに、押しのけて膨大な魔力を溜め始めるリガードと毒婦。
しかし、お互いに可笑しいと思ったのだろう。
魔力を出し続けた所為で制御不能となり、これには騎士団が駆けつけていく。
「やだやだ! なに? 何なの? 魔法が……魔法が離れないし放てない!」
「くそくそくそ! どうなってやがる……ま、魔力が吸われて……ば、爆発する!」
だろうな。
完全なる魔力暴走だ。
俺とダリアは瞬時にバリアを張り生徒を守ったが、強い衝撃と轟音と共に、森の鳥は一気に飛び去り、あとに残ったのは土煙と……血だらけで倒れた二人だった。
直ぐにタンカで運ばれていく二人に意識はなく、慌てたスノルとドルフが駆け寄る。
必死に二人が声を掛けているが、リガードよりも毒婦に声をかけている。
奴らの主従関係どうなってんだよと呆れた。
「先生、質問です」
「はい、どうしましたアルカ君」
「王太子殿下が、こうなったのは俺とダリアの所為だと難癖つけるとも限りません。その場合、学園はどう動きますか?」
「今回のことは、あくまでも二人が暴走した結果です。それの元がなんであれ、生徒全員を巻き込もうとした事は許し難い行為です。貴方がたに非があると言うのなら、学園は徹底的に抗戦します」
「それを聞いて安心しました。是非、難癖つけてきた時は学園に相談したいと思いますし、学園の意向を伝えたいと思います」
「そうしてください」
――取り敢えず、保険は作った。
これであいつ等が難癖つけてきても、学園は許さないと言う立場。
王太子といえど徹底して争う姿勢を見せてくれたのだから、奴にとっては手痛い事だろう。
「アルカ、これも布石?」
「いや、これは保険だ。奴らが俺達に難癖をつけるのは目に見えている。だからこそ、学園にどちらの味方なのかをハッキリさせておいたんだ」
「それは、とても大きいわね」
「しかし、魔力暴走させた馬鹿が王太子とあっては……学園合宿も終わりだな」
そう溜息混じりに告げると、本当に「不慮の事故が起きたため、本日の学園合宿はこれにて終了とする」と学園長直々からのお言葉があり、解散となった。
「もう少し……ダリアと一緒に魔法を勉強したかったがなぁ。相性がいいんだよな」
「あら、嬉しいですわ。では授業の際に是非……一緒に如何?」
「是非そうさせてもらおう。その時はまた、エスコートさせて貰っても?」
「はい、嬉しいですわ」
彼女の手を取り、小さく跪いて伝えると、ダリアは嬉しそうに笑っていた。
そんな様子を周囲の生徒も見てうっとりしている。
聞こえてくるのは「ダリア様にはアルカ様がお似合いよね」「リガード王太子じゃねぇ……宝の持ち腐れよ」「あの王太子じゃなぁ」と言う声が聞こえてきて――。
俺とダリアはにっこりと微笑んで、エスコートして学園へと帰り、各自家に帰宅した。
――そこまでは、まだいい。
ダリアを攻撃して、顔や腕を怪我させたことに対する、王家からの回答がまだなかった。
その為、追加で催促の連絡を入れると、直ぐに慌てた様子で国王から返事が帰ってきたが、その中には「王太子と婚約者の仲は友好だと聞いているが……」と言う馬鹿な回答が返ってきた。
これに対し「近い内に城にて陛下のお目通りを頂きたい」と連絡するのだが、返事は「学園の中間テストが終わってから」との事で、呆れつつも了承する。
「学年試験も近い……。今度、図書室でダリアと勉強会でもするか」
少しずつだが、周囲に俺とダリアの仲が進展しているかのように見せていく。
自然と、水面が揺れるかのようにじっくりと広がるように……。
それもまた、俺の狙いなのだが、あの王太子ではなく俺の方が優秀だと印象付ける事も大事だった。
「謎の国の王太子が、自国の王太子より出来が良い。ともなれば……貴族たちの耳にも入るだろう。そして、ダリアが自由になる日も近い……」
――それこそが、俺の狙いだ。
ダリアを自由にする。
そして……俺の婚約者へステップアップさせる為の布石。
王太子など踏み台でしかない。
「俺はやるぜ? あの頃からの恋心は、今もずっと消えていないからな」




