第5話(閑話)なんでアルカと遭遇しないのよ‼
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――マリーSide――
その頃、アタシは順調に攻略対象三人を落としていた。
ところがよ? アルカだけが、彼の出没エリアに行っても見当たらない。
運命の出会いの場所は、もう何度も向かったわ。
けれど、アルカが訪れることは一度もなかったの。
「これじゃ運命的な出会いができないじゃない! どこほっつき歩いてるのよ!」
今日も運命の出会いの場所に向かったけれど、アルカの姿はなかった。
怒鳴り散らし地団駄を踏むアタシを、怪訝な顔で見つめる人たち。
アンタ達に出番なんてないのよ‼
そもそもお呼びじゃないっつーの‼
睨みつければ彼らは一目散に逃げていった。
ふん、ザマァないわね。
この世界のヒロインであるアタシに意見するっていうほうが可笑しいのよ。
そう思っても、毎度現れないアルカ。
もしかして、アルカの出会いだけバグってる?
普通の、ゲーム通りに会うことは難しいのかしら……。
今までの人生、大体のことは予想がついて、大体のことは何とかしてきた。
でも、その中でもバグというのは存在する。
――アタシの現在の両親とかね。
家のことを思い出して嫌になりそうになったけれど、教室に戻り移動教室の準備を行う。そういえば今日はSクラスと移動が重なる日じゃなかったかしら?
――もしかして、アルカとの出会いはそっちに移動した?
そう思ったら居ても立っても居られない‼
急いで移動教室の準備をすると教室を飛び出し、廊下を走ると教師から「マリーさん‼」と怒鳴られたけれど無視よ無視。
どうせ将来はアタシに跪くババア達なんて放っておいて、アタシは最後の攻略者でもっとも推しキャラだった【アルカ・デバディス】の元へと向かう。
――いた、彼だ!
――うわ! 従者のリオンも、こうしてみるとイケメン!
イイネ! 両方狙っちゃおうかな!
そんなことを内心思いつつ「出会い方が違うけどいいよね!」と気分も高まり、アルカに声をかけた。
でも、彼はアタシの声を無視して従者と共に歩き出す。
くぅ……っ! 流石【悪役王子! アルカ・デバディス】だと舞い上がった。
でも、何度も名前を呼んでも彼は反応ひとつしない。
流石にヒロインを無視するのは酷すぎるわ!
「ちょっとアルカ! アタシが呼んでるのよ? 返事くらいしたらどうなの⁉」
ちょっとぶりっ子した感じで怒ってみたら、従者のリオンが振り向いた。
あ、もしかして、リオンとのフラグ立っちゃった?
きゃっ! 予想外だわ!
――そう思った途端。
「一国の王太子に対して、貴女は随分と不敬を働いていますね」
そう言われて一瞬怯む。
え? なんで? このくらいフランクでも、別に不敬ではない……んじゃない?
リガードなんて、凄く甘く囁いてくれたけど?
アタシ、何か可笑しい?
周囲の目は厳しく、アタシは「な、何よ……」と凄むけど、周囲の冷たい目はやまない。その時だった。
「彼は国を明かしていませんが、一国の王太子。下々からお声を掛ける等言語道断です」
厳しく叱責する声に睨みつけると、その先にいたのは【悪役令嬢のダリア・ハーネット】だった。コイツ……最後はみすぼらしく国外追放される癖に、アタシに意見したわね? 許せないわ‼
「でたわね悪役令嬢!」
「……は?」
「ふん、そんなに虚勢張っても無意味よ。どうせ最後は私に跪く運命なのよ」
「あの、頭大丈夫ですか? どこか打たれたのでは?」
「白々しい! ああ、でも先を知らないなら仕方ないわよね? ごめんなさいね~? 未来を知らない馬鹿っを煽っちゃって~」
ゲラゲラと声を上げて笑っていると、アルカの足が止まってこちらに歩み寄ってきた。キタキタキタ! チャンス到来! そう思い駆け寄ってアルカの腕を取ろうとした瞬間――その腕に触れることはなく、アルカは振り向きダリアのもとへ歩み寄る。
「次の魔法練習相手がいなかったんだ、よければお願いしても?」
軽やかにダリアに告げるアルカに、ダリアは淑女の礼を取り「お相手致します」と言って二人去っていく。
ひとり残されたアタシは、バサバサッとノートや教科書を落として呆然とした。
そんなアタシを、クラスメイト達は怪訝な顔を浮かべながら去っていく。
「……なんで? ヌルゲーなんだから全員直ぐに私になびくはずなのに……」
その中で考えられることは……。
色々な異世界恋愛系を読み尽くしたアタシとして、導き出した答えはひとつ。
そうよ、これしか考えられないわ‼
「きっと悪役令嬢が規格外の動きをしてるんだわ。そう、よくある異世界ものみたいに、アイツもアタシと同じ転生者ね! だからアルカ様がおかしかったのよ!」
そう結論つけたアタシは、〝打倒悪役令嬢〟に燃える。
自分が断罪されないように、徹底的に悪役令嬢を潰して見せると決意したのだった。
アタシが歯噛みしながら立ち尽くすその背後。
アルカとダリアはすでに遠く、笑顔で談笑しながら去っていった。
「……やっぱり、あの二人、普通じゃない……! 好感度が高い時に出るアルカの笑顔だわ……。悔しい! アタシが手に入れようと思ってたキャラなのに、よりによってダリアなんかに奪われるなんて……っ!」
胸に、焦燥と苛立ち、そして得体の知れない嫉妬が混ざった感情が湧き上がる。
しかし――アルカの視線は、本来ならばヒロインのアタシに向かう筈なのに、すでにダリアにだけ注がれている。
その無言の距離感が理解できず、ただ苛立ちを募らせるのだった。
「次こそ、絶対……!」




